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理工学部 橋本研究室が、電波を吸収し性能を安定させる
セラミックス製無線モジュール用ケースを共同開発

 電磁波や電波吸収体関連の共同開発を数多く行っている理工学部橋本修教授の研究室では、今回岐阜のセラミックスメーカー、ウイセラとセラミックス製無線モジュール用ケースを共同開発しました。同社はセラミックスでは日本トップクラスの技術を持っており、電波吸収体の研究において最先端を走る橋本研究室との共同開発で画期的な製品が生まれました。その電波吸収セラミックスケースについて、橋本修教授に話をお聞きしました。
橋本 修
理工学部
電気電子工学科
教授
橋本 修
 共同開発で作り上げたのは、縦と横が10ミリメートル、厚さは1.2ミリメートルの小さな平べったい箱です。この中に発信機や受信機、アンテナを組み込めば、超小型の高性能通信装置を作ることができます。電波を発生させる装置で常に問題になるのは、発信装置、受信装置、アンテナその他、内部に組み込まれている各装置が発する電波が他装置に及ぼす干渉による悪影響を、どのようにして防ぐかということです。干渉が大きければ、正常に作動せず不安定になってしまいます。
 従来、このようなケースを作るときには、別途作業により内部に電波吸収体を貼り付けるなどの処理が必要でした。しかし、我々はケースそのものを電波吸収体にすることによって、干渉のない無線モジュール用ケースの開発に成功しました。ケースは焼き上げて作るセラミックス製で、その主材料となるのは酸化アルミニウム(アルミナ)です。この酸化アルミニウムに電波吸収機能を持たせるために異物である炭素を加えるのですが、この炭素の比率と焼き上げる焼成温度がポイントになります。ケースの強度を保ちながら十分な電波吸収力を持たせるために、何度もシミュレーションを行い、理想的な材料比率と焼成温度を確定しました。
 もうひとつ大きなポイントは、球面波の吸収に優れた能力を持たせることです。電波は、池に石を投げ込んだときにできる波紋のように広がります。つまり遠くから来る電波は、ほぼ直線状になっている平面波ですが、電波源に近い位置では電波はアールの大きな球面波で届きます。この球面波を吸収するには、平面波に比べ格段に難しい技術を要します。10ミリメートル四方のケース内で発生する電波は、当然極めてアールの大きな球面波です。これをしっかりと吸収する吸収体を作るためには、FDTD(時間領域差分法)を駆使して複雑な電磁界を解析する高度な能力が要求されました。
 この電波吸収セラミックス小型ケースは、60ギガヘルツで20デシベル以上吸収できるため、ケース内の電磁界環境は極めて良好で、各種デバイスへの干渉を抑えることができます。また一体成型による利便性も高く、用途はいろいろと考えられます。例えばホーム家電分野では、屋外から取り込んだ電波を室内の壁掛けテレビに電波で飛ばす時、発信機も受信機も超小型にでき、テレビに見苦しいコード状のアンテナは不要になります。またバッジ状に加工して、ヘルメットに貼り付けてイヤホンとマイクを装着すれば、工事などの現場で両手フリーのまま作業をしながら会話ができる送受信機も作ることができます。
 今回の製品は小型ケースですが、板状などさまざまな形に焼成することが可能であり、例えば自動車に取り付けるレーダーのアンテナ周りに使えば、電波の干渉を抑えて性能を高めることができるなど、応用範囲は無限に広がっています。
 このように橋本研究室では、教授を中心に大学院生、学部生が最先端の研究に取り組んでいます。セラミックス電波吸収体の研究においては、大学院生の一人が博士号を取得しました。
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