青山学院大学 AGU NEWS Vol.6
AGUニューズ[2001年3~4月号]
青山学院大学・広報入試センター広報課
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25 TEL.03-3409-8111(代表)




●理工学部秋光研究室で
 高温超伝導体を発見

●新キャンパス最新レポート
●緑が丘グラウンド(仮称)着工へ…
●ガウチャー・メモリアル・ホール
 建設進む



●卒業生メッセージ
●AGUニューズ創刊1周年
●理工学部化学科重里研究室が
 オランダの国際会議に参加

●第3回公共選択学会で
 経済学部中村ゼミが最優秀賞



●新役員紹介
●男子バスケットボール部が
 全国初制覇

●女子バドミントン部が団体V
●ロイヤルサウンズ
 ジャズオーケストラ
 1年間の活動を振り返って…

●水難現場で人命救助


●地球温暖化を考える
 ―何が問題か―



●2001年度公開講座
●卒業後の連絡先一覧
●オープンキャンパス
 新キャンパス説明会

●2001年度
 一般入学試験出願について

●シリーズ大学探訪5
 ジョン・F・ガウチャー




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地球温暖化を考える
経済学部教授
熊谷彰矩



 “地球は温暖化している。”“その原因は炭酸ガスである。”
いまでは多くの人々が、否、殆どの人々がそのように信じています。しかし、それは疑う余地のない事実なのでしょうか。何が問題なのでしょうか。

 過去100年間の地球の気温変化はかなり詳しく分かっていますので、まずこれに注目してみましょう。1930年代、当時の英国王立気象学会は地球の気温が史上最高値を記録したことをもって温暖化が始まったと宣言しました。ところが、1940年代から60年代にかけて気温が下がり続けると、今度は科学者たちは一転して地球に氷河期が来ると主張しました。1972年、ブラウン大学で「現在の間氷期はいつ、どのようにして終わるのか」というシンポジウムが開かれましたが、そこでの結論は人間が経験した気候の変化よりはるかに大きな地球的な寒冷化が2000~3000年、あるいは数世紀以内に起こることが予想される、というものでした。それから30年ほど経ちましたが、また再び地球の温暖化が主張されています。

 もっと前に遡ってみましょう。いまから約6000年ほど前は現在より気温が高く気候最適期と呼ばれて、サハラ砂漠は緑に覆われていました。日本も縄文文化が栄え、当時の北海道の気温は今より2~3℃高かったといわれます。また、中世の温暖期も現在より高温とされており、いまは雪に覆われているグリーンランドにバイキングが入植しています。その後には小氷期といわれる時期が500年ほど続いていました。そして、19世紀末以降、全球平均地上気温は0.3~0.6℃上昇したとされています(IPCC)。このように比較的最近の歴史を見ても、地球はこれまで何回となく寒暖を繰り返してきているのです。本当に、再び地球温暖化を断言できるのでしょうか。

 産業革命以降、炭酸ガスの排出量は急激に増加しているといわれます。そしてこの炭酸ガス等の温室効果によって地球の温暖化が進んでいるとされていますが、その因果関係も決してそれほど単純なものではありません。有名なハワイ島におけるキーリング博士の調査結果をグラフにしてみますと、炭酸ガスの増加の後に気温が上昇しているのではなく、逆に、気温の上昇の後に炭酸ガスが増加していることがはっきりと示されます。これは一般にいわれていることとは正反対のことです。長い地球史の中でも両者は極めて密接な関係を保ちながら変化してきたことはすでによく知られていますが、上の事実からは炭酸ガスの増加が第一義的原因となって気温が上昇するとは考えにくいでしょう。

 そこで、炭酸ガスに注目して、化石燃料の使用により人為的に排出される量はどの位かをみてみますと、炭素換算で年間63億tと推計されています。炭酸ガスがどのようにして温室効果をもたらすのか、そのメカニズムについては科学的に究明されていますが、問題の炭素が一体どこへ行くのか、その行方についてはまだ明らかではありません。現在の推計では約33億tが大気中に残留するとされていますが、約23億tは森林に吸収されると考えられています。植物が炭酸ガスを摂取して光合成によって成長することは中学生でも知っている事実ですが、近年アラスカやシベリアの針葉樹は成長がよく、急速に太っているということです。次に、地球全体の炭素収支はといいますと、年間の炭素の移動量は大気圏と海洋の間で1000億t、大気圏と生物圏との間で1200億t、合計約2200億tといわれます。これに対して先の化石燃料から排出される炭素は約63億tですから、人為的に排出される炭素の量は巨大な大自然の収支の2~3%に過ぎないということになります。この数字をどう見るべきかは難しいところですが、この程度であるということはよく理解しておくことが必要です。このように地球温暖化については、現在もまだ科学的にはっきりしないことが多く残されているのですが、いま私たちはこの温室効果ガスを2012年までに、1990年比6%(99年比では21%)削滅しようとしているのです。

 それでは、事実が明らかになるまで待つべきでしょうか。決してそうではありません。これまで私たちが学んだ経済学は専ら人間活動の生産と消費が研究の対象でした。しかし、現在、大量生産、大量消費、大量廃棄という現実を前にして the other side of coin としての環境に目を向けざるを得なくなりました。いまや“環境”を抜きにして経済学を論ずることはできなくなったのです。そして環境を流れる資源の大きなフローに着目するとき、「熱力学の法則」が支配する冷厳な事実に注目することが必要となりました。すなわち、取り入れる資源の量と廃棄される廃物の量とは常に等しく(第1法則)、また、資源を使って活動すると必ず廃棄物や廃熱が発生して増大していく(第2法則)という極めて単純な事実です。後者はとくに「エントロピー増大の法則」として有名なもので、環境問題を解く重要なキーワードとなるべきものです。私たちは、資源の利用には量的にも質的にも明らかに限界がある、というこのむしろ常識的な事実をしっかりと認識しておくことが不可欠です。

 ところで、世界人口は19世紀末には僅か16億でしたが、20世紀末に遂に61億を突破しました。そして21世紀末にはその数は100億近く(2050年で93億)にも達するといわれています。これは地球温暖化の予測値よりもはるかに確実で、且つ深刻なものです。現在の1.6倍もの人口によって消費されるであろう全世界の資源・エネルギーはどれほどになるでしょうか。人口増に加えて生活水準も向上していますから、その需要量は膨大なものとなるでしょう。だからこそ、炭酸ガスが急増して地球の温暖化が進むのかもしれませんが、恐らくその前に多くの資源(含む食糧、水、エネルギー等)は枯渇し、地球環境はエントロピーの増大によって想像し難い状況に陥ることになるでしょう。地球上にはいまもなお飢えに苦しむ約8億もの人口が現実に存在しています(FAO)。その上にさらに40億近い人口が増大するというのです。いまこのような状況を前にして、地球温暖化の元凶とされる炭酸ガス等の削減という個別的で、しかも依然として多くの不確実性が残されている問題を論ずるよりも、先ず私たちは、すべての資源について徹底した省資源・省エネルギーを進める必要があること、を強く主張すべきではないでしょうか。




1937年東京に生まれ、慶應義塾大学経済学部卒業。(株)三和銀行、青山学院女子短期大学助教授を経て、1988年より青山学院大学経済学部教授。環境経済学、経済政策論等担当、排出権市場、マクロ経済政策他の研究。日本経済政策学会(本部幹事・理事)、環境経済・政策学会、廃棄物学会、日本経済学会、日本地域学会、応用地域学会、日本計画行政学会、国際公共経済学会各会員。

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