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誌上公開講座 No.36
 青山スタンダードテーマ別科目 テーマ別科目 身体の技能「健康医学」

川崎仁志
文学部教育学科 教授
川崎 仁志
「人生は丸かじりで楽しんでください」が
私からのメッセージ。
丸かじりとは補完的ということ。
男と女、善と悪、芸術と科学…
補完的だから楽しめる。


 私は内科医なのでいわゆる理系の人間。理系文系という物言いがよろしくないのは承知しているが、青学で講義をしていると「ヤッパ、ソートー違う、やっぱブンケイだ」と実感する。文系がだめじゃなく、その良さも生かしつつ、理系の良さも理解してもらいながら両者補い合って(丸かじりして)健康情報を理解するというスタンスに決めている。
 保健体育は、多くの中高でつまらない暗記科目に成り下がっているし、職場の健康相談の利用率も低い。なのに、ガセネタ満載の健康番組は高視聴率。そこで授業のつかみとして、世にあふれるとんでもない健康情報を取り上げ、そのばかばかしさ(それは面白さでもあるのだが)を、科学的にはこうだ、しかし、企業論理はこうだと、パワーポイントでアニメや動画を使用し興味を持ってもらう。そして、大学生になるまで子供の健康を守ってきたお母さんたちが、健康情報に対しいかにお馬鹿であり、そしていかに楽しみ、いかに必死で、いかに打たれ強いかなどにも触れると理解に幅が出ると考えている(ここまで講義約10分費やす)。そうして、最終的に大学生として恥ずかしくないレベルに持ってゆくという手順をとる。興味を持ったんでしょう、試験は医学的客観問題もかなりよくできるようになる。
 一例を提示。「コラーゲン塗って肌プルプルって、そんなわけないでしょ。」って注意を向けさせ、「いいですか、化粧品のコラーゲン原料は狂牛病が出てから牛コラーゲンから豚コラーゲンになったのよ。某社のコラーゲンはナノテクノロジーで細かくして、お肌に浸透するのよって、あんた!豚が肌にしみてどうすんのよ!」って言ってアニメを見せる。では、どうやって正しい情報を取ればいいか(メディアリテラシー)に触れ、コラーゲンという蛋白が高分子で肌から浸透しないことや、細かくしたらそれはもうコラーゲンではないし、じゃ食べればいいなんていう考えが如何に軽薄であるかを知らしめる。そのために「Science」のような一流紙に触れさせ、本当に必要な、たとえばがんと栄養などの話に導き、エビデンスのある国立がんセンターの文献などを見せてゆく。お肌プルプルになりたい!という「心理的理解」で「染みるのよ!(動画1)」と化粧品を見ているだけじゃなく、「染みないのよ!(動画2)」という「物理的(科学的)理解」もして、両者補完的に化粧品から健康全体まで捉えなさいと導く。
 さらに、身体医学のみならず精神医学にも興味を持たせるために、「じゃあ、みんなのお母さんがいい年して、なぜに豚塗ってまで美白やダイエットに励まねばならないと思う?結構必死なのよ、ワ~カ~ル?」と注意を向け、「そりゃ、人それぞれに決まってるけどさ、あんたたちが大学出て、子育てが終わって、バカ娘とバカ息子(笑)になり、一生懸命子育てして、結局これか?という徒労感や、子供がもうじき家を出て、今までろくに向き合ったことのない旦那とこれから二人切りか~、はああ~。人生下り坂で、シミやシワにも悩まされ、胸も垂乳の母状態になり、誰だってうつ病になるのよ、そりゃ更年期障害も出るのよ!ワカルッ?それで、坂から転げ落ちないために必死の抵抗で牛でも豚でも熊でも塗るのよ!」ってやると実感を持って精神の講義を聴く。そうして、教科書に導く。残念ながら、大学病院で教えている医学生のようには専門用語も使用できない。高血圧という言葉も知らない学生も決してまれではない。それでも、生活習慣病から認知症まで十分な健康力をつけてさしあげます(笑)。
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