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誌上公開講座 No.43
青山スタンダード テーマ別科目 社会理解関連科目「人口問題A」

井上 孝
経済学部
現代経済デザイン学科
教授
井上 孝
西暦3000年の日本人口は64人?!
 「え、まさか!」、「いくらなんでも64万人の間違いでは?」……。西暦3000年の日本人口が70人を切ると言ったら、普通はこのような反応が返ってくるのではないでしょうか? でもこの数字は、現在の出生率の水準が今後千年あまり続くならばありうる話なのです。逆にいえば、現在の日本の出生率の水準はこれほどまでに低いといえるのです。「人口問題A」では、こうした、日本の人口問題に関するトピックを複数取り上げ、それらを系統立てて論理的かつ平易に解説しています。ここでは、上述したトピックすなわち西暦3000年の日本人口の話に絞って論じたいと思います。


TFRと「人口の置き換え水準」
 およそ千年先の人口を推計するには現在の出生率の情報が必要であり、その情報として用いられるのがTFR(Total Fertility Rateの略、「合計特殊出生率」と訳される)です。TFRは出生率の中で最もよく使われる指標であり、通常、「一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均値」と説明されます。TFRの興味深い点は、たった1年間の出生データから生涯に産む子どもの数を割り出してしまうことです。たとえば、最新(2007年)のTFRは1.34ですが、この数値は、日本のすべての女性が2007年の出生動向に従って出生行動をとり続けたとき、最終的に平均1.34人の子どもを産むことを意味します。つまり、TFRは「子どもを産み終えた女性の、これまで産んだ子どもの数の平均値」とはまったく異なるものです。
 今回の推計に不可欠なもうひとつの情報が「人口の置き換え水準」です。これは、人口が増加も減少もしなくなる静止人口に至るような出生力の水準を意味し、その水準をTFRで表すと日本の場合約2.08人となります。すべての人間が2人の親から生まれますからこの値は2.00人でよい気もするのですが、実際には0.08人余計に出生しないと人口は維持されません。結婚・出産行動をとる以前に亡くなってしまう人を補う必要があるからです。


現在のTFRが千年続くならば
 人口の置き換え水準は人口を維持するための出生率の水準ですから、TFRを2.08人で割った値は一世代後の人口規模を表します。つまり、TFRの値が1.34のまま一定であれば、今後日本の人口は一世代ごとに1.34/2.08倍されていくことになります。一方、日本の一世代(親と子の平均年齢差)は現在約30歳なので、西暦3000年は今から33世代後に相当します。かくして西暦3000年の日本人口は、12,770万人(2007年の日本人口)×(1.34/2.08)33=63.76人、すなわち64人となるわけです。ちなみに、日本のTFRは2005年に1.26を記録したあと2年連続で上昇し出生率に回復傾向が現れたとの報道がなされました。上の式に1.26を代入すると西暦3000年の日本人口はわずか8人となるので、確かにTFRが0.08上昇した効果は8倍(8人→64人)にもなるのですが、これを素直に喜んでよいものかどうか難しいところですね。
 本授業は、こうした衝撃的ともいうべき数字を適宜示すことによって、受講生の皆さんに日本の人口問題をより実感的に理解していただこうとの方針で進めております。

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