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エマニュエル・トッド氏招聘とトッド氏を囲む国際シンポジウム開催〈「帝国以後」の世界‐世界経済危機と『デモクラシー以後』〉


 このたび青山学院大学と同総合文化政策学部は共同で、フランスの人口学者・人類学者・歴史家、エマニュエル・トッド氏を招聘しました。トッド氏は、アメリカ帝国の崩壊を予言して、世界的ベストセラーとなった『帝国以後』(2002年・日本語版2003年)の著者で、昨年秋に刊行された最新作『デモクラシー以後』も、大きな反響を呼び、日本語版は今年6月に刊行されたばかりですが、彼の予言は、昨年秋にリーマン・ショックで始まった世界経済危機で半ば現実となったと考えられます。
 そこでこの際、トッド氏を本学キャンパスにお招きして、世界経済危機の根源や民主主義の衰退の懸念などについて、徹底的な討論を行おうとの趣旨で本学が企画した国際シンポジウム〈「帝国以後」の世界-世界経済危機と『デモクラシー以後』〉は、10月15日(木)16時30分より、総研ビル12階大会議室にて、日仏同時通訳付きで行われ、トッド氏の基調報告に続いて、青木保 (本学総合文化政策学研究科特任教授・前文化庁長官)、辻井喬 (詩人・作家)、松原隆一郎 (東京大学大学院総合文化研究科教授・社会経済学者)の諸氏という一流の論客が、論戦を繰り広げました。


エマニュエル・トッド氏

 基調講演でトッド氏は、共産主義イデオロギーの崩壊から始まって、あらゆる宗教的・政治的イデオロギーの崩壊が完成に達した今日、先進国は無重力状態に陥り、政治的には極端な変動が容易に起こる一方、教育の停滞、人口の停滞、そして経済の停滞に見舞われている中で、ほとんど唯一のイデオロギーとして隆盛を極めていた自由貿易主義が、その限界を露呈させた、と分析。これに対して、具体的・現実的な政策としての、景気刺激のための協調的保護主義の可能性について論じ、そのような保護主義によって、給与水準を回復して内需を拡大することによって、輸入への需要も拡大するヨーロッパは、日本にとって最適のパートナーとなるであろう、と結論しました。
 当日は220人を超える参加者が来場し、大盛況のうちにシンポジウムは閉会しました。翌16日(金)午後には、フランス語でのゼミナールが行われ、中央大学の三浦信孝、慶応義塾大学の堀茂樹両教授に私が加わり、今回の来日で比較的触れられることのない諸点について、和気藹々のうちに議論が展開しました。トッド氏は当日夕刻には、日仏会館にて講演「フランス国内外の民主主義の危機」を行い、さらに20日(火)には、京都大学にて「世界経済危機とアメリカ帝国の崩壊」の表題の下に講演と佐伯啓思京大教授との公開対談を行ったほか、11日(日)から22日(木)までの滞在期間に、多くの対談や講演、インタビューを行いました。
 トッド氏の来日は今回で4度目になります。最初の2回は国際交流基金、3回目は藤原書店による招聘で、そのいずれにも深く関与してきた私としては、今回、自分の発議で大学と総合文化政策学部の共同で、今や世界的大思想家となったトッド氏をお招きすることが出来たことには、特別の感慨があります。
(総合文化政策学部長 石崎晴己 記)
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