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誌上公開講座 No.49
青山スタンダードテーマ別科目 身体の技能「スポーツバイオメカニクス」

井上 直子
教育人間科学部教育学科
教授
井上 直子
 昨今のスポーツ中継では、超スローモーション画像が使われること多くなってきました。例えばテニスではラケットがボールをとらえ、ストリングがゆがみ、ボールがつぶれ、ボールの毛が飛び散る様までも鮮明に見せています。人間の目では捉えることのできない素早い動き、ラケット面の変化、ボールの変形、上腕の動きなどをゆっくりと再現してくれます。通常のビデオ画像、テレビ画像は毎秒30コマの静止画が連続で再生されています。これに対して超スローモーション画像は毎秒1000コマという高速で撮影された画像が連続で再生されているのです。



 スポーツバイオメカニクスの授業では、毎秒125~500コマまで撮影可能な高速度ビデオカメラを用いて、スポーツ場面を撮影し分析しています。毎秒125~500コマですから、先の超スローモーション画像よりもコマ数は粗くなりますが、市販のビデオカメラによる画像や通常のテレビ画像とは比べものになりません。バレーボールのアタック、テニスのフォアハンドストローク、サッカーのインサイドキックなど受講生は興味のある動作を選び、自らが被写体となって、同期された2台のビデオカメラを用いて2方向から撮影します。撮影された画像はVHSテープからaviファイルに変換され、「フレームディアス」という分析用ソフトに読み込まれます。画像上の頭頂、耳、肩、肘、手首、腰など身体の各部を入力すると、それぞれの三次元座標が計算されます。コマ数から時刻も同定できますので、時々刻々と身体各部がどのように動いているのかを数値で表すことが可能になります。



 スポーツや運動場面では、自分の身体感覚と実際に表現される動きが必ず一致している訳ではありません。自分としては「こうやっているつもり」がそうなっていないことも多いのです。この授業ではビデオ画像を使って「人の動きがどうなっているのか」を客観的に示すことにより、その動きを理解すること、さらになぜそのような動きになっているのかを考えることをねらいとしています。「どうやるのか」という主観的な方法論の前に、「どうなっているのか」という客観的な事実を理解することによって、「上手くできる」方策を検討し、「上手い動作」をイメージすることが容易になるのではないでしょうか。




 人間の動作は地球上で行われている以上、また身体を使っている以上、重量や筋力、骨格などの制限を受けます。中村俊輔の「信じられないカーブを描くキック」も、ボールが空間にある間ボールに働く力は重力や空気抵抗だけです。キック動作中にボールと脚が接触している間は身体からボールに力が伝わっています。そこに「信じられないカーブ」を生み出す秘密があります。その秘密を明らかにして、自分のモノにしようという意欲がこの授業の出発点です。この授業を通して、スポーツの新たな楽しみ方、魅力を発見できれば幸いです。

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