メインコンテンツへ
創立50周年を迎えた本学法学部を記念し、法学部長と法務研究科長との対談を実施

 1959年に設置された本学法学部は、今年2009年で50周年を迎えました。著名人を招いての記念講演会の実施や、来たる11月8日(日)には記念式典の開催が予定されるなど、法学会や同窓会とも連携しつつ、節目の年を迎えて盛り上がりを見せています。
 この50年間に、法曹界はもとより、多彩な分野に卒業生を輩出した法学部。これまでの歩みを振り返るとともに、今後の方向性も明確に指し示すために、土橋正法学部長と山崎敏彦法務研究科長による対談を企画。“AOYAMA LAW”の過去・現在・未来について語り合いました。
土橋 正
法学部長
土橋 正



山崎 敏彦
法務研究科長
山崎 敏彦
時代の流れがつくり出した“法化社会”の仕組み
土橋 法学部が今年で創設50周年を迎えました。学部創設時に尽力された多くの諸先輩方のご苦労があったからこその50年です。この記念すべき節目の年を学部長として迎えたことに感慨深いものを感じています。
山崎 私が青学の法学部に来たのは28年程前になりますが、それからの22年を考えてもいろいろな動きがあったわけですから、その倍以上、50年という時間の長さを感じさせられますね。
土橋 私が法学部に就任したのが26年前です。当時の法学部には、半田正夫先生をはじめ、森泉章先生、清水英夫先生、佐藤節子先生といった錚々たるビッグネームが教授陣に名を連ねている時代でした。どちらがいいとは言えませんが、当時と現在とでは教育への取り組み方はもちろん、いろいろな面で大きく変わりましたね。
山崎 そうですね。その当時の先生方は、自分自身の研究活動が、そのまま講義にもつながっている感じでした。現在のように学生一人ひとりを教育するというよりは、良くも悪くも“私に付いてこい”といった気質を持った方が多かったですね。
土橋 最近の大学は、社会や学生のニーズに如何に対応するかが大切とされており、自ずと教員にとって「研究」と「教育」とは結びつきにくい環境にあります。とはいえ、それをもって「昔は良かった」と懐古するわけではありません。やはり時代の流れがありますから、大学も教員も時代のニーズに対応することは大切だと思います。
山崎 社会が“法化”していることが確かにありますね。法化社会のなかで法律を学んだ人がどういう役割を担うべきなのか、そのあたりを教育でも考慮する必要があると思います。極端に言えば、昔は法を学ぶのも教えるのも「裁判」を念頭におけばよかったものが、現在は「 法は裁判のみにおいて機能しているのではない」ことを誰もが理解している時代ですから。
土橋 思えば、50年前はもとより、20年前であっても、当時では想像もできなかったような社会の仕組みが構築され、現代社会は新しい事件、そしてそれらに伴う新しい法律も生み出しています。ITの分野など、その最たるものかもしれません。IT犯罪などここ数年のことですからね。さらには、環境に関する法律も時代の流れの賜でしょうし、最近話題となる食品偽装に関する事件などは、以前ならありえないと考えられていた事例のはずです。
山崎 本当ですね。まさにこの10年で、社会や法を取り巻く状況が大幅に変わりました。
土橋 私が学部長に就任して6年目ですが、その前の4年は山崎先生が学部長でした。ということは、この“激動の10年”は、我々2人が学部長を務めてきたわけです(笑)
山崎 そういえば、そうですね(笑)

“公法・私法”の時代から、“コース制”の時代へ
土橋 やはり昔と現在とを比較する話になりますが、少なくとも私が青学に来た25年程前までは、法学部の学生は基本的に「六法」を柱に学ぶとの不文律がありました。それが最近は六法以外の“別グループ”の法律が注目されるようになっています。恐らくカリキュラムも当時はかなり単純だったのではないでしょうか。
山崎 その当時、もっと言えば我々自身が学生のころは、法学といえば「公法学」と「私法学」に分けるのがあたりまえでした。でも今では、理論的にも「公法」と「私法」とに分けるのは無理であるとみられています。
土橋 そうですね。「公法」は公務員を目指し、「私法」は企業を目指すという一応のイメージがあり、実際に公法の方が憲法や行政法に重点を置いたカリキュラムにはなっていたはずですが、だからといってそれらが私法に関係ないわけではありませんからね。
山崎 現在も言うまでもなく、基本となる六法を学ぶことは最重要課題であり、これを理解することがさまざまな応用に対応するためにも必須の前提です。しかし、以前と違って新しい分野の新しい科目が数多く展開されている現実があります。そしてその現状を眺めてみると、昔は分けられていた「公法」と「私法」の学びが横断的に再構築されているように見受けられます。
土橋 なるほど、そうかもしれません。結局は本学でも公法と私法との2学科制を廃止して法学科に一本化し、現在につながるコース制が誕生したわけです。
山崎 現在は6コースでしたね。
土橋 「総合法律」「企業法務」「公共政策」「法曹」「隣接法曹」「国際渉外法」の6コースです。ただし、まだ構想の段階ですが、社会のニーズを見据えたうえで、このコースを4つに絞ろうとの動きがあります。まずは法曹を目指すためにロースクールの受験を最初から視野に入れたコース。ビジネスに法律を生かすための企業法務を見据えたコース。国際化社会に対応した外国法に力を入れた渉外法のコース。そして「法の基本に立ち返る」ではありませんが、人権にアプローチするヒューマンライツ的なコースの4つを想定しているところです。恐らく実現できるとしても、人文・社会科学系学部(7学部)が4年間、青山キャンパスで学ぶ、就学キャンパスの再配置が行われる2012年からの実施だと思いますが。
山崎 4コースともに学生が何を学ぶのかが明確になっており、とてもいい分け方だと思います。何より公法と私法のような曖昧さがありません(笑)。法曹、ビジネス、国際、人権と、それぞれに個性を持ったコースとして、学生にも個々の特色が伝わりやすいのではないでしょうか。
土橋 そして、コースの再編とともに考えているのが、青学の法学部を卒業したからには、最低限の法の知識を身に付けてもらうことを目的としたカリキュラムの構築です。具体的に言えば、選択コースによって科目の縛りを強めようと考えています。カリキュラムに関しては、最近は“幅広く自由に選択できる”ことがトレンドなので、時代に逆行しているかもしれませんが、やるべきことはしっかりやってほしいな、と。実は現在のカリキュラムだと、場合によっては「債権法」を学ぶことなく卒業できてしまうこともありえます。債権や契約の知識を持たずして、法学部の学生としてどうか…というわけです。
山崎 社会のニーズの変化という話がありましたが、学生自体の気質も大きく変わりましたね。以前の学生はもっと自主性があり、カリキュラムの選択ひとつとっても「任せても大丈夫」という安心感がありました。現在はある程度のアドバイスが必要となる学生が多いです。もちろん一方で昔より素直で真面目な学生が多く、その面では評価できるわけですが、少し物足りなさは残りますね。

