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総合文化政策学部の沖本幸子准教授の著書『今様の時代』が、「第一回日本古典文学学術賞」を受賞

 総合文化政策学部の沖本幸子准教授(専門分野:日本芸能史、表象文化論)の著書『今様の時代~変容する宮廷芸能~』が、第1回日本古典文学学術賞(国文学研究資料館賛助会主催)を受賞しました。この賞は、財団法人日本古典文学会の「日本古典文学会賞」を引き継ぐ形で2008年度に創設されたもの。沖本准教授は、記念すべき第1回目の受賞者として名前が刻まれることになりました。
 受賞の喜びの声と、受賞作品に込められた思いなどを沖本准教授にお聞きしました。
沖本 幸子
総合文化政策学部
准教授
沖本 幸子
 「現代風」という意味を持つ「今様(いまよう)」は、平安時代に生まれた、当時の“流行歌”です。通常、文学に携わる立場の人間から言えば、歌詞の解読などに焦点を合わせた研究に取り組むべきかもしれません。しかし私の場合は、今様がどのような場でどのように歌われ、どのように享受されたかといった今様をめぐる状況に大きな興味を抱きました。そんな私の作品が「文学」と名の付く賞をいただいたことは、「大変ありがたい」とともに、「よろしいんですか?」との思いです。
 もともと今様は、平安時代の庶民たちに歌われていた流行歌でした。本来、貴族たちから見れば、庶民の流行歌など卑しいものであり、見向きもされないはず。ところが、その今様が、宮廷にまで入り込み、宮廷の宴で一種の“宴会芸”として親しまれたのです。とくに熱心だったのが、『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』という今様の歌謡集成まで編纂した後白河院で、喉をつぶしても今様を何日間も歌い続けるなど、その熱狂ぶりは尋常ではなかったといいます。「そんな“時の権力者”さえも魅了してしまう今様とは、一体どのようなものなんだろう?」と思ったのが、私が今様について調べてみようと考えたきっかけでした。
 今様の歴史的背景については著書に詳しく記しましたが、今様を研究してひとつ気づいたのは、「“流行歌”だから良かった」ということです。もし今様が、代々そのままの形で伝承されるような形式的なものであれば、私の興味も途切れていたかもしれません。しかし、従来庶民に親しまれ、宮廷では宴会芸として歌われた今様ですから、その時代に合わせて比較的自由に、新しいものを取り入れながら変化を重ねていったのです。時代によって、あるいは場所や状況によって、そのときどきの人々の素直な興味がストレートに表現され、それが大きなエネルギーとなって歌われた今様。だからこそ庶民だけでなく貴族にも愛されたはずで、それが私が今様とトコトン付き合ってみたいとの思いに駆られた理由でもあります。
 日本芸能のひとつでもある「今様」に対し、文学的視点からは少し外れたところからアプローチを試みた私の著書ですが、そういった「常識」から一歩離れ、いろいろなものを違った角度から見つめなおしてみる姿勢は大切なことだと思っています。そこから今まで気付かなかった新しい発見も生まれるかもしれません。今様とか研究とかに限らず、常識を疑い、人が見落としてきたものを見つめていくことの面白さと豊かさを学生たちにも伝えられたらと思います。
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