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平田 雅博 [Hirata Masahiro]

平田 雅博 [Hirata Masahiro]

大英帝国の発展と衰退

第4回 2019/7/4(土)
青山学院大学名誉教授
平田 雅博

「ブレグジット(イギリス・ブリテンのEU離脱)」を契機に、ヨーロッパを離れるイギリスが、また「大英(ブリテン)帝国」と関係を深めるのではないかとの予測があります。EUとのユニオンは一九七〇年代から今日までたかだか五〇年の歴史しか持たないのに、「帝国」とは一七世紀から二一世紀まで五〇〇年以上のユニオンがあります。そこで今やEUから離脱したのだから、帝国に戻りそれに頼ろうとの議論、帝国へのノスタルジア=郷愁です。こうした「帝国バージョン2」はあり得るのでしょうか。
 大英帝国の歴史は、通常、「第一次帝国」、これはアメリカ、カリブ海を中心にした帝国の形成で、アメリカが独立したあとは東側にシフトしインドを中心にした「第二次帝国」、これは帝国の至宝=インドを守るために確保された地中海、中東、アフガニスタン、アフリカ、さらには大洋州の植民地や領土、の順で語られます。一九世紀末のアフリカ分割に至った「帝国主義」段階はそのフィナーレです。通常、帝国や帝国主義の研究となっている対象はもっぱらこうしたユニオンの方です。
 帝国のディスユニオン=衰退の方はどうでしょうか。アメリカの独立は「第一次帝国の解体」でした。はるかに規模の大きいのは「第二次帝国」の解体です。ブリテン帝国の終焉については、一九五六年のスエズ危機、一九六五年のチャーチルの死、一九九七年の香港返還などの候補があり、それぞれ検討されております。
 今回はこれに加え、連合王国の解体論(スコットランド、北アイルランド)との絡みやアメリカやヨーロッパ大陸との関わりも加味した今日の「グローバル・ブリテン」論を背景にして、大英帝国の歴史を見てみたいと思います。

プロフィール

青山学院大学名誉教授
平田 雅博 [Hirata Masahiro]


東京大学文学部西洋史学科卒業、東京都立大学大学院人文学研究科博士課程単位修得退学。愛媛大学法文学部助教授、青山学院大学文学部史学科教授を経る。専門分野はイギリス近現代史。主な著訳書に『イギリス帝国と世界システム』『内なる帝国・内なる他者──在英黒人の歴史』『ウェールズの教育・言語・歴史』以上、晃洋書房、『英語の帝国』講談社選書メチエ、ベイリ『近代世界の誕生』名古屋大学出版会、アーミテイジ『〈内戦〉の世界史』岩波書店。