本学法学部と法務研究科がより深く連携するために
土橋 今回の対談を進めるうえで、当然話題の中心となるのが、本学部と法務研究科(ロースクール)との連携です。2004年に創立した本学の法務研究科ですが、5年経ってどのような印象を持っていますか。
山崎 新司法試験がスタートし、どうしても試験の合格者数で評価されるので、もう少しがんばらなければと思っています。それでも多くの優秀な研究科生が集まってくれており、例えば法学未修者の3年標準コースに入り、きっちりと3年で受かった人がでてきています。こうしたことを考えると、それなりの成果がでているとも思います。
土橋 私もみなさんが頑張っておられることは感じています。ただ、今ひとつ、本学の法務研究科が、教育の質の高さに比べて評価が得られていないと思えてならないのです。
山崎 そういったことはあるかもしれません。とくに残念なことに、青学の法学部には法律家になりたいとの強い意思をもった優秀な学生がたくさんおりますが、学部からの進学者が意外と少ない現実があります。私は学部の授業も担当している関係で、私自ら受け入れたいなと思われるとても優秀な学生について、他大学の法科大学院への推薦状を書くという状況もあるわけです。
土橋 本学ならではのしっかりとした演習を行っているわけですから、学部生が気軽に大学院の演習を体験できるような機会を積極的に設けるべきかもしれませんね。また、制度的な話になりますが、学部の3年間である程度の単位と知識を取得すれば4年生から大学院の講義を受けられる、いわゆる“飛び級”の制度導入なども急ぎたいですね。
山崎 飛び級制度は、我々にとっても、また学生にとっても非常に魅力的な制度だと思います。学生たちは大学に入学した段階から明確な目標が生まれ、モチベーションを維持したまま学習に取り組めるはずです。それに“3年+3年”との意識を最初から持っていれば、おのずと法科大学院を強く意識してもらえます。ただし、その進学先に本研究科を選んでもらえるよう、さらなるアピールが必要となりますが…。“4年+2年”、“3年+3年”と、どちらにしろ“6年間を青学で学ぶんだ”と学生に思ってもらえるような体制や環境を築いていくことが大切ですね。
土橋 そういう意味では、2012年に予定される就学キャンパス再配置は、一貫した学びの体制を構築したい法学部と法務研究科にとっては朗報です。これまでのカリキュラムでは、青山と相模原で科目をいずれかに振り分ける必要があり、3年生で青山に来てから相模原に設置されていた科目の重要性に気付いても手遅れということがありました。4年間を同じキャンパスで過ごせることで、カリキュラムの履修にも柔軟性が生まれるはずですし、何よりも入学直後から法務研究科がキャンパス内にある環境が、法曹を目指す学生にとっては大きな刺激になるはずです。先程も言った「模擬演習」的なイベントもやりやすくなると思います。
山崎 私も就学キャンパス再配置には大いに期待しています。法学部と法務研究科が同じ敷地にあることで、“6年間を青山で”との意識も強くなるはずですから。3年後を充実した体制で迎えられるよう、本研究科では、一層真剣に法曹養成教育に取り組んでいくつもりです。
土橋 50周年を迎えた法学部でも3年後を見据え、コース制の見直し、カリキュラムの再編成、さらにはセメスター制の導入などにも着手していくつもりです。この50周年をひとつの転機とし、今後のさらなる飛躍につなげていきたいですね。もちろん法務研究科ともより強く連携していきます。山崎先生、よろしくお願いします。
山崎 こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。
ページトップへ