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青山学院大学総合研究所創立20周年を迎えて

 青山学院大学総合研究所は「青山学院大学における教育・研究との有機的な関係のもとに広く学術を統合し、社会と学術文化の進展に寄与する」という目的のもと1988年9月に設置され、現在も精力的かつ多彩な研究活動を展開しています。今回は、創立20周年を迎えた総合研究所で第5代所長を務められた半田正夫院長代行・常務理事に就任当時を振り返っていただくとともに、第7代所長佐伯胖教授と第8代所長(現所長)秋元実治教授のお二人に対談していただき、総合研究所の現在の取り組みや今後の課題と展望などについて語っていただきました。

学際性を追求する総合研究所のさらなる発展を願っています。
半田 正夫
総合研究所元所長
(1998年10月
~2000年3月)
院長代行・常務理事
半田 正夫
 私が所長に着任した1998年当時の総合研究所は、学部から派生した7つの研究センターがそれぞれの世界観をもって研究に取り組む感が強く、本来の目的である“学術の統合”という面では、まだまだ発展途上の段階にありました。私は、そのような状況を何とか改善したいと考え、組織体系の根本的な見直しを視野に入れた改革の方向性を模索していました。ところが、改革が構想段階のうちに学長に就任することが決まり、その後は、青山学院大学全体を統べる立場から、後任の所長を務められた先生方を支援し、改革の経緯を見守ってきました。そして、佐伯胖教授が所長を務められていた2003年に、学術間の自由な横断を可能にする新体制を実現し、それが現在にまで至る活気ある流れを生み出しているのです。
 社会のグローバル化とともに学術研究へのニーズが多様化している現在、異なった専門分野をもつ研究者同士の協働は、極めて重要といえます。学際的な研究の先端を担う総合研究所には、既成の考え方にとらわれない自由な発想のもとで、さらに多くの優れた研究成果が生み出されることを期待しています。そして、その成果を社会に向け広く発信し、総合研究所の活動が多くの人々に理解され、支持されることを願っています。

対談
20年の実績を未来へつなぐ──
学術文化の次代を担う総合研究所は、新たな可能性を追求し続けます。
佐伯 胖夫
総合研究所前所長
(2001年4月~2005年3月)
社会情報学部
社会情報学科
教授
佐伯 胖夫



秋元 実治
総合研究所所長
(2005年4月~)
文学部英米文学科
教授
秋元 実治
学術研究の可能性を広げた2003年の体制改革

秋元 佐伯先生が所長を務められていた2003年に、総合研究所は組織の大幅な改編を行いました。当研究所にとっては、前例のない一大改革となりましたが、先生はどのようなお考えで取り組まれたのでしょうか。
佐伯 私は、元所長で当時の学長である半田先生の要請を受け、青山学院大学総合研究所所長に就任しました。学部独自の研究活動が実質的に基本となっていた「研究センター制」を廃止し、複数の学術の横断を可能とし、よりフレキシブルにテーマを追究できる「プロジェクト制」へと体制を切り替えたのは、 “学際的な環境を整えるために組織を一新したい”という先生の志を具体化したものだったのです。
秋元 私が佐伯先生から所長を引き継いだ時点で総合研究所に備わっていた、自由で活発な気質は、まさにその成果の表れなのでしょう。近年、優れたプロジェクトが数多く生み出されているのも、学部の枠組にとらわれずに研究に取り組める環境があるからこそと感じています。
佐伯 組織体系の改編だけでなく、研究テーマと予算の設定方法を改善したことも、研究成果が上がっている大きな要因といえます。従来の制度では、各研究センターに予算がほぼ均等に割り当てられ、優れたアイデアがあっても、十分な規模でプロジェクトを展開することができませんでした。しかし現行の制度では、幅広く募集されたプロジェクトから運営委員会が優れたものを選び、内容に応じて適切な予算額を決めているため、精選された質の高い研究に合理的に予算を割くことができます。


重要かつ雄大なテーマに挑む
創立20周年記念特別研究プロジェクト


秋元 総合研究所では、2008年度には通常のプロジェクトに加えて『創立20周年記念特別研究プロジェクト』を募集しました。私を含めた運営委員会は、「20年後までつながる“habitable zone”(住み心地のよい領域)にある地球」というコンセプトのもとで審査に臨みました。その結果採択を受けたのは、文学部の平田雅博教授、北村文昭教授、佐藤泉教授らによる『戦争記憶の検証と平和概念の再構築』、文学部重野純教授、理工学部福岡伸一教授、柳原敏夫弁護士による『科学技術の発展と心的機能から探る安全と危険メカニズムに関する総合研究』の2件です。
佐伯 2件ともに研究者同士のコラボレーションが可能にした、個性あるプロジェクトであると思います。また、内容が優れているだけでなく、人々の関心を引きつける魅力を大いに備えていると感じました。
秋元 そうですね。20周年を記念するにふさわしい“雄大さ”を第一のポイントとして選考しました。『戦争記憶の検証と平和概念の再構築』は、歴史の流れとともに、戦争の記憶が人々によってどのように語られ整理されてきたかを検証し、平和的対話の可能性を考察するという、まさに人類にとって恒久的な課題に取り組むプロジェクトです。一方の『科学技術の発展と心的機能から探る安全と危険メカニズムに関する総合研究』は、科学技術の進展の副作用として発生している、人類の能力低下がテーマです。身体能力やコミュニケーション能力、五感などの低下に伴う危険性について、認知心理学、生命科学、法学など多様な領域からアプローチします。研究そのものの社会的意義だけでなく、学際的研究の体現という観点から見ても、非常に価値のある取り組みであると感じています。


研究活動をさらに推進させ学術による社会貢献を目指す

佐伯 総合研究所では、2003年の改革以降も、2005年にIT教育の拠点「eラーニング人材育成研究センター(eLPCO)」を立ち上げるなど、環境はますます充実していますね。
秋元 当研究所では、現在も優れたプロジェクトが次々と始動しています。現状を継続・発展させ、これからも活発な研究活動を展開していくことを第一に考えています。しかし一方で、社会一般へ向けた「成果の発信」という面では、残念ながら十分に成されているといえません。私はこの課題を克服する一歩として、早期に総合研究所の出版会を設立することが必要であると考えています。
佐伯 課題といえば、私は所長在任中から、総合研究所をもっと自立した機関にしたいと考えていました。現在の総合研究所の研究者は、一部の学外から招いた研究者を除き、基本的に学部との兼任教員で構成されていますが、真の独立した研究機関となるためには、専属の研究者の登用が必要であると感じています。また、青山キャンパスの好立地を生かし、学外の人々に開かれた取り組みを立ち上げるのもおもしろいのではと思っています。社会と学術文化に寄与するという、総合研究所の理念と照らし合わせても、大いに意義があるはずです。
秋元 なるほど。私も総合研究所の研究成果を教育成果にもつなげていきたいと考えています。先日行われた「総合研究所創立20周年記念講演会」には、多くの学部生の参加者があり、学生たちの強い意欲をうかがうことができました。現在の総合研究所は、教員の手で運営されていますが、学生が教員に企画を持ち寄るような機会もつくってみたいですね。今後も、ボーダーラインを設けず、さまざまな研究活動に取り組んでいきたいと考えています。是非ご注目ください。
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