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日本の国連外交・国際機関外交の新展開

青山学院大学 国際政治経済学部 国際政治学科<br>教授 阿部 達也[Tatsuya Abe]

青山学院大学 国際政治経済学部 国際政治学科
教授 阿部 達也[Tatsuya Abe]

日本の国連外交・国際機関外交の新展開

第3回 2019/9/28(土)
国際政治経済学部国際政治学科 教授 阿部 達也

 外交には大きく分けて二国間(バイ)外交と多数国間(マルチ)外交があり、それぞれの方法は大きく異なっています。二国間(バイ)外交では、一国が相手国と直接交渉することから、その国の総合的な「外交力」が試されるのに対して、多数国間(マルチ)外交では、自国の主張について他国から支持や理解を得ることまたは少なくとも他国に反対されないことが重要となります。この講演では多数国間(マルチ)外交の典型である国連外交・国際機関外交に焦点を当てて、日本が直面する主要な課題について論じてみたいと思います。
 まず初めに、国連その他の国際機関に対する財政的・人的な貢献を取り上げます。いずれも国連外交・国際機関外交の目的それ自体ではありませんが、その手段として重要な意義を有しており、ある意味でその国の「多数国間(マルチ)外交力」を測るバロメーターと言えるからです。現状において、日本が国連その他の国際機関に対して義務的に支払う分担金は減少しています。これは分担金が経済力を反映して決定されるためです。また、国連を含む国際機関全般における邦人職員数が適正水準に満たないことは従来からの問題です。日本はこのような状況を踏まえた上で、国連外交・国際機関外交を推進してゆく必要があります。
 次に、個別の政策的な課題を取り上げる前提として、これまで日本が国連その他の国際機関を舞台にどのような課題を重視してきたのかを確認します。毎年9月の国連総会では各国の首脳が演説を行っています。日本の首相による過去の演説を分析することで明らかになるのは、北朝鮮問題、国連平和維持活動、開発支援、軍縮、国連改革などが重視されてきたということです。
この講義では、上記の課題のうちのいくつかに焦点を当てて、日本がどのような立場からどのような主張をし、国連その他の国際機関における意思決定とその実施にどのように関与してきたのかを掘り下げて検討してみたいと思います。検討を通じて提示されるのは、国連外交・国際機関外交の可能性と限界の両面です。一方で、国連その他の国際機関は大きな可能性を秘めています。一国では対処できない問題や二国間(バイ)外交では処理できない問題が多数国間(マルチ)外交を通じて解決される場合があります。他方で、国連その他の国際機関はさまざまな要因から限界を抱えていることも事実です。多数国間(マルチ)外交に委ねたからと言って国際社会のすべての問題が解決されるわけではないのです。
国連外交・国際機関外交を過大評価することは禁物ですが、過小評価することもまた正しくはありません。国際社会の現実と理想を十分に認識しつつ、日本がこれから展開してゆく国連外交・国際機関外交を注視してゆくべきではないでしょうか。

プロフィール

青山学院大学 国際政治経済学部 国際政治学科
教授 阿部 達也[Tatsuya Abe]

京都大学大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(法学)。本学国際政治経済学部准教授を経て現職。専門は国際法(軍備管理法、国際機構法、法源論など)。主要業績として、『大量破壊兵器と国際法』(東信堂、2011年)