メインコンテンツへ
理工学研究科村田尚義さんが
超伝導の研究で世界初となる成果を発表

 理工学部春山純志准教授の研究室に所属する村田尚義さん(理工学研究科理工学専攻機能物質創成コース・博士前期課程2年)は、超伝導の研究のひとつ「カーボンナノチューブにおけるマイスナー効果」において、これまで例がなかった多層カーボンナノチューブ内でのマイスナー効果の観測に成功しました。この世界初となる成果は、超伝導研究の発展に大きく寄与するものとして、世界の物理学者・研究者が愛読する権威ある論文誌「Physical Review B」に掲載されるなど、国際的にも高い評価を得ています。そこで村田さん本人に、研究の内容や創意工夫した点についてお話を聞きました。
機能物質創成コース
村田尚義さん
理工学研究科
理工学専攻
機能物質創成コース
村田尚義さん
 私が取り組んできたのは、炭素原子でできたストロー状のチューブ「カーボンナノチューブ」における「マイスナー効果」の研究です。マイスナー効果とは、超伝導体の内部の磁場が完全にゼロになる状態のことを指し、電気抵抗が極めて低い状態になる「電気抵抗の落ち」とともに、超伝導を定義づける特性にあげられます。
 これまで同じ分野では、ひとつの層で構成される「単層ナノチューブ」を用いた研究成果が、フランスと香港のチームによって報告されていました。しかしながら、それらは重大な特性であるマイスナー効果、電気抵抗の双方からアプローチしたものではなく、香港のチームはマイスナー効果から、フランスのチームは電気抵抗からといったように、一方からの観点によるものでした。そこで私はそれらで使用されていなかった、複数の層を持つ「多層カーボンナノチューブ」を用いて双方の観点から追究することに意義を見出し、今回の研究を始めました。
 カーボンナノチューブをつくるには、いくつかの方法があり、私は鉄やコバルトなどの強磁性触媒をアルコールガスなどで熱し、炭素を分解して成長させる「CVD法」を用いました。これにより、高品質の多層カーボンナノチューブをつくることができますが、強磁性の影響が残ってしまうと、複数あるチューブの一部に電流が流れてしまう現象が発生し、電気抵抗と磁化の測定の妨げとなってしまいます。
 強磁性の影響は、強磁性触媒そのものの量を減らすことにより軽減できますが、同時に観測の対象となるカーボンナノチューブの量も減ってしまいます。そこで私は、観測に必要な量を得るため、CVD法による作成の直前に、高温のアルコールガスによる還元を行い、成長の妨げとなる酸化を防ぐ方法を用いました。その結果、強磁性の影響を抑えながらほぼすべてのカーボンナノチューブにまんべんなく電流が流れる状態をつくり出すことに成功し、18~23ケルビン(-255.15~-250.15℃)まで冷却した時点でマイスナー効果を観測することができました。実験を幾度か重ねた結果から、いくつもの多層カーボンナノチューブが連なって結合している「アレイ構造」がマイスナー効果に寄与しているのではないかと分析しています。
 今回このような成果をあげられたのは、春山先生のご指導をはじめ、他大学や企業との共同研究、国際学会への参加などから多くの良い刺激を受けながら研究に取り組んできたからこそだと思っています。また、競い合い助け合ってきた同じ研究室の仲間の存在も、大きな励みとなりました。卒業後は企業の研究職として、ナノデバイスの研究に携わります。物理という専門分野は持っていますが、領域の敷居にとらわれず、新しい可能性を生み出す研究者になりたいと思います。



●春山純志准教授から一言
 村田君には多少の挫折ではあきらめない粘り強さがあります。多くの学生は、ディスカッションの際に間違いを指摘されると落ち込んでしまうことがよくありますが、彼は正すべきところを受け入れる素直さと、逆境を自らのモチベーションに変える精神力を備えているように感じています。そのような人間的な素養が、優れた成果を生み出す原動力になったのでしょう。今後はより自分を表に出す積極性も発揮し、さらに活躍してくれることを願っています。
ページトップへ