メインコンテンツへ
北里大学・青山学院大学戦略的大学連携支援事業『病院の言葉をわかりやすく』連続講演会を開催

青山学院大学では2008年度より、北里大学と共同で「ヘルスケア・ソリューション研究」に取り組んでいます。その一環として、本学青山キャンパスおよび相模原南メディカルセンターにおいて、医療従事者と患者のコミュニケーションを「言葉」の側面から研究されている各分野の専門家を迎えて、全3回にわたり「『病院の言葉をわかりやすく』連続講演会」を開催しました。本講演会の概要と意義について、本事業の担当者である社会情報学部の稲積宏誠教授に聞きました。
稲積 宏誠
社会情報学部
教授
稲積 宏誠
専門家とはなかなか話が通じません。話している本人に自覚のないまま「専門用語」を連発してしまうために、聞くほうはただただポカーンと口をあけたまま。そんな光景に出合ったことはありませんか。専門だけではなく、独特な習慣や文化を背景として、私たちは知らず知らずに独りよがりの「方言」を使ってしまいます。それが、自分の健康や命に関わることだと、笑い事ではすまされません。

今回の連続講演会は、国立国語研究所が行った精力的な取組の成果を取り上げ、ヘルスケア・ソリューション研究への展開を図るためのものです。 医療の分野では、患者中心の医療の考え方の広まりから、医療者の十分な説明、患者の十分な理解と納得を前提として、自らの医療を選ぶことが求められています。

ところが医療者の説明に出てくる言葉のわかりにくさが、患者の理解と判断の障害になっています。『病院の言葉をわかりやすく』としてまとめられた取組は、「病院の言葉」のわかりにくさの原因を探り、わかりやすく伝えるための工夫を医療者に対して提案しました。そこでは,病院の言葉のわかりにくさには、いくつかの類型があることを示し、わかりやすく伝える例を詳しく示したものです。しかし何よりも、医学、看護学、法学、言語学、日本語学など、様々な分野の人々が行った真摯な取組であることが特筆すべきことです。


第1回(1月22日(金)本学青山キャンパスにて開催)の「コミュニケーション学と医療」では、患者と医療者の信頼関係や協力関係を築くためのポライトネスストラテジーが取り上げられました。人のもつポジティブフェイス(親近欲求)とネガティブフェイス(不可侵欲求)を見極めたコミュニケーションの大切さを説いています。

馴れ馴れしい態度や冗談によって相手との距離感を狭めることが効果的な場面と、敬語や控え目な表現で相手との距離感を保つことが効果的な場面、これらを患者の言葉や表情から推測して対応することの重要さを指摘したものです。これについては、第3回(1月30日(土)相模原南メディカルセンターにて開催)の「医療現場のコミュニケーション問題」で医療機関における実践例が紹介され、その有効性が示されました。


別府大学大学院教授
吉岡泰夫 氏(第1回)

本学大学院生
平山修平 氏(第1回)

西武文理大学看護学部教授
吉山 直樹 氏(第3回)

公立岩瀬病院 医局長・外科部長
三浦 純一 氏(第3回)

第2回(1月29日(金)本学青山キャンパスにて開催)の「医療現場の紛争とコミュニケーション」では、あらためて『病院の言葉をわかりやすく』の取組全般の意義が取り上げられました。

日常語で言いかえるべき言葉:
「予後」と言われると重々しいですが、「今後の病状の見通しですよ」と言われればさほど気にしません。

明確に説明する必要のある言葉:
「潰瘍」と言われるとドキッとしますが、「病気のためにからだの一部が深いところまで傷ついています」だと全く違った印象です。

混同を避ける言葉:
「合併症」には、ある病気が原因となって起こる別の病気のことなのか、手術や検査によって引き起こされる可能性のある病気のことなのか、二つの意味があります。どちらの意味で使うかによって印象は大きく異なります。

このようにきめ細かく現場での問題点を分析・検討し、提案にまとめています。

また、このような言葉やコミュニケーションの問題が医療紛争の大きな要因になっていることも、事例やデータをもとに示されました。すなわち、円滑なコミュニケーションと相互理解ということを十分に意識した活動は、避けられないであろう医療事故に対してのフェイルセーフ、フェイルソフト*の役割を十分果たしうるという提言のように思います。
*フェイルセーフ、フェイルソフト:事故が起こったときにそれを回避する側に修正できるような仕組みや、故障部分を切り捨ててなんとか停止せずに動作させようとする仕組みを指す信頼性工学の方言


人間文化研究機構
国立国語研究所 准教授
田中牧郎 氏(第2回)

中京大学法科大学院教授
稲葉一人 氏(第2回)

今回の3回にわたる講演には非常に多くの方々の来場があり、関心の高さを再確認することができました。現在進められている北里大学と青山学院大学の大学間連携の取組:ヘルスケア・ソリューション研究の目指す「異分野間のコラボレーションによる医療現場への貢献」の一つの方向性が示されたといえます。今後は、取組独自の成果を示していくことになりますので、その公開について紹介を楽しみにしてください。

                                                           社会情報学部 教授 稲積宏誠 記

ページトップへ