青山学院大学 AGU NEWS Vol.1
AGUニューズ[10~11月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)




●新キャンパス利用方針が決定
●キャンパス再構築にむけて
●相模原市長から
 本学へのメッセージ



●オープンキャンパス
 ・本学オープンキャンパスに
  過去最高の入場者を記録

 ・主な開催内容から…
 ・多くの学生が
  協力してくれました……

●AGU受験相談会のお知らせ
●理工学部で、小型パーソナル
 ヒューマノイド「Mk.5」誕生



●2000年度第1回学生表彰
●2000年度
 給付奨学金・学業奨励賞

●臨床心理士受験資格の
 第1種指定大学院となる

●私立大学初の専門大学院を
 設置認可申請中



●転換期のラテンアメリカ


●公開講座案内
●青山祭
●クリスマス・ツリー点火祭
●学割証・証明書自動発行機が
 導入されました

●山手線沿線私立大学図書館
 コンソーシアム

●シリーズ大学探訪3
 ジュリアス・ソーパー






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タイトル

加茂教授
文学部史学科教授



 私の専門はラテンアメリカの近現代史であるが、地に足のついた歴史を研究せねばという気持ちが若い頃から強くあったため、現状分析にもかなりの時間やエネルギーをさく一方で、現地での自分の体験や、観察や、印象を大切にしてきた。大学院生のときにフルブライト留学生としてアメリカの大学ではじめてラテンアメリカの歴史を学んだときも、その勉学をたしかめるつもりもあって、留学の帰途にメキシコとキューバを訪問して、講義や文献で学んだことを自分の目で確認したり、アメリカ人学者の自民族中心主義的(エスノセントリック)な外国史観に要注意なことを学んだりした。私の研究のようないわゆる外国研究もその基本は文献や資料に依存するものであることは言う迄もないが、私は、研究が現実離れした観念的で、抽象的な産物に堕するのを避けるため、若い頃からラテンアメリカに足を運んで現実を観察するよう努めてきた。その数は多分20回を越え、ときには日本人移住者の記録を残すため30年前の重いテープレコーダーを肩に背負って標高4,000メートルのアンデスの高地を歩き回ったり、アマゾン河の上流で床が土間で電気もないホテルで、蝿がいっぱいたかった食事をたべながら2ヶ月近く生活したこともあった。  昨年末に大学の役職から退いて時間に若干余裕ができたことや、体調もかなり好転したため、今年の春休みには外務省の委嘱で、わが国の文化無償援助の調査団の団長として中米・カリブ海のニカラグア、パナマ、ジャマイカの三カ国を訪れた。また、夏には講演のためメキシコとキューバを訪れ、メキシコでは日本・メキシコ学院で「わが国の大学の現状と課題」と題して、キューバでは「わが国の文化無償援助政策」という題で講演を行ってきた。

 この2回の訪問でラテンアメリカの現実に久しぶりに接してみて、改めて世界はいまや大きく変わりつつあるな、と言う印象を受けたのである。私は先般行われた本学の大学公開講座で「転換期のラテンアメリカ――ポスト冷戦と市場グローバル化のインパクト」と題して講義を行ったのであるが、そこでは、ラテンアメリカ地域がいまや大きな転換期を迎えており、その転換も単なる政治、経済、社会の大きな変化や新しい動向の出現といった次元のものではなくて、まさにパラダイム的(規範の)転換と呼べるような、時代や社会の支配的価値観の転換を指すような事態が起こっていることを具体的に分析して示した。

 この地域では、20世紀に入って以来、とくに1930年代以降、国内的には政治や社会の民主化や平等化を求める声が、また対外的には国際社会での従属・依存状態からの脱却を求めるナショナリズムや工業化の動きが強まり、それらは、1960年代から70年代にかけて頂点に達した。急進的な平等化を求めたキューバや、チリや、ニカラグアでの社会主義革命の動きや、メキシコなどによる先進諸国との対等な経済関係を要求した新国際経済秩序の提唱など、この地域はダイナミックな様相を強めて、世界の政治経済の1つの焦点となった。しかし80年代に入るや、保護主義的な工業化による発展モデルの行き詰まりが表面化して深刻な経済危機に陥った。各国政府は長期化するその危機から脱却する過程で、それまでの内向きの発展政策から大転換して、平等よりも自由競争を、また福祉よりも経済成長を重視する開放型自由主義経済政策へと大きく舵を切った。80年代末の冷戦の終結とその後のソ連東欧社会主義の崩壊が、このような市場経済優位の観念をいっそう促進したのである。このような新しい政策への転換で、各国の経済はマクロなレベルで回復を示したが、その一方で、この経済成長優位政策はこの地域での貧富の拡差をいっそう広げ、それが、この地域での犯罪や暴力の増加や、少数民族など社会的弱者による反抗を生み出している。

 中米のニカラグアでは、1979年の革命で社会主義を志向するサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)が政権に就いたが、冷戦終結後の1990年の大統領選挙で、FSLNの候補者は親米保守派の候補者に破れ、96年の選挙でも保守派が勝利してこの国ではいま開放型自由主義経済政策が積極的に進められている。革命政権の時代に首都マナグアの小高い場所に建てられた革命の父祖サンディーノの巨大な立像がいまでは手入れもされぬまま朽ちかけた姿を呈していたのが印象的であった。ソ連東欧という強力な支援国を失ったキューバは、いま新しい国際環境の中で自立的な発展を求めて懸命な努力を続けているが、ここでもドル所持の自由化や市場経済の部分的導入により、それを享受している比較的恵まれた人とそれらにアクセスできない人びととの間の実質的な貧富の差が目立ち始めている。
 貧富の拡差を押し広げ、社会的弱者を切り捨てていく経済成長絶対優位の新自由主義経済政策では真の発展が望めなく、一方ではソ連型社会主義の発展モデルが否定されたいま、この地域の発展途上国にとって、経済の成長と社会的公正のバランスのとれた発展の追求が課題となっている。いまや、キューバや他の国ぐににとっても、その発展は、イデオロギーや力ではなく、柔軟なプラグマティズムの精神と豊かな智恵の発揮にかかっている。

 それを支える思想や哲学が重要だが、ジャマイカを訪れた際、ボブ・マレー博物館を訪れてみた。ボブ・マレーは、レゲエの王様と呼ばれ、脳腫瘍のため36才で早世するまで歌い続けた歌手であるが、マレーの歌のテーマは「愛と正義と調和」であった。この世界から憎しみと不正と争いをなくそうと死ぬ直前まで歌い続けたマレーの思想は21世紀に向けて示唆的ではなかろうか。




1936年東京生まれ。東京大学西洋史学科卒、同大学院国際関係論修士、博士課程中退。米国ニューメキシコ大学大学院に留学。1971年、青山学院大学史学科助教授。79年教授となり、学生部長、文学部長、副学長を歴任。専門は中南米近現代史で著書論文多数。米国ラテンアメリカ学会等の会員。

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