青山学院大学 AGU NEWS Vol.13
AGUニューズ[2002年7月~9月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)




●私立大学初の専門大学院
 国際マネジメント研究科、
 Next Stageへ

●AGU TOPIC
 1. 2001年度
   就職活動を振り返って

 2. 2002年度教員採用試験報告
 3. 本学大学院への進学について


●経済学部講演会
 ノーベル経済学賞
 受賞者シンポジウム

●青学ベンチャー・ネットワーク
●法学部シンポジウム
 「法科大学院の法曹養成教育」

●ガウチャー記念礼拝堂に
 パイプオルガンが完成

●昼間部・第二部事務部の
 統合について



●袴田教授による
 公開ゼミナール開催

●機械創造工学科竹本教授が
 科学技術奨励賞を受賞

●有職者奨学金制度を新設
●第53回対東北学院大学
 総合定期戦

●清里サマーカレッジ
●「青山学報」が
 200号記念号を発行

●校友会ホームページの開設
●第9回大学同窓祭案内


●News Index
●Club & Circle Information
●2002年度後期
 青山学院大学公開講座



●乳幼児の心の発達を何が支えるか


●2003年度
 一般入学試験日程決定

●進学相談会(後期)日程
●相模原新キャンパス説明会
●相模原新キャンパスPhotograph
●シリーズ大学探訪12
 使徒ヨハネ像






青山学院公式ホームページ
www.aoyama.ac.jp



乳幼児の心の発達を何が支えるか


文学部教育学科教授
庄司順一

 今日、子ども、子育てをめぐって、さまざまな問題が指摘されています。ここでは、「子ども虐待」を通して、乳幼児の心の発達を支える条件について考えてみます。

子ども虐待
 子ども虐待の事例については、児童相談所、乳児院・児童養護施設などでは戦後ずっと関わってきました。しかし、最近まで一般には大きな関心をもたれることはありませんでした。平成12年に改訂された「保育所保育指針」に「虐待などへの対応」という一項が加わりましたが、これは、子ども虐待の問題が一般化したことを意味しているといえるでしょう。また、同年、「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)も施行されました。
 虐待は子どもの心身に深刻な影響を及ぼしますし、対応が困難なので、多くの人に理解を深めていただきたいと思います。
 日本語の「虐待」と英語のアビューズ“abuse”では語感がかなりちがうことに留意しなければなりません。私たちは、かなりひどい暴力をする場合を「虐待」と考えがちですが、英語のアビューズには「乱用」「誤用」といったかなり広い意味合いがあるようです。
 子ども虐待の定義は、「おとなが子どもに不当な権力行使をすること、つまり子どもの権利侵害と、そのために子どもの心身に重大な影響が生じること」であり、明らかな暴力をともなわない虐待、つまり心理的虐待やネグレクト(不適切な養育、養育の怠慢、放置)も「虐待」に含められます。
 わが国の子ども虐待の実態に関しては、全国の児童相談所の相談処理件数の統計がありますが、調査がはじまった平成2年度には1,101件であったのが、平成12年度には17,725件と急増しています。
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 虐待への対応については、まず、発見すること、気づくことが大事です。虐待の場合、これがあれば「虐待」と必ず判断できる徴候というものはありません。したがって、子どものようす、親のようす、親子関係のようすから、「何か変だ」と感じたら、もしかすると虐待かもしれないと考えてほしいのです。子どもへの虐待は決してまれではないですし、乳児においては生命に関わることも少なくないからです。新聞に報道されるような死亡例では、しばしば、近所の人は気づいていたことを思い起こしてください。
 さて、虐待を疑ったら、児童相談所に通告します。通告というとおおげさに考えられますが、通告の書式はとくになく、手紙でも電話でもかまいませんし、訪問して相談するのでもかまいません。匿名でもいいのです。大事なことは、「疑い」の段階で早めに対応することです。虐待ではなかったらどうしようと躊躇することがありますが、虐待かどうかは児童相談所が判断すればよいことです。通告者を児童相談所が保護者に伝えることはありません。通告の意味は、親を告発したり、断罪することではありません。子どもを救い、子育てに悩んでいる親を支援することなのです。

発達を支える条件
 まず、「安心感のある環境」が重要だと思います。虐待を受けた子どもは、表情の乏しさ、心身の発育・発達の遅滞、攻撃的・乱暴な言動など、さまざまな問題を表します。そのような子どもは、とくに乳幼児であれば、乳児院などに保護して、虐待されない環境におかれると、しばしば急速に改善していきます。子どもにとって、安心できる環境がいかに大事であるかを知ることができます。
 子どもの心が健全に発達していくためには、暖かく、安定した関わりを通して、親との間に、自分が愛されている、「お母さんといればぼくは大丈夫」と思えるような愛情の絆(アタッチメント)、信頼関係が形成されていることが大事です。そのためには、楽しいときを共にすごすことと、困ったときには助けてもらえるという経験を子どもがもつことが重要だと考えられます。
 次に、自己肯定感をもてることが大切ではないでしょうか。自己肯定感とは、自分が生きていることには意味がある、自分は愛される価値がある、自分は大事な存在である、自分には何かできるなどと、自分自身を肯定的にとらえられる感覚をいいます。これは、生きていく上で、決定的に重要です。自分の人生を主体的に生きていくことができるようになるからです。親から否定的なメッセージを与えられ続けたり、劣等感を強くもったりすれば、つまり「どうせオレなんか」と思ってしまったら、人生に目標をもち、それに向けて努力をすることなどできず、その場限りの満足を得ることに終始してしまうでしょう。自分をそのままで受け入れてもらえる体験をもつことが、自己を肯定的にとらえることにつながっていくと思われます。





庄司 順一/1949年生まれ。早稲田大学教育学部教育学科卒業。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。文学修士。専門分野は乳幼児臨床教育学。主な活動は、都立母子保健院心理指導員、日本子ども家庭総合研究所主任研究員。1999年より青山学院大学文学部教育学科教授。

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