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アジアの生活と文化

韓国の食文化
―日本の食文化と宗教の違い(儒教と仏教)という視点から比較して

第5回 2017/6/10(土)

「愛の韓国家庭料理教室」主宰 李 えみこ

この講義では、韓国料理のレシピを紹介しながら、日韓の食文化を宗教の違いから比較します。適宜、琉球の食文化やキリスト教とも比較します。

食文化はいろいろな要素から成り立っていますが、たとえば気候は大きな要素の一つです。寒いところならば大根やじゃがいも、リンゴ、ブドウなどがとれますし、暑いところならトマトやキュウリ、パイナッブル、マンゴーなどがとれるわけです。降水量の多い土地なら里芋などタロイモ属の料理が、少ない乾いた土地ならばサボテン料理が発達します。

また道など運搬ルート、船や機関車など運搬手段の有無や発達も関係します。白菜というとむかしから日本にあった野菜のような気がしますが、その歴史は浅い。日露戦争の時、海を越えて出兵した日本の農民が朝鮮半島で見つけて持ち帰ったのがその始まりです。

唐辛子は、いかにも朝鮮半島で普及したものが日本に持ち込まれたかのような気がしてしまいますが、実際はその反対です。ポルトガル船とともにまず琉球に、そして日本に持ち込まれたものが朝鮮半島に渡ったのでした。

韓国料理といえば、まずは真っ赤、というイメージではありませんか。まさにキムチの色であり、唐辛子の色なのです。

なぜ唐辛子が韓国にあれだけ普及し、日本ではそれほどではないのか。

これには疫病と宗教が関係していますが、食文化に違いをもたらす大事な構成要素です。
唐辛子には魔除けの意味がありますが、これは同時に疫病対策でもあります。魔除けは同時に霊を除けることにもなるので、韓国の法事では唐辛子を使った料理はお供えしません。ちなみにキリスト教では十字架とにんにくが魔除け、ひいては霊除けの力を持っています。

さて、ではこれには宗教はどのように関係しているのか――。

韓国と言えば儒教ですが、日本は仏教です。日本でも儒教の影響は決して小さくないのですが、それでも「儒学は輸入したけれど儒教は輸入しなかった」と言われることもあるくらいです。中世に普及した仏教はいまでも強く根づいています。

一方、韓国は、というより朝鮮半島は、高句麗新羅百済の三国時代こそ仏教が国教だったものの、朝鮮朝(かつての李氏朝鮮)に入ると儒教が国教になりました。

本来仏教では肉食を禁じていますし、唐辛子やにんにくなど「精がつく」「精が出る」ものは好まず、禁じることもあるくらいで、薬と位置付けられることもありますが、儒教では肉食を禁じませんし、当然「精がつく」「精が出る」ものを禁じることもありません。

日本では普及したのに韓国では普及しなかった緑茶についてはどうでしょうか。

実はこれにも宗教――仏教のあり方が関係しているのですが、このような話題について、韓国料理のレシピを紹介しながら、講義する予定です。

プロフィール

「愛の韓国家庭料理教室」主宰
李 えみこ [Emiko Ri]

1965年、在日韓国人一世の父、二世の母の間に生まれる。慶応義塾大学卒・上智大学大学院修了。1997年、李青若の名で『在日韓国人三世の胸のうち』出版。

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