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物理・数理学科の秋光純教授の研究グループが、ふたつの超伝導状態が存在する物質を発見

 本学理工学部物理・数理学科 秋光純教授の研究グループでは、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)との共同研究により、ひとつの物質に通常ひとつである超伝導状態が、同時にふたつ存在する珍しい物質を発見しました。今回の功績は、権威ある米国物理学会誌「フィジカル・レビュー・レターズ」にも掲載されるなど、今後の超伝導現象のさらなる解明の手がかりになるとして注目されています。
 今回の発見の経緯、意義などについて、秋光教授に聞きました。
秋光 純
理工学部
物理・数理学科
教授
秋光 純
 ある物質が超伝導状態であることを特徴づけるものを「エネルギーギャップ」と呼びます。ひとつの物質に対してエネルギーギャップはひとつが普通ですが、今回の研究では、そのエネルギーギャップがふたつ存在する物質が発見されたわけです。発見された物質は、イットリウムと炭素との化合物である「Y2C3」とランタンと炭素との化合物「La2C3」の2種類。ちなみにY2C3は、秋光研究室に所属する大学院生であった芥川智思君が発見した新超伝導体です。
 ふたつのエネルギーギャップが存在する物質(二重ギャップ超伝導体)については、昔から理論的には予言されていたことです。その予言が現実のものになったのは、我々が高温超伝導物質として2001年に発見した「二ホウ化マグネシウム(MgB2)」が最初でした。MgB2に関しては、39K(ケルビン)の“高温”の方が大きく注目されましたが、実は初めて発見された二重ギャップ超伝導体でもあったのです。そのため当時は、“二重ギャップが高温伝導物質の条件か”との憶測がありましたが、それは今も解明されていません。ちなみに今回のY2C3は18K、La2C3は14K。高温と呼べなくもありませんが、39Kと比べるとまだ差があります。二重ギャップと高温との関係は、まだまだ謎のままです。しかし、これまでMgB2だけであった二重ギャップ超伝導体が、今回また新たに発見されたことにより、この分野に関する理解がさらに進んでいくと思われます。そういう意味では大きな貢献につながる発見だったと考えています。
 また、今回の研究で注目すべきは、Y2C3とLa2C3という2種類の物質が発見され、それぞれを比較してデータを検出できた点です。超伝導状態の温度依存性は、ミュオンスピン回転法という測定方法を用い、専用の実験機器で調べますが、実験データを比較すると、同じ二重ギャップ超伝導体であっても、Y(イットリウム)とLa(ランタン)の違いで、超伝導の現れ方にも大きな違いがあることが証明されました。これまでは比較対象が存在しなかったわけですから、このことは今後の超伝導現象を深く解明していく上でも重要視されるはずです。今後は他の手段を用いてこの性質を解明していきたいと思っています。
 「超伝導」と一言でいっても、そこへアプローチする方法は無数に存在します。我々も毎日のように研究に取り組んでいますが、まだまだ分からないことばかりです。新しい二重ギャップ超伝導体の発見も大きな研究成果ではありますが、超伝導研究におけるひとつの“過程”。今回の結果にさらなる考察を加え、今後どう展開していくかが大切です。我々の挑戦はこれからも続きます。
 なお、最後になりましたが今回の研究は、秋光研究室に所属する大学院生の黒岩壮吾君と佐浦良洋君が中心となって進めてくれたプロジェクトであること、超伝導研究に欠かせない実験施設を装備する「高エネルギー加速器研究機構」との共同研究であったこと、そしてカナダのトライアンフ研究所に多大なご協力をいただいたことをお伝えしておきます。
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