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新しい“知”への挑戦



 2008年10月25日(土)、作家井上ひさし氏を講師として招いた講演会が青学講堂にて開催されました。この講演会は、筆者が担当する日本文学特講「名作を読む/観る」の公開授業として、広く一般の方々にも開放されたもので、同時に読売新聞社が各大学と協力して開催している「読書教養講座」とも提携して実現しました。
 講師を務めた井上ひさし氏は1934年山形県生まれ。『道元の冒険』(1970年)で岸田戯曲賞・芸術選奨新人賞を受賞し、『手鎖心中』(1972年)で第67回直木賞、『吉里吉里人』(1981年)で読売文学賞を受賞。以後、現在にいたるまで戯曲、小説に健筆を振るい、奇想天外な趣向や笑い、語呂合わせで<現代の戯作者>と呼ばれ、近著に『ボローニャ紀行』『ロマンス』などがあります。



 講演のテーマとなった「作家の生き方」について、井上氏は長らく興味をいだいているという菊池寛の作品世界や、その生きる姿勢について話を進め、近年テレビドラマ化されて話題となった『真珠夫人』や『東京行進曲』『貞操問答』など、70年以上も前に書かれた菊池寛の通俗小説が、現在でもなお新鮮な「面白さ」を持っていること、また戯曲『父帰る』や『屋上の狂人』も現代に通用する深い主題を抱えていることなどを、ユーモアをまじえながら分かりやすくお話されました。
 続いて後半は、資料として聴講者に配布された「菊池寛語録」を見ながら、井上氏と筆者との対談に移り、菊池寛がつねに大衆読者を目線に置いた作家であったこと、また作家的成功のあとは、若い才能の育英や作家の経済的な擁護などの社会的支援者として尽力し、その「遺伝子」ともいうべきものが芥川・直木賞として現在に脈打っていることなどが話し合われました。
 1時間余の授業は瞬く間に過ぎ、1000名を超える聴講者の万雷の拍手をもって終了。「もっとお話を聞きたかった」「さっそく菊池寛の作品を読んでみます」といった声があちこちから聞かれました。
(文学部日本文学科 教授 片山宏行 記)
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