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永山 のどか [Nodoka Nagayama]

永山 のどか [Nodoka Nagayama]

近代都市生活の比較史-日本とドイツ

第4回 2019/7/6(土)
経済学部経済学科 教授
永山 のどか

第二次世界大戦後の日本の都市生活の変化を、住宅内設備・住宅関連製品や間取りに着目して考える場合、その変化は、欧米式の生活スタイルの導入とその応用というかたちでみられた。欧米の生活様式がいち早く導入されたのは、東京都心部、とくに住宅地と商業地両方の顔をもつ青山であった。1970年代にはすでに輸入家具、輸入雑貨を取り扱う企業が青山に店を構え、また、のちに「ヴィンテージ・マンション」と呼ばれる集合住宅が建設され、欧米式の住宅設備や台所の間取りが採用された。
では、日本に導入されることとなった欧米の生活様式そのものは、どのように確立されたのだろうか。この点をドイツに焦点をあてて考えてみたい。1950年代、西ドイツの都市では住宅問題が深刻化し、連邦政府だけでなく、地方自治体においても新築住宅の供給量を増やすために住宅政策が講じられたが、同じ時期に、住宅の質、とくに台所のあり方について、研究機関、地方自治体において議論され、キッチンメーカーも新しい台所のモデルの開発に力を注いだ。たとえば、1980年代に日本でも普及しはじめる、DKやLDKから独立して設計された専用キッチンは、1920年代にドイツで生まれたフランクフルト・キッチンを原型にしていると言われているが、1950年代~60年代において、それをいかに発展させるかについて、家庭のあり方や「主婦」の負担の軽減の観点から議論された。また、今日、日本でも普及しているシステムキッチンの原型は、ドイツのキッチンメーカーが1950年代に開発し、1970年代に西ドイツから日本に輸入されたものであるが、その開発には当時のドイツ人の、台所の近代化、合理化への強い思いが込められていた。日本が導入することになった生活様式は、西ドイツにおいても戦後すでに確立されていたわけではなく、戦後復興期・高度成長期のなかで模索された末に生まれたのである。
この講義では、青山でいちはやく実現した欧米の都市生活のあり方が、戦後西ドイツでどのように議論され、確立されたのか、という点を、台所に着目して考えてみたい。

プロフィール

青山学院大学経済学部経済学科
教授 永山 のどか [Nodoka Nagayama]


一橋大学社会学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。早稲田大学人間科学学術院助手を経て、現在、青山学院大学経済学部教授
主な著書・論文に、『ドイツ住宅問題の社会経済史的研究―福祉国家と非営利住宅建設』日本経済評論社、2012年、「1960年代西ドイツにおける団地建設と区画整理事業―シュツットガルト市の事例―(『20世紀の都市ガバナンス』晃洋書房、2019年春出版予定)