青山学院大学 AGU NEWS Vol.15
AGUニューズ[2002年12月~2003年2月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)



特集
●さよなら
 厚木・世田谷キャンパス

●AGU TOPIC
 国際政治経済学部
 小宮教授が文化勲章を受章


TOPICS
●2002年度
 青山学院国際交流の集い

●相模原キャンパスでの
 情報アシスタント制度について


報告・お知らせ
●相模原キャンパス
 授業時間帯が決定

●厚木キャンパスの樹木、
 ステンドグラス・カリオンを
 移植・移設

●新役職員紹介
●「英語教育学」
 「コミュニケーション」
 領域において、
 大学院生研究指導開始!!

●本学より教授2名が
 園遊会に招待される

●公共選択学会「学生の集い」で
 経済学部中村ゼミ生が最優秀賞

●日弁連主催学生ディベートに
 本学学生が参加

●自動車部がエコカー
 ドライビングコンテストで優勝

●カレッジソング石碑除幕式
●Club & Circle Information

誌上公開講座
●身ぶりと対話

INFORMATION
●相模原新キャンパス説明会開催
●News Index
●歴代院長とその時代1
 ロバート・S・マクレイ


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身ぶりと対話


文学部英米文学科助教授
野邊修一

 私の研究室では「人間のコミュニケーション」について研究しています。日常会話や面接の場面で人と話をするとき、私達は情報をどのように生成・産出、伝達、認識・理解しているのでしょうか?人は言語情報と(視線、顔の表情、身ぶりなどの)非言語的情報を扱っていますが、それらの表出の活動、それを可能にしている心的過程、さらに表出された各々の情報を認知処理する作業とは、一体どのようなものなのでしょうか?私がこのテーマに興味を持ちはじめたきっかけは、大学時代、同じ人が全く同じ話題について話す場合でも、日本語と(英語などの)外国語で話す時、様々な違いがあることに気付いたことです。言語は当然ですが、声の調子、視線、顔の表情、ジェスチャーなどの非言語面、また話自体の細部の内容、構成、パターン、さらにその人から受ける印象やその人に対する評価などが、時に大きく時に微妙に違っていました。言葉を話し理解する時に、人の頭の中でどのような処理がなされ、情報がどのように表出され認識されているのか、徐々に興味を持つようになりました。
 上記の問に対しては、言語学、社会心理学、言語心理学、コミュニケーション論、コンピューター工学など、文理系の枠を超えて様々な学問分野の研究者が、この20年ぐらいの間に活発な議論を展開してきました。しかし各々の研究領域の歴史をよく見ると、言語コミュニケーションの研究者は非言語コミュニケーションについて、また、非言語コミュニケーションの研究者は言語コミュニケーションについて、(あえて?)多くを語らないという期間が長く続いてきました。私は、今や、これらふたつを複眼的、包括的に議論すべき時期にきていると考えています。どちらか片方だけに着目していても、人間が行っている対面・対人コミュニケーションを捉えきれないからです。例えば、私達は人の嘘をどのようにして見抜くのでしょうか?多くの場合、対面している発話者が発する言語情報の真偽や矛盾点の有無などに注意しながら、その発話者の視線、顔の表情、ジェスチャー、声の特徴などの微妙な変化(非言語情報)を、ほとんど同時並列的に処理していると考えられています。このような複数の種類の情報に対するほぼ同時進行で進む並列処理能力は、非常に高度で驚くべきものと言えるでしょう。



 私は、対話時の身ぶりと言語発話の産出と理解、身ぶりと言語発話との関係、身ぶりの中でも特にジェスチャーについて、一貫して関心を持ってきました。私達は人との対話中ごく普通にジェスチャーをします。例えば、町で見たある光景を聞き手に説明するとき、「男の子が上がっていった」と言いながら[はしごを登るように右手と左手を交互に動かし手と腕を上げる]ジェスチャーをする場合などです。そういわれてみるとテレビのインタビューやトークショウ番組、また友人や同僚との会話や討論の中でも、ジェスチャーが(特に意識されることなく)かなり頻繁に使われていることに気付くでしょう。
 この例の言語発話では、「男の子」という“動作主”、「上がる」という“動き”や“方向”、「・・・していった」という動詞的範疇が含む言語情報が表出されていますが、ジェスチャーでは、話し手が動作主の「視点」に立って(つまり、話し手がその現場で見た「男の子」の立場で)手を交互に動かして登る動きについて表現していること、また、その動きの方向、(手の形なども含めた)動きの様態や様子、速度の情報などが表わされています。このようにジェスチャーが含む情報には、言語情報には含まれないものもあります。これらのジェスチャーは「自発的ジェスチャー」と呼ばれ、そのジェスチャーが表す情報は、共起する言語発話と共に、発話時に外在化される話し手の認知表象・思考(の一部)であると主張されてきました(McNeill, 1985, 1992; McNeill & Duncan, 2000)。
 ジェスチャーは、非言語コミュニケーションの分野で長く研究されてきましたが、そこでは、ジェスチャーの一種である「エンブレム」と呼ばれるジェスチャーの形態と意味の記述(例えば、親指と人さし指をつけて円を作るとお金やOKなどを意味する)や、その文化的または地理的分布の調査や辞書編纂などが主に行われ、上記のような人間の発話時の認知活動と絡めた議論は、一部を除いてほとんどなされてきませんでした。自発的ジェスチャーは、成人母国語話者だけでなく、外国語学習者(Nobe, 1993, 2001)、失語症患者(Pedelty, 1987)にも観察され、さらに児童の課題解決時の概念形成の仕組みなどを明らかにする手掛かりになるとも指摘されています(Goldin-Meadow et al., 1993)。また、特に最近、人間とコンピューター間のマルチモーダル対話システムの開発(例えば、人と擬人化エージェントとの対話など)においても、上記の自発的ジェスチャーの産出と理解に関する研究データが蓄積され、利用されています(Nobe et al. 1998, 2000; 野邊他, 2002)。これらの研究から、人間同士の対面インターアクションに加え、テレビや映画上のコンピューターグラフィクスエージェントなどの映像や人間型ロボットなどと、人がいかに関わりどのように情報を処理しているのかについても議論がなされています。このようにジェスチャー研究は、現在大きな広がりをみせ展開しています。





野邊 修一/1966年生まれ。神戸市外国語大学外国語学部英米学科卒業、同大学院外国語学研究科英語学専攻修士課程修了、シカゴ大学大学院心理学研究科認知・コミュニケーション学専攻博士課程修了。文学修士、Ph.D.(Psychology)。流通科学大学商学部専任講師を経て、現在青山学院大学文学部助教授。専門分野は言語心理学、対人コミュニケーション論。

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