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国際社会の見方 - 各講座紹介 -

市民大学 青山学院大学コース 相模原キャンパス

国際社会の見方


第5回 2003/12/6(土)

経済からみた国際社会
−為替相場の教えるもの−


青山学院大学 経営学部教授
中澤 進一
「失われた10年」・・・日本経済の長期不況を表す良く知られたフレーズだが、不況はすでに10年をはるかに超えた。日本がこの不況で失ったものは確かに大きかったし、いまだに不況脱出にもがき苦しんでいるが、この苦しみを日本という狭い領域から解き放ち、世界大のなかで考えるのが今回の私の講演の目的である。

ご承知のように、世界はEUという壮大な実験を別にすれば、現在いろいろな国民国家の集合体である。この国家と国家を結び付ける経済的指標といえば、われわれは、唯一外国為替相場しかもっていない。ところが、この為替相場の決定の仕組みは、1971年8月15日を境に決定的に変わった。いわゆるニクソン・ショックである。国際金融の世界では、これによって金本位が終焉し、いよいよ為替レートも、外国為替の需給の一致点で決められることになり、自由な市場のメカニズムが働く望ましい世界になると見たものが多かった。この見方によれば、変動相場制の世界は、為替レートの変動によって、理想的な国際秩序が保たれるはずであった。しかし、これまでの世界経済の経過を振り返ってみると、この見方をそのままのかたちで受けとることはできない。私は、変化した為替相場決定の仕組みの意味を問い直したいと思う。

私は、為替相場決定の仕組みの変化を、基準のある世界から基準のない相対的な世界への移行とみている。この移行の中で、国際協調の重要性が問われなくてはならないが、美辞麗句ではない国際協調は、当然、簡単にできることではなく、われわれのこれまでの行動原理の根本的な変更を伴うという意味で、相当に困難な道だと言わなくてはならない。

長引く不況の苦しみの中で、誰もがGDPや雇用をいかに増やすかということに心を奪われていた今年の正月、日本経済新聞紙上で発表された著名な米国の経済学者G.K.ガルブレイスの論評は異彩を放っていた。曰く、日本の経済問題には、GDPや雇用を増やすということ以上に、もっと深い意味がある、と。私は、為替相場決定の仕組みが変化したことの意味とガルブレイスのこの見解とは決して無関係ではないと思っている。この講演で、このことを少しでも明らかにしたいと思う。
 プロフィール
1947年生まれ。青山学院大学教授。専門分野は国際経済学。
著書『増補版相互需要説:為替理論への模索』(勁草書房)
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