写真提供:宇宙開発事業団

 宇宙開発事業団(NASDA)は、2002年に初めて、全国の高等専門学校・大学・大学院などに在籍する学生を対象として「航空機(パラボリックフライト)を利用した微小重力教育実験」の実験テーマを募集しました。パラボリックフライトとは、放物線運動を行うように航空機を速度調整しながら操縦し、機内に無重力状態を作り出すというもの。ふだんは体験できない無重力状態の中で科学実験を行うわけで、スペースシャトルなどで行われる宇宙実験とほぼ同じ環境です。ただし、ジェット機による無重力の時間は約20秒。その間に実験作業を終わらせる必要があります。
 この実験テーマに全国から24件の応募があり、今回選定されたのは、本学のほか、東京大学、お茶の水女子大学、奈良県立医科大学の4大学で、本学は唯一の私立大学でした。実験を担当したのは理工学部機械工学科4年の宮田啓志君と荒木慎也君です。いずれも佐久田博司理工学部情報テクノロジー学科助教授の研究室に所属している学生で、指導する佐久田助教授自身も、研究者として10年ほど前にこの実験に参加した経験があります。選ばれた実験テーマは《温度勾配を有するワイヤ上の液滴の挙動観察(Wicking現象の観察)》。荒木君にその実験内容を解説してもらいましょう。
 「水平に置かれた銅パイプに液滴を付着させ、パイプの一端に熱を加えると、液滴が温度の低いパイプの反対端に動く現象が見られ、これをWicking現象と呼んでいます。ところが、地上では重力や対流などの影響を受け、この現象を正確にとらえることができません。でも、パラボリックフライトによる微小重力下なら、液滴の挙動をはっきりと観察できるはず……そう思ったのが今回応募した理由です」
 実験には、20秒という時間以外にもさまざまな制約があり、宮田君は実験を成功させるための工夫をこのように語っています。
 「まず、機内の決められたラックスペースに実験装置を収めることが難しかった。そして、装置を全自動化することが大きな課題でした。なぜ自動化が必要かというと、無重力になる直前、機内には2Gもの重力がかかり、自由に体を動かすことができなくなってしまうからです」
 そして、2002年12月19日(木)~21日(土)の3日間、二人は小牧空港から飛び立って、日本海沖で無重力での実験を敢行。初日は、装置の調整を行い、2日目・3日目と順調に実験を成功させることができました。
 「実験中、初体験の無重力状態を楽しんでいました(笑)。まるで水に浮かんでいるような気分なのに、周りに水がない……無重力とはそんな不思議な感覚です」(宮田君)
 4月から、いずれもシステムエンジニアとしての道を歩み始める宮田君と荒木君にとって、無重力体験は大学生として最後の思い出となったのかもしれません。

●本実験の模様は 宇宙開発事業団(NASDA)のホームページにて詳細を見ることができます。



左より情報テクノロジー学科 佐久田博司 助教授
理工学部機械工学科4年 荒木慎也君
理工学部機械工学科4年 宮田啓志君


※理工学部は2000年4月、機械工学科、経営工学科を改組し、新しく機械創造工学科、経営システム工学科、情報テクノロジー学科を開設しました。

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