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2008年度司法試験合格の3名による座談会を開催。本学法務研究科(法科大学院)の魅力を聞く

 2008年度の司法試験において、計15名の合格者を輩出した本学法務研究科(法科大学院)。青山学院の建学の精神とも通ずる「社会的に弱い立場の人たちに、やさしいまなざしを向ける法律家の育成を目指す」との理念が、実を結んだ形です。今回は、未修者コースを修了し、短期間で合格の夢をかなえた3名の院生に集まっていただき、山崎敏彦法務研究科長の司会進行のもと、特別座談会を開催しました。本学ロースクールの利点や特色について、さまざまなお話をお聞きしました。

写真左から

野津 孝義さん
(東京大学教養学部/Harvard Univ. Master in Public Administration 出身)

碓氷 正志さん
(青山学院大学法学部出身)

山崎 敏彦
法務研究科長

坂生 雄一さん
(青山学院大学国際政治経済学部出身)


さまざまな生活環境から目指す法曹の道
山崎 まずはみなさん、司法試験合格、本当におめでとうございます。
3人 ありがとうございます。
山崎 みなさんは未修で入学し、お二人は最短の3年で、お一人は4年で司法試験に合格されました。本日は、それぞれに異なる生活環境のなかで、どのように勉強に臨まれ、どう試験に対応されたのかなど、いろいろとお話をお聞きしたいと思います。最初はやはり、合格された今の率直なお気持ちからお話しいただきましょう。
野津 合格か不合格かで天国と地獄ですから、合格できてうれしい、というよりホッとしています。私の場合は既に49歳。自分なりの生活もありますし、“もう一年”となると厳しいものがありましたから。
碓氷 合格して特に生活環境が変わったわけでもありませんので、まだ合格した実感が湧きません。恐らく修習が始まれば、じわじわと込み上げてくるのかもしれませんが…。
坂生 私もまだ実感はないですね。やはり弁護士の先生方からは、修習の時期が“第三者的に法曹の仕事に直に関与することができる唯一の時期”とのお話を聞いており、早く修習で様々なことを経験したいとの思いが強いです。
山崎 野津さんは東大を出られた後、銀行在職中にハーバード大でも学ばれ、長い社会経験を積まれました。坂生さんも青学卒業後に1年間、地方公務員として勤務されています。そして碓氷さんは、高等部からずっと青山学院で過ごされました。そんな生活環境の異なるみなさんが、いつ法律に関心をもち、法曹の道を歩むことになったのか、とても興味深いのですが…。野津さん、いかがですか。
野津 私の大学受験は、もう30年以上前ですね(笑)。そのころは法律関係の道は一切考えていませんでした。母がクリスチャンの影響か、漠然と「人の役に立ちたい」との思いは抱いていましたが、結局、幅広いことが学べそうだと教養学部への進学を選んだのです。その後、銀行に入社した私は海外の大学へも留学し、「国際」と「証券」という、当時の銀行としては最先端と呼べる環境で働きました。まだマニュアルもなく、先輩もいなかった分野の仕事です。そういう意味では、組織を動かす経験もできましたし、やりがいも感じていました。ところが、やがて社員にリストラを勧告する役割が回ってきたのです。組織を守るためには仕方のないことですが、「人の役に立ちたい」という理想との葛藤があって悩みました。そして最終的に、「自分でやりたいことは何か?」を自問自答し、長く仕事を続けるうちに知識が身についた「法律」に、強い興味を抱いていることに気付いたのです。
山崎 「人の役に立ちたい」という思いに応える道が、野津さんの場合は「法律」だったわけですね。
野津 はい。ですから企業相手ではなく、小さな田舎町で、人と人とのつながりを感じながら仕事のできる弁護士が、私の理想です。
山崎 では、坂生さんが法律の道を目指したきっかけは何だったのですか。
坂生 私は青学の国際政治経済学部出身なので、法律にはあまり関心がなかったのが正直なところです。大学時代は公務員になることを目指して勉強し、無事に地方公務員の試験に合格。卒業後は愛知県庁で務めました。ただ公務員は想像していた以上に「組織」として仕事をするイメージが強く、私としては少し違和感を感じ、もっと「個人」として働くことに憧れました。そして、公務員試験の勉強を通じて学んだ法律の分野に思い当たり、ちょうどロースクールが開設し始めたタイミングでもあったので、思い切って本格的に法律を勉強しようと考えたのです。
山崎 我々としましても、野津さんや坂生さんのように社会経験を積まれた方々の司法への夢の実現をサポートできることは、本当に喜ばしいことです。今年の15名の合格者のうち、社会人の方が5名含まれています。少人数制を売りにしている分、合格者の数的には多くないのですが、社会人の方も結果を出されている現状に、我々も法科大学院として、ひとつの役割を果たせているのではないかと考えています。
 では、続いて碓氷さんですが、青学の高等部から大学法学部、そして法科大学院と進まれたわけですから、最初から法曹を目指されていたのですか。
碓氷 いいえ(笑)。実は大学時代は、自分にとって司法試験は高すぎるハードルだと思い、半分あきらめていました。それがちょうど4年生のときに新しい司法試験制度に変わり、法科大学院も開設され、「これは自分にとってチャンスかもしれない」と考えたのです。そして気持ちを一新して、もう一度真剣に法律を学ぶことを決意しました。そのため法学部出身ながら、大学院は既修ではなく、未修で受けることにしたのです。


