青山学院大学 AGU NEWS Vol.11
AGUニューズ[2002年3月~4月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)




●卒業生特集
 青学で培った4年間



●21世紀の「全学共通教育」
 構想について聞く

●山手線沿線私立大学
 図書館コンソーシアム

●国際シンポジウム
 「東アジアとフランス」

●ジャン=ジャック
 ・ベネックス監督講演会開催

●国際政治経済学部・経営学部
 共催シンポジウム
 「WTOの現状と今後の展望」

●女子バドミントン部
 2年連続学生王者の座に

●連覇達成の空手道部
 諸岡さん、世界を目指す

●レスリング部3名が
 全日本優勝に輝く



●法学部への転学部制度
 導入について

●青山学院大学 フェスティバル
 in さがみはら開催報告

●2002年度新役職員紹介


●福祉とロボット


●青山学院校友センター
●卒業後の連絡先一覧
●News Index
 Weekly AOYAMAの
 タイトル紹介

●2002年度公開講座
●Club & Circle Information
●オープンキャンパス
 社会人のための
 オープンキャンパス
 相模原新キャンパス説明会

●相模原キャンパス
 ホームページが完成

●スクーンメーカー寮の
 移転について

●相模原キャンパス
 告知用看板について

●2002年度
 一般入学試験出願結果

●第二部スプリング・カレッジ
●シリーズ大学探訪10
 万代順四郎






青山学院公式ホームページ
www.aoyama.ac.jp



福祉とロボット


理工学部長/理工学研究科長
電気電子工学科教授

井出英人

 人生85歳、高齢化社会の現在、老後の面倒を誰がみるかということが問題となっています。一方で、家族に看取られ、しかも自宅で亡くなるということが、その人にとって本当の天寿を全うした事になると思います。それこそ「人生、生きて良かった」という事ではないでしょうか。ところが今、日本の平均出生数は、2001年で1.36人まで下がっていますので、高齢化の進展に伴う現役世代への負担の増加が懸念されています。そこで考えられるのがロボットです。介護ロボット、家事代行ロボットをはじめ、孫や恋人に似た優しいロボットを開発して、皆さんと共に素晴らしい人生をおくれるようにしたいと考え、我々は日々努力しています。

 ロボットはただ単に作ればいいというものではなくて、いわゆる「ロボット三原則」というものがあります。1.人間には必ず服従しなければいけない。2. 人間に危害を与えてはいけない。3. 感情を持ってはいけない。これがロボットを作るための3つの条件です。つまり、非常に礼儀正しく、言われたとおりに実行する優しい機械でなくてはなりません。
 例えば「鉄腕アトム」などのマンガを見た方は、ああこんなロボットができたらいいなと思われたのではないでしょうか。それから30年も40年も経っているのに、実際には少しも進歩していないじゃないかと思われるでしょう。しかしながら、人間の歩行動作ひとつとっても、それをロボットで再現するのは非常に難しいことなのです。人間の動作を細かく観察すると、揺れながら歩行しています。しかし、単に揺れるという動作では、ロボットはすぐに倒れてしまいます。
 私は日頃から学生に、何かに行きづまったら生体に戻れと言っています。生体だったらそのときにどんな仕草をするかを考えさせます。生体の動作で最も良い例は、赤ちゃんの動きです。赤ちゃんに積木遊びをさせる場面を考えましょう。まずロボットを作る場合に、我々はどうしても大人の手を見て大人の手で作ってしまいます。しかし、赤ちゃんならば三角の積み木を握るときにどの様に握るか、あるいは、四角の積み木を握るときにどうするか。色の選択でも赤ちゃんの場合には赤色や黄色の中で、最初に取る色はどれかなどと考えます。ですから学生には「もう一度人間に戻れ!赤ん坊を見ろ!公園にでも行って子どもたちの遊ぶ仕草を見て来い!」そのように教えています。

 さてロボットを作る場合に、最初に手を作れと言われても、5本の指を作るのはなかな難しいものです。ところで2本の指だったらどうやって握るか、丸いものだったらどの様に握るか、細長い物だったらどういう風に握るか、という手の動きをスローモーションビデオで見ると、物を握るときには人差し指が最初にかかって、その次に親指がかかるという仕草をする。物を置くときも、壊れにくい物を置くときはパアッと置くようですが、例えば卵のような物を置く場合にはどうするかというと、どうしても親指を最後に放すような仕草をする。ですから、いきなりこれをガタッと置くようなロボットでは、だいたい物を壊してしまいます。
 みなさんがこれからボランティアなどで活躍なさる場合、知っていると良いと思いますが、目の動きというのは口ほどにものを言う、というのは本当にそうだと思います。眼球が右から左に動く、あるいは上下に動くと、その時に眼電位が現れます。それがどういうところに応用できるかというと、例えば寝たきりの老人あるいは小さい子どもを診るとき、画面上に“あいうえお”あるいは“アルファベット”や“数字”を書いておきます。手が動かない、また発話もできない病人でも、目は見えていますから、目の電位を計測して、視線がどの文字に向けられているかということがわかります。これは「あ」を指しているな、これは「り」を指しているな、これが「が」を指しているな、「ありがとう」という文字が一点一点、読めるような、そのように判断できるわけです。

 次にセンサーということを考えてみます。人間には例えば五感があります。脳を今コンピュータに例えますと、嗅覚とか味覚とか聴覚、いろいろなセンサーを内臓していることになります。ですからロボットをつくる場合、ただロボットを動かせばいいのでなく、それに合ったセンサーを使わなければいけません。
 ロボットを作ったときに、例えばこれは国立身体障害者リハビリテーションセンターで、お医者さんが相当な数の患者さんにアンケート調査を試みた結果、やはり同じことを言っていますが、病人はロボットで対応されるという事を非常に苦痛と考え、やはり人間が対応して欲しいと回答しています。例えばみなさんは、今はお元気なのでロボットに世話をされてもよいと思っていても、いざ病人になったときにロボットがいろいろなことをやってくれるようになれば、これは本当に夢を与えてくれる話だと思うでしょう。しかし、実際にはそれが患者さんにとっては非常に苦痛なのです。「私たちは温かさが欲しい」ということを常々言われます。

 まだロボットに介護をしてもらうまでには、はるかに長い道のりですが、一歩一歩近づいてきています。どこのご家庭でも病人を入院させると、家族は非常に疲れるものです。また、病人ができるだけ早く家に帰りたいと思うのももっともな事です。病院があるけれども、在宅で面倒をみたいという時に、ボランティアが非常に大事であって、そこにさまざまなロボットを組み込む形が理想といえるでしょう。先ほど述べましたが、患者さんにアンケート調査をとると、やはり温かみのある人間の手で介護をしてもらいたいというのが本音です。なんとか早く自分の家で病人が無理なく生活できるような環境づくりに、私たちの研究分野の者が役立ちたいと願い、研究を重ねている次第です。




井出 英人/1944年長野県佐久市生まれ。1969年工学院大学大学院修了。現在青山学院大学理工学部電気電子工学科教授。1996年より理工学部長。1986年カリフォルニア大学脳研究所留学。工学博士。専門は生体情報工学、福祉工学。主な社会活動は、総務省通信総合研究所評価委員、経済産業省省エネ大賞審査副委員長。

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