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ヨーロッパ、EUはいま。

東北大学名誉教授 田中 素香

東北大学名誉教授
田中 素香 [Soko Tanaka]

ユーロ危機とEUの今

第2回 2017/6/24(土)

本年4月23日のフランス大統領選挙第1ラウンドでは、中道のエマニュエル・マクロンと極右国民戦線のマリーヌ・ルペンが勝ち残り、5月7日の決戦に臨むことになった。マクロンはグローバル化・EU統合を支持し、ルペンは正反対に反グローバル化・移民排斥、EU離脱・ユーロ離脱を説くナショナリストである。

昨年6月英国のEU離脱国民投票でも、グローバル化・EU統合を支持する残留派と反移民・反EUの離脱派が闘い、僅差で英国のEU離脱へ進んだ。従来、欧米の政治では保守対革新が対立軸であったが、今では、ナショナリスト対グローバル化支持、ヨーロッパでは反EUとEU支持が政治対立の基軸となっている。

「ヨーロッパEUはいま」というときの「いま」をどう考えればよいだろうか。2016年に英米両国でいわゆるポピュリズム政治が勝利をおさめたので、2016年以降を「いま」とすることもできる。しかし、そのような区分では、「なぜ」昨年に英米両国でポピュリズムが勝利したのかが分からなくなる。この「なぜ」への答えを念頭に置くと、「いま」は2008年秋に勃発したリーマン危機により出現した新しい時代、つまりポスト・リーマン危機の時代(2010年代)と考えるのが適切であろう。

EUではリーマン危機(2008/09年)に引き続いてギリシャ危機が2010年春に勃発、ユーロ危機に発展して12年9月まで足掛け2年半続いた。ユーロ圏は不況になり、12年、13年はマイナス成長、リーマン危機対策により財政赤字がGDP比2桁になた南欧諸国は、ユーロ危機でさらに悪化した。ドイツを先頭に財政緊縮の要求を強め、ギリシャとスペインは失業率25%超(若者はその2倍超)へと追い込まれた。英国もユーロ危機による不況と戦後最も厳しい財政緊縮政策が重なり、中下流層の社会保障状態の劣悪化や没落が広がった。

所得格差の拡大はグローバル化による21世紀の資本主義先進国の特徴の一つであるが、英米両国ではリーマン危機がそのトレンドに拍車をかけ、EUではユーロ危機による中下層・若者の高失業と所得格差問題がポピュリズム運動の高揚を引き越した最大の原因となっている。それはフランスに極右と極左のポピュリストが大統領決選投票に進出するのではないかとの恐怖さえももたらした。

以上のような視角から、ユーロ危機の長引く影響と欧米のポピュリズム運動、そしてEUとユーロ圏の将来の見通しについて、パワーポイントを使用しつつ語りたい。

プロフィール

東北大学名誉教授
田中 素香 [Soko Tanaka]

九州大学工学部・経済学部卒業。同大学院修士課程修了。東北大学大学院経済学研究科教授、、中央大学経済学部教授を経て、現在当大学名誉教授、経済学博士。中央大学経済研究所客員研究員、国際貿易投資研究所客員研究員。専門はヨーロッパ統合論、国際金融論。
主な著書は、『欧州統合』、拡大するユーロ経済圏』『ユーロ 危機の中の統一通貨』『ユーロ危機とギリシャ反乱』(岩波新書、2016年)、その他。

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