青山学院大学 AGU NEWS Vol.16
AGUニューズ[2003年3月~4月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
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 本多庸一


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幼児の心の教育


文学部教育学科教授
佐伯胖

幼児にも他人の「心」はわかる
 一般に、幼児は5、6歳になるまで、他人が自分とは異なる考え(信念や期待)をもっていることが理解できないとされています。それでは4歳以下の幼児には他人の「心」がわからないのか、というとそんなことはありません。生後2日目でも、他の赤ちゃんの泣き声に「つられて」泣くし、2歳にもなると、他の赤ちゃんが何かに嫌がって泣いていると、なぐさめようとして、背中を軽くたたいたり、抱きしめたり、ぬいぐるみを与えようとします。2歳前後の幼児の場合、親の目を盗んで(物陰に隠れて)「イケナイコト」をしたり、それを見つけられると「照れかくし」に笑ったりさえします。つまり、何かを「知っている」「覚えている」というようなことについての、「他人の頭の中」を推察する知的能力としての他人の「心」の理解は、従来の研究のとおり未発達なのです。しかし、自分とかかわる情緒的な反応を含んだ「他者のキモチ」の理解は、かなり早い時期から幼児にも十分可能だといえるでしょう。

子どもは「善くなろう」としている
 すべての子どもは、自分の周囲の世界をただ「知ろうとしている」だけでなく、自ら「善くなろうとしている」。慶應義塾大学名誉教授の村井実氏によると、このことは以下のことを意味します。

 1子どもは、無矛盾性(ものごとの一貫性)を
  自分で納得しようとする。
 2子どもは、相互性(他者と「分かち合うこと」)を
  喜びとする。
 3子どもは、効用性(便利、有効、効率)を追求する。
 4子どもは美(美しいもの)を求め、作り出そうとする。

 以上を無視して、子どもにただ知識を与えようとしたり、特定の能力を身につけさせようとするのでは、子どもの「心」は育ちません。また、子ども自らが一貫性をつらぬくこと、他者と信頼関係(相互性)を保つこと、なんとかして「ウマくやりたい」といろいろ試みること、子どもなりに「美しいもの」を生み出そうとすることを認め、励ましてあげるべきで、あれこれ干渉してつぶしてしまうことは、絶対に避けなければなりません。

遊びの重要性
 「善さ」を求める活動は、遊びです。遊びとは、その活動自体が充実し、何か別の目的の手段ではなく、それ自体をより豊かに、より善いものにしようという活動を指します。  遊びの中で、子どもはものごとに「熱中」するという経験をし、自らの耐えられるコンフリクト(葛藤)の範囲を広げます。つまり、子どもにとって、遊びは、きわめて真剣な「探求活動」であり、新しい、より「善い」自分づくりなのです。遊びを通して、子どもは「作品」(他人に見せたい、残したいもの)をつくり、自ら学ぶこと、納得することを知ります。ひとたび「納得する」喜びを知ると、子どもは「納得できない」事態に直面したとき、なんとか納得がいくまで、自分で探求し、試します。




YOU的他者の必要性
 このような「善さを求める心」を育てるためには、YOU的他者の存在が不可欠。すなわち、わたしを「あなた」と呼んでくれる他者、わたしを「かけがえのないひと」としてくれる人です。わたしの「存在」そのものを肯定し、わたしの背景、わたしの主張の根拠、理由、必然性に耳を傾けてくれる他者が必要なのです。このYOU的他者は、子どもとともに、文化的実践(THEY世界)を見て、“知”そのものに随伴する「よろこび」、「悲しみ」、「怒り」を「ともにする」(=情緒を“知”から切り離さないで、鑑賞する)存在です。そして、子どもの「納得」(腑に落ちる=情緒のレベルに響く“知”)を大切にし、本当の世界(未知)への「あこがれ」と「好奇心」を駆り立てます。

早期教育の危険性
 早期教育は「遊び」なき学びを強制することで、自らの無矛盾性、相互性、効用性、そして美の発見と納得の経験を奪い、「未知性」へのあこがれと挑戦(センス・オブ・ワンダー)を剥奪します。すべては「教えられる=与えられる」ものとなれば、「あなた」と呼びかけてくれるYOU的他者が欠落し、すばらしいもの(文化として価値あるもの)を努力し、協力しあい、知恵をしぼり、失敗を乗り越えて、「作り出す」ことがありません。

子どもの「心」を育てる保育
 保育において、もっとも大切なことは、保育者と幼児が1人称-2人称の関係でかかわることです。「みんな」ではなく、「あなた」に働きかけ、「先生」ではなく、「わたし」として子どもの前に立つことです。
 つねに、新しい世界と「かかわりあうこと」を育てましょう。「無関心」こそが最大の敵です。他人の喜びを喜びとし、他人の悲しみを悲しみ、他人の苦しみを苦しむ。この関係が、保育者と子どもの間で成立すれば、子ども同士でも成立するようになり、保育者間でも成立するようになります。それこそが、子どもの「心」を育てる保育です。





佐伯 胖/1939年生まれ。慶應義塾大学工学部管理工学科卒業、同大学院工学研究科管理工学専攻修士課程修了、米国ワシントン大学大学院心理学専攻博士課程修了。Ph.D.(心理学博士)。東京理科大学理工学部経営工学科助教授、東京大学教育学部学校教育学科助教授、同教授を経て、現在青山学院大学文学部教育学科教授。同大学総合研究所所長。

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