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誌上公開講座 No.45
青山スタンダード テーマ別科目 言葉の技能  アメリカ合衆国の社会と文化B「変動するアメリカ」

堀 真理子
経済学部
教授
堀 真理子
 私が担当する「アメリカ合衆国の社会と文化B」の授業では、今日のアメリカ社会の変化に敏感に反応しながら、アメリカ社会の成り立ちや政治機構、文化などを多角的に分析しています。2008年度後期の授業では、アメリカ大統領選挙に関する新聞記事やテレビニュースがほぼ毎日報道されたので、時々刻々と変化するニュースの内容を追いながら、アメリカの過去の歴史と現在の環境、アメリカ社会が抱える問題点について受講生とともに考えてみました。



 今回黒人のオバマ氏が勝利した大統領選はこれまでの選挙以上にアメリカ国民の考え方が問われました。アメリカでは、これまでの大統領は白人男性で、その若さや強さが期待されてきました。ところが今回、共和党に代わって政権を執ることが期待された民主党内で争われた候補は、黒人男性と白人女性でした。この二人で競い合った末に最終候補に残ったのは黒人男性です。他方、共和党が選んだ最終候補者は白人男性であるものの高齢者であり、しかも副大統領候補に選んだのは白人女性です。いわば黒人、高齢者、女性という社会的弱者とされていた人びとが正副大統領候補として選出されたわけです。
 これは今までにない大きな変化です。1960年代のキング牧師たちの公民権運動から半世紀を経たいま、法律的には人種差別はなくなり、フェミニズム運動の影響で公けに性差別を口にする人は少なくなりました。しかし、偏見や差別がなくなったわけではありません。



 私が2000年に短期の在外研究で過ごしたプリンストン大学のある町は、大学を囲むように立ち並ぶ高級住宅街には白人居住者が、その先には黒人居住者や中南米からの移民の住む地域が広がっています。東部のリベラルな人びとが集まる町ですらこのような人種による住み分けがあるのですから、保守的な南部ではさらに大きな亀裂が存在します。今夏、私が訪れた黒人野球やジャズの中心地で有名なカンザスシティでは、ちょうど全米から黒人キリスト教会の信者が集まって大々的なパレードが行われていましたが、パレードの参加者に対して見物人は少なく、それも黒人ばかりでした。ところが、パレードが行われていた通りから一歩入ったところにあるシャレたレストラン街を覗くと、なんと大勢の白人たちが我関せずと悠々と食事をしているではありませんか。白人の黒人に対するこの無関心さは異様でした。田舎町とはいえ、洗練された料理が提供されるこの場所は、山盛りの唐揚げとフライドポテトがドーンと運ばれてくる黒人街の食堂とは明らかに違い、その貧富の差にも驚かされました。



 授業ではアメリカ社会に根の深い人種問題やそれに付随する社会問題を考察しながら、同時に人種や民族の多様性から生まれた大衆文化にも触れていきます。毎年受講者の人数が多いので、受講者との対話を実現するために、毎回、授業の中で扱う問題や主題に関連する事柄についてアンケートやクイズを通して意見や疑問点を書いてもらい、それを授業に反映させるように努めています。
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