メインコンテンツへ
理工学研究科 石川莉子さんがヒューマンインターフェース学会第9回学術奨励賞(2008年度)を受賞

 理工学研究科理工学専攻知能情報コース博士前期課程に在籍する石川莉子さんの論文「書字訓練におけるボディイメージ支援技術の開発」が、ヒューマンインターフェース学会第9回学術奨励賞(2008年度)を受賞。3月14日(金)にはその授賞式が行われました。この研究は、福祉工学におけるリハビリ訓練装置の開発を大きく促進させるものとして、期待が寄せられています。そこで、石川莉子さんと研究指導を行っている武藤剛助教に、研究の内容や今後の展開についてお話を聞きました。
石川莉子さん
理工学研究科
理工学専攻
知能情報コース
博士前期課程
石川 莉子さん
――なぜ福祉工学の道に進んだのですか。
 高校時代から人間工学に興味があったのに加え、大学受験の頃に祖父が体調を崩してしまったのをきっかけに、「人を助ける技術を開発したい」と考えるようになりました。自分の作る装置で一人でも多くの人を元気にできればと思ったのです。

――研究の内容について教えてください。
 今回の研究は、上腕の運動機能に障害を持った方が字を書くリハビリ訓練をする際の、新しい支援技術の開発を目指しています。普段私たちの身体がスムーズに動くのはボディイメージ(脳の中にある無意識的な身体感覚)が正常に機能しているからですが、マヒの状態が続くとそれが変化してしまい、筋肉の衰えもあいまって、ますます思った通りに身体を動かせなくなります。そこで、この“ボディイメージ”に着目し、それを支援する装置を開発しようと考えました。
 最初は模範映像とともに図を書く実験を行いました。被験者(健常者)5名が非利き手側をボディイメージの獲得されていないマヒ側の手とみなし、録画した模範映像をモニターで見ながら、同じ図形を書いたのです。すると、図形の始点と終点がブレるという現象が起きました。何度繰り返しても同じで、できる人とできない人の差がはっきりと出る。実験前は録画映像があれば事足りると思っていたので、この結果には驚きました。「どうしよう……」悩み考えたとき、ふと思い出したのが小学校時代の書道の時間。先生が直接手をとって筆の運び方を教えてくれた、あの「模範となる運筆方法を体で知る」感覚を再現してみたらどうかと考え、模範者の書く図形は被験者側のモニターに、被験者の書く図形は模範者側のモニターにリアルタイムで映るように、2台の装置をつなげたのです。すると、何度か実験を繰り返すうちに模範者と被験者の息が合ってきて、どの被験者もブレを補正することができるようになりました。模範者と被験者がボディイメージをリアルタイムに交換することで、互いに教え合い、補正し合いながら、正しい運筆パターンを効率よく学習できたのです。録画映像による一方通行のボディイメージ支援では成り立たないものが、双方向だと成功する。これは実験前には予想していなかった結果で、非常に多くのことを示唆していると思います。

――学会発表や学術奨励賞受賞の感想を聞かせてください。
 学会での初めての単独発表で最初はとても緊張したものの、比較的落ち着いてできたと思います。発表の半年後に受賞の知らせをメールで受けたのですが、最初は信じられなくて……後からじわじわと喜びが湧いてきて、これからもっともっと勉強していかなければと決意を新たにしました。授賞式では、緊張のさらに上を行く高揚感を感じつつ、「今私は最高な経験をしているんだな」と冷静に考えている自分もいて、生まれて初めての不思議な感覚を味わいました。

――研究の今後の課題や展開について教えてください。
 “自宅でできるリハビリ支援装置”を目指していますので、装置の小型軽量化と模範者の動きの数値化・自動化、操作のしやすさなどが今後の課題です。臨床実験の準備も進めており、その結果でまた多くの問題点が出てくると思いますが、ひとつひとつ改善を重ね、実用化に向けて研究を進めていきたいです。



武藤 剛
理工学部
情報テクノロジー学科
助教
武藤 剛
 福祉工学には「代償」と「リハビリテーション」のふたつの考え方があります。例えば足に障害がある人のために装置を作る場合、車椅子など歩く機能を代償する装置の開発と、足のリハビリを行う装置の開発に分けられるのですが、現在の福祉工学においては前者の開発が盛んです。もちろんリハビリ装置の開発も進められていますが、それは弱った筋肉を鍛える筋トレ機器、つまり「筋肉へのアプローチ」が主であり、ダメージを被った脳を修復する「脳へのアプローチ」はあまり注目されていなかったのです。今回の研究は、今まであまり陽の当たらなかった“脳からのリハビリ”に着目したことで、これからのリハビリ訓練装置の開発に新しい光を投げかけたと言えるでしょう。「トレーナーと被訓練者が脳内のイメージを交換する」という手法は、福祉工学の世界にかなりのインパクトを与えたと思っています。
 今リハビリの現場では作業療法士が不足しており、それを補う装置のニーズが高まっています。今後はぜひ実用化に向けて、ひとつずつ課題をクリアして改良を進めていってくれることを期待しています。
ページトップへ