青山学院大学 AGU NEWS Vol.18
AGUニューズ[2003年7月~9月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
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特集
●もっと社会へ、もっと未来へ……
 「大学院改革」進行中
 ・理工学研究科の改組計画

 ・青山学院大学の
  「ビジネススクール」と
  「ロースクール」


TOPICS
●2002年度就職活動を振り返って

TOPICS
●青山学院大学附置
 WTO研究センター
 (WTO Research Center of
 AGU)が発足

●第1回青山学院
 「会計サミット」のお知らせ

●相模原祭
 りこうがくぶ公開のお知らせ

●第10回
 大学同窓祭開催のお知らせ

●新役職員紹介
●第54回対東北学院大学
 総合定期戦

●青山交流バスツアー
●相模原キャンパス周辺
 クリーンウォーク

●清里サマーカレッジ

報告・お知らせ
●2003年度後期
 公開講座・公開講演会

●2004年度
 一般入学試験日程決定

●2003年度
 進学相談会後期開催日程

●「AGU受験相談会inさがみはら」
 開催報告

●Club & Circle Information
●News Index

誌上公開講座
●エレミヤ
 ―福音を待望する預言者―


INFORMATION
●相模原キャンパス
 開学記念シンポジウム開催報告

●青山学院創立130周年記念行事
 「統一テーマ」および
 「ロゴマーク」を募集

●歴代院長とその時代4
 高木壬太郎


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エレミヤ


理工学部教授・宗教主任
大島 力

 紀元前8世紀から5世紀にかけて、古代イスラエルには「預言者」と呼ばれる人々が登場し、後の歴史に大きな影響を与えました。そのなかで最も「新約聖書」の思想に影響を与えたのは、エレミヤという預言者であったと言えるでしょう。それは、エレミヤの活動の原点が、「契約思想」であったからなのです。
 契約という概念の由来に関しては様々な見解がありますが、少なくともその源流の一つは旧約聖書にあることは間違いありません。それは古くはエジプト脱出の途上で、イスラエルの民がシナイ山でヤハウエの神(=旧約の神)と結んだ「シナイ契約」に見出されます。その内容の根本は有名な「モーセの十戒」です。「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」(=第一戒)。この戒めは旧約聖書の思想の根本ですが、エレミヤという預言者はその神との契約を自らの拠点として、活動した人物でした。
 当時のイスラエル(ユダ王国)の状況は一時期、ヨシヤ王という名君によって改革がなされ(紀元前7世紀後半)、ダビデ王やソロモン王以来の王国の権威が回復されたかに見えていました。しかし、ヨシヤ王の死後、宗教的にも社会的にも混乱と不正が横行し、さらに対外的には世界帝国バビロニアの脅威が間近に迫って来ていました。そのような中で、エレミヤは「預言者」としての使命を与えられ、言葉と行動とでイスラエルの人々に警告を発し続けたのです。そのエレミヤの活動を、5つの時期に分けて見てみましょう。


I.エレミヤの召命(626年)
 エレミヤは「若者」の時に、神からの召命(呼びかけ)を受けました。それは、ヨシヤ王の時代であり、ユダ王国は繁栄を回復し、人々はそれを享受していた時でした。しかし、神はエレミヤに、その繁栄に酔うことなく目覚めて、預言者として真実を語るように求めました。その時、エレミヤはまだ弱齢(12-3才?)であったので 「ああ、主なる神よ、わたしは語る言葉を知りません。わたしは若者にすぎませんから」(1章6節)と答えています。
 しかし、神は「目覚めの木」といわれるアーモンド(シャーケード)の枝を見せて、エレミヤを預言者として立てました。そして、北から災いが近づいて来ていることを、「煮えたぎる鍋」の幻(ヴィジョン)によって示したのです。それは、その後、勢力を増してくるバビロニアの脅威を意味していました。


II.初期の預言 ヨシア王の死(609年)まで
 この時期にエレミヤは繰り返し「北からの敵の歌」をもって、ユダ王国の人々に警告を発しました。その脅威のゆえに、エレミヤの心臓は呻き「わたしは黙していられない」と語っています(4章19節)。しかし、ヨシヤ王のもとで、国家的に高揚していた人々には、それは奇異な言葉に聞こえたでしょう。ここからエレミヤの苦難が始まることになります。すでに、その時、王国内においては異教の神バアルへの傾斜が強まり(2章23-25節)、十戒の第一戒をはじめとする神との契約が破られつつありましたが、人々はそれを深刻には受けとめていなかったのです(11章)。



III.中期エレミヤの苦難
   ヨシヤ王死後のユダ王国の衰退期

 エレミヤは、神から命じられた通り語ることで苦難を受けることを「嘆き」として告白するようになります。その典型的な例は20章7-18節です。「神の名」において自分が語れば語るほど苦難と迫害を受けるが、その神の言葉は自分の内にあって「火のように燃え上がり」押さえつけることはできないと言います。また、こんな苦しみを受ける自分は生まれてこないほうが良かったとさえ言います。エレミヤはそれゆえ、以前のように「上から下に」語る預言者ではなく、自らの破れと嘆きにおいて神を示す「下から上に」語る預言者でした。

IV.後期エレミヤの象徴行為
   バビロン捕囚(587年)前後

 強大となったバビロニア帝国によって脅威が現実化しても、ユダ王国の将来に楽観的な見方をする者たちがいました。その代表格は、ハナンヤという人物であり、「二年のうちに」問題は解決すると言っていました。しかし、エレミヤは自ら「鉄のくびき」を負い、その楽観論を批判し、神との契約を破ったイスラエルの民の罪を指摘し続けました。実際に自分の首に「鉄のくびき」を負う行為は、バビロニアによって長期間にわたり苦しみを受けることを示す「預言者的象徴行為」でした。

V.晩年の預言 エレミヤの最終的な希望の告白
 しかし、エレミヤは決して絶望だけを語る預言者ではありませんでした。最後には、破られた神との契約が、罪の赦しにより、神の手でもう一度新しく結ばれることを告げています。それが「新しい契約」と呼ばれる希望の預言です(31章31-34節)。その場合、もはや戒めは「石板にではなく心に」刻まれ、外からの強制ではなく、内発的に人々が神の戒めを守るようになると告げられています。この預言が、新しい契約、すなわち「新約」の時代を準備することになったのです。エレミヤはその意味で「福音を待望する預言者」でした。




大島 力/1953年生まれ。東北大学文学部史学科西洋史専攻卒業。東京神学大学神学部旧約神学専攻博士課程後期単位取得済退学。神学修士。専門分野は旧約聖書学。日本基督教団石神井教会主任牧師を経て、1996年に青山学院大学理工学部宗教主任に就任。1999年より理工学部教授となる。

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