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卒業生・修了生の皆さんへ

2011年3月22日
青山学院大学学長 伊藤 定良
   卒業生・修了生の皆さん、ご卒業・修了おめでとうございます。保護者、ご家族の皆さまにも、心からお慶び申し上げます。この日を迎えるにあたり、ひとしお感慨深いものがあるのではないでしょうか。
   しかし、私たちは今、深い悲しみのなかで卒業を迎えています。2011年3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって、かつてない規模の犠牲者と被災者が生まれています。被害の大きさには、言葉を失います。被災されたすべての方々に、心からお見舞い申し上げます。また、亡くなられた方々とそのご家族の皆さまには、心からお悔やみ申し上げます。私たちは、犠牲者・被災者の方々へ思いを致し、被災地の在学生の支援、復興支援にできる限りの力を尽くしたいと考えています。
   今も続く余震、計画停電と交通機関の乱れ、原発事故などによって、私たちの社会生活は大きな影響を被っています。こうしたなかで、皆さんの長い学生生活を締めくくり、新たな旅立ちでもある学位授与式を中止せざるを得なかったことは、まことに断腸の思いです。
   私たちが現在直面している問題は、未曾有のものでありましょう。私たちの社会・経済システムの弱さがここには露呈されているのであり、安全で安心な社会を構築することが私たちには切実に求められています。そのためには、私たちはあらゆる経験と、知恵と能力を活用しなければなりません。原発事故によって示されたエネルギー政策、そして物流、電力供給体制、通信体制など、すべての問題の見直しが必要となってきています。
   皆さんは、この状況のなかで、何をなすべきなのでしょうか。多くの青学生が、被災者・被災地に思いを馳せながら、募金活動やボランティア活動に素早く立ち上がり、支援体制を組み始めていることを誇りに思います。ここには、現状を打開し、一歩でも問題を解決しようとする皆さんの勇気と意志とが示されています。まず必要なのは、私たちがそれぞれの立場から被災された人々を支援することです。
   同時に、このたびの災害による打撃を克服し、社会経済生活を安定させるまでには、膨大な時間とエネルギー、多くの難題を解決するための知恵と力、そして何よりも、この現実を一人ひとりが自分の問題として考える姿勢が必要となります。
   ここで思い浮かべますのは、私が敬愛する江口朴郎先生の言葉と現実に向き合うその姿勢です。江口先生は残念ながらお亡くなりになっていますが、現代史研究の発展に大きな足跡を残されています。江口先生は世界の複雑な現実を前にして、問題は私たちが既成の観念に寄りかかって現実を解釈することではなく、必要なことは現実の複雑な動きから学ぶことであって、「現在の問題」をどのように解決できるかどうかが勝負なのだと語りかけたのです。江口先生になぞらえていえば、皆さんにおいては、「今起きている現実」のどこに問題を感じ、それをどのように解決し、未来を開いていくのかということです。重要なのは、現実に向き合って、そこから学ぼうとする主体的な姿勢ではないでしょうか。
   2011年はアラブ諸国の民主化の動きから幕が開きました。その広がりは国境を越えて、多くの市民が主権者として政治を自分たちの手に取り戻そうとしています。彼らは立ち上がり、自分たちの意思を表明し、政治の変革に向かっています。こうした多くの人々の主体的な動きが新しい21世紀に向けての動力になることは、間違いないと思います。
   内外ともに厳しい現実に直面している今日、社会に新たな第一歩を踏み出そうとしている皆さんには、きわめて大きな期待がかけられています。大学もしくは大学院生活で培った知と力を皆さんそれぞれの場で発揮し、新しい社会の建設に役立てて下さい。
   このたびの大震災に際しては、世界各地から、また実に多くの人々から支援の手が差し伸べられています。ここでは、人々が互いに心を寄せ合い、結び合っていることを確認し、被災された人々の状況を自分のこととして受けとめています。あらためて、人々のつながり、絆の強さを感じます。国を越えたまさに「人際」関係が、日本のみならず世界の人々との間で作り上げられています。これこそが、復興のための最大の原動力であり、皆さんの若さと意欲、チャレンジ精神と勇気とがそれを可能にします。
   青山学院大学で学んだ皆さんにこそ、青山学院のスクール・モットーである「地の塩、世の光」として、社会や世界の現実に目を開き、社会的責任を果たすとともに、安全で安心な社会と人々が互いに支え合う世界の構築に貢献していただきたいと心から願っています。
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