メインコンテンツへ
第4回「全日本ジュニア短歌大会」で、文学部日本文学科日置ゼミの学生9名の作品が入賞しました

 小学生から大学生までを対象に“ジュニア短歌”の育成を目的として開催されている「全日本ジュニア短歌大会」(主催:日本歌人クラブ、後援:文化庁・毎日新聞社)。第4回を迎えた今年の高校・大学生の部において、文学部日本文学科 日置俊次ゼミの学生9名の作品が見事に入賞を果たしました。
 今回は9名の入賞者を代表して、林田恒浩賞(選者賞)を受賞した三上一貴君、秀作賞の今野陽太君と荒牧さやかさんの3名と日置教授に受賞の喜びの声と作品創作に関するエピソードなどの話を聞きました。
三上 一貴 君
林田恒浩賞
文学部日本文学科4年
三上 一貴 君
ある程度よごれた水が良いのです
 メダカの池とわたしの部屋は

 この作品に深い意味はなく、自分の生活そのままです(笑)。自分の部屋は確かに汚いのですが、モノの配置など自分にとっては使いやすくて、たまに母親がきれいに掃除してくれると、かえって不便で居心地が悪くなってしまう。そういった状況を表現しました。真水では長生きできないメダカに例えたことと、最初「男」だった部分をより多くの人に共感いただけるように「わたし」に変えたところが工夫したポイントです。
 日置ゼミで短歌を教わってから、日常生活のあらゆる場面が「七五調」の言葉で頭に浮かぶようになりました(笑)。作品を創作しようと頭をフル回転させているときよりも、普段の生活でふと思いついた言葉の方が生き生きして感じるところが、短歌の難しくも面白いところです。今回、歌人の林田氏から選者賞をいただきとても光栄ですが、まだまだ勉強が足りないと自覚していますので、これからも短歌の勉強は続けていこうと思います。


今野 陽太 君
秀作賞
文学部日本文学科4年
今野 陽太 君
雨だれが伝うサッシに指で描く
 自画像は歪みながら泣いている

 ずっと一緒に住んでいた祖母が亡くなったとき、近くにいながら病気に気づけなかったことにすごくショックを受けました。その心の傷がいまも残っていて、短歌を創作するときも、ぽっかり開いた穴に言葉を投げかけながら形づくっていく部分があります。祖母との対話を通じて、自分自身と対話しているような感じです。自分の心の奥にある思いを言葉で表現したつもりなので、賞をいただけたのは、その思いが伝わった結果だと考えています。
 現代短歌には“31文字”という大きな制約がありますが、そのなかに良い意味での自由が存在します。たった31個の文字の連なりで無限の宇宙を表現できるのはすごいことです。とても奥深く、難しい世界ですが、悩みながら言葉を連ねるときは、自分の心と真正面から向き合っている気がします。今後も自分自身で愛せる作品を一首でも多く創作したいです。


荒牧 さやか さん
秀作賞
文学部日本文学科4年
荒牧 さやか さん
焼き鳥を串から外して食べるのは
 あなたが前に座るからです

 私は焼き鳥をそのまま串を持って食べることが好きなので、この作品はフィクションです(笑)。女性の友人と食事をしたとき、彼女が焼き鳥を串から外して食べている姿を見て「かわいい」と感じたエピソードをもとに作った作品です。普段は感動した映画など、それこそフィクションの世界を題材に創作することが多く、「焼き鳥を~」のような女性っぽい歌は私の作風とは異なる作品と言えます。でもそれが評価されるわけですから、短歌って面白いですね。
 友人との食事もそうですが、短歌の素材は日常生活のなかに山ほど隠れています。短歌に触れてから街行く人をいつも観察するようになり、気になった言葉やフレーズが思い浮かぶとケータイにメモする癖もつきました。そうして集めた“素材”を作品として残せることも、短歌を創作する大きな楽しみのひとつだと思います。


日置 俊次
文学部日本文学科
教授
日置 俊次
 文章を書いて作品を発表することには、喜びとともに痛みも伴います。他者から評価される喜びと評価されない痛みといった単純なものではなく、自分自身が好きではない作品が高い評価を受けたり、逆に絶対の自信作がまったく認められなかったり、その作品が自分の手を離れてどう一人歩きしていくのかは誰にも分からないのです。作品を創作して世に発表する際には、大きな覚悟が必要だと言えます。
 私のゼミでは積極的に歌会を開いたり、さまざまな短歌コンクールに応募したりなど、学生が苦心して作った作品をできる限り多くの人に評価してもらえる機会を設けています。創作する喜びだけでなく、“作者の痛み”も知ってもらいたいからです。痛みを知れば作品を作るときだけでなく、他者の作品を批評するときも、より深い部分でその作品と向き合えると思います。
 全日本ジュニア短歌大会で入賞した作品はいずれも、選者たちの心に響くものがあったのです。自分の作風とは違う作品が評価されたとの話もありましたが、それも自分自身との対話から生まれた作品に違いありません。このように他者に評価されてはじめて気づくことが数多くあります。これからも他者に作品を見てもらって学べる環境を学生たちには用意したいと思います。



*第4回全日本ジュニア短歌大会では、今回話を伺った3名の他、佳作に矢澤実梨さん(3年)、菊地瑞希さん(4年)、奨励賞に飯島真郁さん(3年)、小林優香さん(3年)、植野知佳さん(4年)、酒井理帆さん(4年)の作品が選ばれました。
ページトップへ