青山学院の法科大学院の大きな特色
山崎 司法試験合格という結果を出されたみなさんから見て、青山学院の法科大学院で学んだ印象はいかがですか。
碓氷 とにかく先生方の協力体制が充実していて、心強かったですね。正規の授業だけでなく、補習や時間外の質問にも快く応じていただきました。大学時代は所属したゼミの先生と親しくなるイメージですが、法科大学院では、ほとんどの先生方と密な関係を築くことができ、幅広い知識の習得につながったと思います。
野津 私にとっては3校目の“大学”ですが、確かに先生方と気軽に直接話せる距離感は、青学が一番でした。
坂生 少人数制だったので、先生との距離もそうですが、院生同士の交流も深まりました。社会人も多くいたので、いろいろな刺激を受けることもできましたね。
碓氷 そうですね。未修者が自分の力だけで、効率的に勉強を進めることは難しいと思います。多くの仲間たちと一緒に頑張れる環境があったことが、今回の合格につながった要因のひとつだと自分では考えています。
山崎 なるほど。実際に、一緒に勉強していたグループの人が揃って合格したという結果も見ていますし、私も“グループ学習の大切さ”を教えられました。効果的な学び方は人それぞれですから、自分に合った学習法を見つけることが大切ですが、力をつけるためには討論することが重要です。
野津 私の場合は、どうしても時間が限られていたので、かなり割り切った勉強法になりました。法科大学院では、司法試験合格を目指すだけではなく、一人前の法曹になるための幅広い学びも充実しているわけですが、すべてを理解していては、とても時間が足りません。やむなく「司法試験合格」に目標を絞り、学ぶべき科目を集中して勉強する方法を取ったのです。本来、法科大学院としては歓迎されない勉強法かもしれませんが…(笑)。
山崎 いえいえ、それで結果を出されたわけですからすばらしいことです。確かに、「合格したい」院生側と、「いい法曹教育を行いたい」教員側には、ギャップが存在しています。我々としては、「合格者輩出」は大きなミッションとしながらも、法曹のプロフェッションとしての資質を身につけていただきたいことも本音です。その辺りは、院生と教員との距離が近い特性を活かしながら、今後も意志の疎通を図っていくべき課題だと思っています。

司法試験合格は、新たなスタート
山崎 では最後に、司法試験に合格され、将来に向けて大きな希望を抱いているみなさんに、自分が理想とする法律家像、および具体的な夢や目標があればお聞きしたいと思います。野津さん、いかがですか。
野津 私は島根県の田舎町の出身です。将来的には地元に戻って“町弁”になりたいと考えています。ただし人のつながりと同様に、「町づくり」の分野でも力になれるとうれしいですね。これまで生きてきて、ずっと変わらずに来た自分自身の理念とともに、青山学院ロースクールでの3年間で新しく得られた知識なども大切にして頑張っていくつもりです。
坂生 私は地方公務員という立場で、地方分権の流れのなか、多くの先輩方と一緒に働くことで、地方の現状などを知ることができました。今後は弁護士として、地方の条例立案などの部分に携わっていくことが目標です。
碓氷 弁護士法の第一条第一項に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と、あります。なかなか“使命”が法律で規定されている仕事は多くないので、弁護士という職業に誇りを持ちたいです。また、高度な専門的訴訟に関わりたいと思うと同時に、本当に法律を必要としている人々の身近な場所で働きたいとの思いもあります。法律の世界にも、誰かがやらなければならないのに、誰にも見向きされずに放っておかれている部分があるはずです。そういったところへの働きかけもしていきたいです。
山崎 みなさんのメッセージのなかに、「町づくり」「立法」「人権」など、法律に関わるものにとって素敵なキーワードが並びました。青山学院の法科大学院で学ばれた方々の将来の目標に、このような言葉が並ぶことは、少し手前味噌ながら、我々の取り組みが間違っていなかったことの証ではないかと感じました。
 みなさんにとって司法試験の合格は、ゴールではなくスタートです。これからも高い理想を持ち続け、法曹の道で活躍していただきたいと思います。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。
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