青山学院大学 AGU NEWS Vol.11
AGUニューズ[2002年5月~6月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)




●2002年度一般入学試験


●新入生へのメッセージ
●厚木キャンパスの売却が決定
●相模原新キャンパス建設中


●青山学院大学
 2002年度新役職員紹介

●青山学院大学
 2002年度新任専任教員一覧

●2001年度退職専任教員
●総合研究所研究成果発表状況
●2001年度学位授与式
●2001年度大学院学位授与式
●青山キャンパス
 環境整備について

●学生食堂をリニューアル
●2001年度学生表彰
●2001年度公認会計士試験、
 国家公務員1種試験、司法試験
 合格者を囲む会開催

●工業英検で
 「文部科学大臣奨励賞」受賞

●2001年度
 課外活動を振り返って

●相模原新キャンパス野球場で
 オープニングゲーム

●2001年度 体育会優秀団体・
 選手表彰祝賀会

●Club & Circle Information
●2002年度前期
 青山学院大学公開講座

●News Index


●インターネット犯罪について


●2002年度進学相談会開催日程
●大学紹介パンフレット申込方法
●前期チャペルウィーク
●2002年度オープンキャンパス
●シリーズ大学探訪11
 大木金次郎






青山学院公式ホームページ
www.aoyama.ac.jp



インターネット犯罪について


法学部教授
Lenz

 「インターネット犯罪」は何を意味しているか?
 犯罪は、刑法などで罰則の対象となる行為である。例えば、詐欺が犯罪である。殺人は犯罪である。侮辱が犯罪である。麻薬販売は犯罪である。

 「インターネット」は世界規模の通信網である。
 メール、WWWなどが利用方法である。利用者数も、ネットに接続しているコンピュータの数も、高い倍率で伸びてきた。
 「インターネット犯罪」については、インターネットを犯罪の道具に使う場合、またインターネットを犯罪の対象として狙う場合を区別できる。
 先にインターネットを道具として使う場合を考える。例えば、ある犯人が包丁を買い、その包丁を使ってある被害者を殺した場合、その犯罪を「包丁犯罪」と呼ぶ人はいない。なぜ「インターネット」を道具に使う場合、「インターネット犯罪」の言葉を使う必要があるのか。
 インターネット上の発言は多くの場合に全世界に向けられる。メールは別である。ある特定の人物にメールを出した場合、発言は受信者が住んでいる国のみで生じる。しかし、WWWに情報を発信した場合、世界各国で受信が可能である。必然的に、全世界に効果が生じる。極めて違法な情報である場合(例えばサリンの製法を説明した上に暗殺を呼びかけるテロ煽動など)、ひとつの情報発信行為により、全世界に被害が生じる。包丁ではありえない絶大な効果である。

 今回の公開講座は「ボーダレス時代の犯罪」をテーマにしている。「国境がない時代の犯罪」であるが、インターネットには正に国境がない。その現象から多くの問題が生じる。
 第一、この国境のない空間である「インターネット」について、どこの国の立法者が規制する権限を有するか、との問題。日本国内で、包丁で人を殺した場合、日本の立法者が制定した日本の刑法で処罰される。正当防衛など、犯罪にならない場合もありうるが、それらの犯罪の要件は、日本の刑法だけに従って、日本の裁判所が検討することになる。


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 インターネット上で何らかの発言があった場合、どこの裁判所がどの法律を基準に判断するか。日本では犯罪にならない発言でも、他国では犯罪となる場合がある。例えば、日本では歴史を議論する際、特に刑法の罰則を意識する必要がない。ドイツで多くのユダヤ人が毒ガスなどで殺戮された歴史的な事実を否定しても、特に犯罪とならない。言論の自由の範囲内の発言である。しかしドイツでは、同じ発言が犯罪となり、銀行強盗並みの厳しい実刑判決の対象となる。
 このような場合、ドイツの罰則を日本人が日本でWWW上に発信したページにも適用できるか、との問題が生じる。理論的な問題ではない。既に、ドイツでオーストラリア人に対し、オーストラリアで発信した発言を理由に、有罪判決が認められるとの判例がある。
 逆に、外国では犯罪にならないが、日本では犯罪となる行為も当然ありうる。例えば、アメリカでは州によって賭博を認めているところがある。このような州に住んでいる人がアメリカから当該州の宝クジをWWW を通して日本市場に販売する場合、日本の刑法の宝クジ販売罰則を適用できるか、との問題も生じる。

 通常の犯罪について、国内の立法者が単独で判断できる。また、国民は国内の刑法だけを見れば行動の基準にすることができる。
 インターネット犯罪の場合には、外国の規制が必然的に国内の状況に影響を与える。規制緩和・規制強化の両方の方向に働く。
 極端な場合を考えると、一定の国内規制の実効性が全く消える可能性がある。また、逆に当然自由であるべき発言が実質的に禁止される可能性がある。

 「実効性」を簡単な例で説明する。ある道で時速50キロの速度制限がある。その道を年間100万台の車が通る。16万台が制限を守る場合、この規制の実効性が16パーセントとなる。100万台中、0台が制限を守る場合、実効性が0パーセントとなり、制限の存在自体の意味が少なくなる。
 大麻の販売はオランダではほとんど規制されていない。そのゆえ、オランダでは簡単に大麻を入手できる。しかし、渋谷で簡単に入手することはできない。日本では、オランダより厳しい大麻規制が実施されている効果である。日本国内大麻規制の実効性は、外国の対応に依存していない。
 しかし、世界のどこかで賭博規制が緩い場合、日本市場にも影響が生じる。インターネットを通して、日本国内の賭博依存症に罹っている者も、簡単に賭博に参加できる。日本国内の賭博規制の実効性は、外国の対応にも依存している。
 インターネットを道具として使う行為にはこのような多くの問題点がある。ほとんどの問題が未解決である。また、解決は簡単な課題ではない。
 最後は、インターネットを犯罪の対象とする行為について考えてみる。例えば、DoS攻撃は最近数年、重大な問題となっている。DoSとは、Denial of Serviceのことであるが、「利用を妨害」する攻撃である。どこかのホームページに情報の津波を向けて、当該ページを利用できないようにする。この問題についても、各国の対策が急務である。





Dr. Karl-Friedrich Lenz/LENZ, K. F. 教授は1958年生まれ。LMU Munchen法学部卒業。法学博士。1995年4月に本学法学部に就任。1997年4月より法学部教授となる。1997年4月より2年間情報科学研究センター副所長(青山キャンパス)を務める。ドイツ法、EU法を専門とする。

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