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ヨーロッパ、EUはいま。

フランス大統領選挙と国民議会選挙―マクロン政権の実験の行方

第5回 2017/7/22(土)

東京外国語大学大学院 総合国際学研究科教授 渡邊 啓貴

私は30年以上、大統領選挙含む主だった選挙の全てをパリで視察してきたが、今回の選挙はこれまでの選挙とは全く異なった構造の選挙となった。左右二大既成政党がわき役に回り、新しい政治潮流としてのマクロン率いる「中道派」が既成政党の混迷に乗じて数か月で浮上し、一気に政権を奪取した。

その背景にあったのが、極右政党「国民戦線」の隆盛だった。今回の選挙の台風の目となったこの勢力の動向に合わせて既成政党が動揺したからであった。国民が既成政党離れを起こし、新しい政治の流れに期待したことは、極右ばかりか、極左「不服従のフランス」という旧態依然たるマルクス主義を標榜する勢力が票を伸ばしたことにも表れていた。

しかしマクロン大統領率いる中道派「共和派前進」の政治運営には不安が付きまとう。経済政策はネオリベラリズムで、社会保障重視の政策はどっちつかずになった社会党右派オランド前政権の政策と酷似しているからだ。そのイメージほど新規性はない。国民もそれを承知しており、マクロン大統領誕生はその新鮮な印象とは裏腹に、「負の選択」だった。その意味では、社会党右派を主流としつつ、保守派の一部を巻き込んだこの中道政権が左右の揺さぶりにどのくらい耐えられるのか。労働法典改正などではすでに労組からの圧力が始まっている。

他方で、マクロン大統領のEU政策、対米露政策は理念先行の正統派の外交の方向性を垣間見せ、国内での評判は上々である。しかし今後百戦錬磨の各国の指導者の中に入って果たしてどこまでその理念を押し通すことができるのか。若い力がどこまで通用するのか、注目点だ。

上記のようなことに注目しながら、以下の点について話を進めていきたい。

  1. 大統領選挙と国民議会選挙を通したフランス政界の再編成とその意味
  2. 極右「国民戦線」の役割とその寿命
  3. マクロン政権の内外政策
  4. フランス再生の模索の展望

参考文献

拙書
『ミッテラン時代のフランス』芦書房
『フランス現代史』中央公論新書
『現代フランス 「栄光の時代」の終焉、欧州への活路』岩波書店
『米欧同盟の協調と対立』有斐閣

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