青山学院大学 AGU NEWS Vol.17
AGUニューズ[2003年5月~6月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)



特集
●相模原キャンパス開学
 ・新しい青学の歴史が始まる

 ・開学までのPhoto History
 ・CampusまるごとViews!
 ・青学の教育・研究も変わる!
●AGU TOPIC
 2003年度一般入学試験結果報告


TOPICS
●「ニューラルネットワーク」に
 より人間の感情を簡単に認識

●文学部フランス文学科 西澤教授
 パリ日本館より近況報告!!


報告・お知らせ
●専門職大学院事務室開設
●UAリーダーズレビュー誌上
 UA LEADER OF THE YEAR
 2002~2003の改革賞に
 ノミネート

●総合研究所研究成果発表状況
●News Index
●新役職員紹介
●2002年度退職専任教員
●2002年度学位授与式
●2002年度大学院学位授与式
●2003年度新任専任教員一覧
●2002年度学生表彰
●2002年度国家公務員1種試験
 公認会計士試験、司法試験合格者

●国際政治経済学部生が
 第18回テレコム社会科学学生賞
 入賞

●「学生起業家選手権」で
 本学学生グループが優秀賞

●2002年度
 体育会優秀団体・選手表彰祝賀会

●Club & Circle Information

誌上公開講座
●日本企業再生の条件
 ~ジャパンアズナンバーワンは
 復活するか~


INFORMATION
●前期チャペル・ウィーク
●相模原キャンパス
 開学記念シンポジウム

●2003年度
 相模原キャンパス公開講座

●2003年度進学相談会開催日程
●大学紹介パンフレット申込方法
●2003年度オープンキャンパス
●歴代院長とその時代3
 小方仙之助


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日本企業再生の条件


国際政治経済学部国際経済学科教授
港 徹雄

 日本型企業間取引システムほど毀誉褒貶の激しいものはありません。日本の産業システムは、1960年代中頃までは日本産業の後進性の表象とみなされてきました。80年代になると、日本型システムは世界で最も洗練されたシステムと評価され、ジャパンアズナンバーワンと賞賛されるようになり、「醜いアヒルの子」は美しい白鳥に成長したのです。ところが、1990年代に入ると日本企業の収益性は悪化。かっての「教え子」であったフォード社やルノー社に買収されるようになると、日本型産業システムの評価は再逆転しました。
 1960年代末から80年代末までの、わずか20年間に、「問題児」から「最優等生」にそして再び「問題児」へと日本型システムへの評価は劇変しました。こうした評価の逆転がなぜ生じたのかを明らかにするために、まず、どのような条件のもとで日本型システムが高い成果を達成することができたのか。第2に、どのような環境条件変化がそのシステムの有効性を損なわせたのか。第3には、日本型システムが競争優位性を再び獲得する条件は何なのかが検討されなければなりません。
 日本ではその産業発展の過程で少数企業間の長期継続取引が経済制度として定着しました。こうした企業間取引関係は「系列」といわれ、工業部門での下請システムばかりではなく、流通部門における垂直的チャネルコントロール、金融部門でのメインバンク制など広範な産業部門で一般化しました。この少数企業間の長期継続取引関係の形成が企業間取引のガバナンスにとって大きな効果を派生させたのです。その第1は、情報伝達費用をはじめとする取引費用を節減する効果。第2には、取引の継続性への確信が取引企業間で取引特定資産への投資を促し、日本企業の競争優位を支える「特定資産の経済性」を発揮させたことです。
 日本企業の競争優位の源泉は、極言すれば取引コスト節減と特定資産の経済性にありましたが、情報技術(IT)はこの日本企業の優位性を根底から覆す影響をも与えたのです。日本企業の優位性は企業家が意図して形成したと言うよりは、その産業発展過程で偶然に創られたものであり、経営者はその競争力の本質を理解していませんでした。したがって、それがIT革新によって弱体化するという事実に気づかず競争力低下への備えを怠ったのです。
 情報技術革新は従来の情報処理費用特性を逆転させました。つまり、これまでは処理すべき情報量が増えると費用はそれ以上の大きさで増大する費用逓増性をもっていました。それゆえ少数間取引は取引費用を縮減させてきたのです。ところが、IT革新によって情報処理の費用特性は逓減性へと変化し、情報量が増えても処理コストはほとんど増えなくなりました。
 IT革新は同時に製造機器のデジタル化を進展させ、生産工程での特定資産投資効果を小さくし、さらにネットワーク化は製品互換の必要性を高め技術の標準化を進展させました。この結果、日本企業が得意とした生産プロセス革新や累積的製品差別化戦略の有効性を低下させたのです。IT革命時代にあっては、競争優位性を確保するには、従来のような取引コスト節減やプロセス・イノベーションではなく、製品アーキテクチャーレベルでの革新が不可欠です。事実、日本企業でプロダクト・イノベーションを遂行しうる企業は収益性を持続させています。



青山キャンパス正門前の国道246号線

 製品イノベーションを実現するためには、より高度な専門性、より直接的なインセンティブおよび迅速性を確保することが重要な前提です。この意味で中小・ベンチャー企業はイノベーションに有利な経営特性を備えていますが、情報革命は同時にネットワークの外部性など大規模組織の有利性をも強めています。規模の経済性と不経済性が同時に高まることがIT革新の経済的本質であるわけです。したがって、大企業と中小・ベンチャー企業とが知的生産で連携することによって新たなイノベーションのフロンティアが広がります。
 大企業と中小企業との共同開発事業のような企業間の緊密な協働を必要とする知的生産活動では、企業間に取引特定資産の蓄積と高度な信頼関係の形成が不可欠であり、そこに少数企業間の強い連携である「系列」を維持する意義が存在します。知的生産活動における系列は、中核企業によるイニシアティブを伴いますが基本的には対等な企業間連携です。下請システムのような支配・従属的連携に慣れ親しんできた日本企業が、こうした水平的企業間連携(ネットワーク組織)の運営・統御のノウハウを確立できるか、また、見えない財である知的財を見える(確認可能な)状態に変換する明示的取引の枠組みを構築できるかが、日本産業再生の条件となるでしょう。





港 徹雄/1945年生まれ。大阪府立大学大学院経済学研究科博士課程退学。1973年から大阪府立商工経済研究所研究員を経て、1981年青山学院大学専任講師に。現在、同大学国際政治経済学部教授(産業組織論担当)。「企業間(大企業と中小企業)の取引と連携関係の国際比較」を専門とする。日本中小企業学会会長。

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