青山学院大学 AGU NEWS Vol.7
AGUニューズ[2001年12月~2002年2月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
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●第10号発行記念「特別座談会」
 青山学院の将来構想

●総合研究所の
 “改革”がスタート

●クリスマス・ツリー点火祭
●硬式野球部2選手が
 ヤクルトスワローズから
 同時指名



●秋光教授が「紫綬褒章」受章!
●機械創造工学科から
 生まれたエコ・カー

●「りこうがくぶ公開」報告
●本学の2教授
 秋の園遊会に招待される



●アジアの政治
 ―新世紀のアジアと日本の
  関わりを考える―



●高校1・2年生のための
 新キャンパス説明会開催報告

●相模原新キャンパス
 Photograph

●シリーズ大学探訪9
 アーサー・D・ベリー




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アジアの政治


国際政治経済学部国際政治学科教授
天児慧

 秋もたけなわ、10月の上旬、初めて降りた郡山の地で、果たして「アジアの政治」について、どれだけ参加した方々が関心を持っておられるか、いささか不安をもちながら演壇上に立った。とりわけ9月11日の世界貿易センター、ペンタゴンの連続爆破テロ事件以来、世界の衆目はアフガニスタンの動向に集まっていた。もちろんそれもアジアの一部ではあるが、それら自体を語る能力は私にはない。そこで開き直って、台頭する中国をどう認識するか、朝鮮半島や中台関係の動静を如何に把握するか、といった問題は21世紀の日本とアジアの関係を考える上で極めて重要であると力説した。中国認識についてのポイントは、低迷する世界経済の中で「一人勝ち」を続ける中国の経済成長、「大国主義的」外交姿勢、軍事力の継続的な増強などから高まる、いわゆる「中国脅威論」をどう考えるかということであった。確かに20年来の改革開放路線の推進で高度成長を続け、核実験やミサイル実験も行い、台湾を威嚇したり、領土・領海紛争でも強気の姿勢を崩していない。が、冷静に事態を見れば、国内において貧富の格差、失業、環境汚染、資源・食糧問題などが深刻化しつつあり、先進国などからの外資・先進技術の受け入れをいっそう強めなければ、事態の解決にメドが立たない。さらにWTO加盟によって国際ルールの規制が強化されるなど、一方的に中国が「威圧的」になることなどありえない。要するところ基本的には「国際協調主義」「平和的環境」を重視するしか、中国の展望は見えてこないということであり、実際に中国が国際秩序を破壊する脅威になることは困難であろう。

 朝鮮半島問題、台湾問題では、無論それぞれに固有の特性はある。朝鮮半島においては、米国との直接交渉にやや重きを置く金正日の北朝鮮に対し、南北直接交渉で事態の進展を狙い、「太陽政策」を展開してきた金大中の韓国といった基本構図がある。そして大国の思惑は揺れ動いている。ブッシュ大統領は登場以来、北朝鮮を「ならず者国家」の1つとみなし強硬な姿勢をとりつつあり、北朝鮮は自らのイニシアチブをとりにくくなっている。中国は韓国との友好関係を維持しつつ、金正日を中国に迎えるなどの北との関係修復にも力を入れてきた。金大中自身も韓国内での経済低迷などで一時の高い人気も陰り始め、2002年12月の次期大統領選挙も見え始めてきたため、対北朝鮮交渉の動きも鈍ってきた。

 これに対して、中台関係では経済交流がますます活発化し、経済の相互依存関係はもはや相手抜きには考えられない「パートナー」とも言うべきものとなった。にもかかわらず、統一への政治対話はいっこうに進まない。「台湾アイデンティティ」の高まり、民主化の進展などが依然共産党体制を続ける中国との根本的溝をつくっている。しかし、中国は1996年3月の台湾初の「総統直接選挙」の時のような軍事的威嚇はとりにくくなっている。つまり現段階においては朝鮮半島も中台関係もある種の「こう着状態」にはいっており、基本的にはいずれも「非統一、非敵対、互恵共存」の枠組みが構造化し、これによって東アジア地域が急速に不安定化できない状態になったという点が私のポイントであった。

 ではこうした東アジア情勢の中で、日本はどうすべきか。もともと国際的な見通しに立った「外交戦略がない」といわれてきた日本が、田中真紀子外相と外務省高官との「隠微な確執」によってますます悲惨な事態に陥っている。反テロリズムの国際的高まりの中で、「9月11日」以来の国際情勢をどのように読み込み、見通しを立て、その中で日本は何をなすべきかという腰の座った議論が国内であまりなされない。見通しを考えないままに「自衛隊を派遣すべきか否か」「武器を携帯すべきか否か」「米国のアフガン攻撃を支持すべきか反対か」などといった局部の議論ばかり先行している感がある。東アジアにおいても台頭する中国を冷静に腰をすえて見定め、どういう付き合いをすべきかをじっくりと考えることが極めて大事な段階に入っている。日本が強調すべきは、対立・矛盾の混在する情勢においてとりわけ声を大にして「どこの国とも仲良くする」という徹底した「国際協調主義路線」の推進である。中台関係において私はこれを、中国とも台湾とも仲良くしたいと言い続ける「積極的曖昧主義」と自分で命名した。

 以上のような内容の講演であったが、聴衆の皆さんの関心は驚くほどに高かった。多くの中小企業を抱える当地にとって、中国への工場移転は不可避でありながら、同時に「産業の空洞化」に頭を痛めるというディレンマにあり、中国問題への関心は極めて高いということであった。




天児 慧/1947年岡山県に生まれる。1971年早稲田大学教育学部卒業。1974年東京都立大学修士課程修了、法学修士。1981年一橋大学博士課程修了、社会学博士号取得。1981-90年琉球大学助教授。この間86年より2年間、外務省専門調査員として在北京日本大使館に勤務。共立女子大学国際文化学部教授を経て、現在青山学院大学国際政治経済学部教授。

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