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国際社会への大きな貢献につながる大学院の新しい取り組み2件を紹介します

 今年度から取り組みが始まった国際政治経済学研究科の「グローバル・エキスパート・プログラム」と、来年度からの本格スタートに向けて準備が進められている経営学研究科の「戦略経営・知的財産権プログラム」。どちらも現代の国際社会が抱える問題点にアプローチする斬新的な取り組みです。 今回はそれぞれの研究科長とプログラムを担当する教員、学生による座談会を通じて、取り組みの内容を紹介します。
戦略経営・知的財産権プログラム(SMIPRP)
経営学研究科

~青山学院大学で最初の英語による授業のみで卒業できるプログラム~
田中正郎
経営学研究科長
田中 正郎



安田洋史
経営学研究科
教授
安田 洋史



竹内規彦
経営学研究科
准教授
竹内 規彦
開発途上地域の将来を担う
若者をSMIPRPは育てる


田中 経営学研究科では、従来の経営学、会計学、IMC統合マーケティングの3部門に加え、今年4月に戦略経営・知的財産権部門を新設しました。そして同部門を礎としながら2011年4月より、海外からの留学生を対象にした新コース「戦略経営・知的財産権プログラム(SMIPRP)」を創設するべく、安田教授と竹内准教授が中心となり、開設準備を進めているところです。
 SMIPRPは、開発途上国の税関職員を主たる対象とし、マネジメント分野の授業を英語で行い、修士(経営学)の学位を取得できる新しい教育プログラムです。このプログラムはベルギーのブリュッセルに本部を置くWCO(世界関税機構)の資金にもとづいて運営がなされます。
 もともと本研究科では、青山に位置する立地を活かして社会人に教育の場を積極的に提供してきました。「社会人教育」という枠組みでは、日本も外国も同じであり、また開発途上国に対する国際貢献にもつながるはずと考えています。
安田 すべての授業を英語で行い修士を取得できるコースは、日本国内では珍しく、まだまだ新しい取り組みといえます。開発途上国における税関職員のマネジメント能力の向上が最大の目的になりますが、カリキュラム的には、マネジメント分野のコア科目はもちろん、競争戦略論や税関法などの専門分野、実地研修や施設見学、さらには論文指導など、広範な領域について学ぶ予定です。
竹内 国際開発の分野では、ODAやNGO などによる途上国の開発援助が知られていますが、主として日本から海外に出向いて援助・支援する形が一般的です。今回のSMIPRPのように日本で途上国の人材を受け入れて育成する形の開発援助は未だ不十分と思います。しかも関税局組織にフォーカスしての学びというのも新しいアプローチであり、非常に楽しみですね。
田中 まったく新しい取り組みですから不安や課題もあります。とくに英語のみで授業を行うための体制を整えるには、かなり周到な準備が必要です。留学生の教育指導を担う教員、および留学生の修学支援や生活支援を行う事務職員の体制を今年度中に構築していくつもりです。


10名強の定員に対して、
42ヶ国100名を超えるエントリー


田中 既に入学試験の初年度の応募は締め切り、現在選考作業に入っています。選考は書類、論文(エッセイ)、面接の流れで実施しますが、海外にいる受験生とのやりとりは、すべてインターネットを通じて行うのが基本です。面接もテレビ会議システムで行います。受験生が日本に来ることもなく、願書受付から合格発表までウェブ上で完結させるシステムも青山学院大学では初めての試みです。
安田 応募に関しては想像以上に反応が良く、10名強の定員に対して100名を超えるエントリーがありました。受験生の出身国を見てもアフリカ、中東、東南アジアなど、幅広い地域にわたっています。通常の留学生といえば中国、韓国、アメリカ辺りが主流ですから、これまでにないエリアからの留学生を受け入れることになりそうです。
竹内 実は私も国内の大学院で国際開発に関して学びましたが、そこもあらゆる地域の国々から院生が集まり、授業も英語で行うシステムでした。私は日本人として入学したわけですが、アジア、アフリカ、欧米などさまざまな地域の仲間と一緒に過ごした経験は、とても充実していたといまでも思っています。青山学院で学ぶ留学生たちに、日本での生活を充実したものにできるよう、学習環境を用意したいと思っています。
田中 確かにあまり馴染みのない国の人たちとの交流は、日本人学生にとっても貴重な経験になりそうです。また税関に勤める職員ということは、その国の将来を背負って立つ人材といえます。そういった優秀な人材を相手に教育できるのは、青山学院としても、また我々教員としても、とてもやりがいを感じられることだと思います。
安田 開発途上国と現在呼ばれている国々も20年後、30年後には、グローバル経済の中心に位置しているはずです。その中核となる人材が、青山学院で学んでいたというエピソードは、すごくインパクトが大きいと思います。そのころには本プログラムの卒業生が世界各国にいるはずですし、こうした夢は大きく膨らみますね。


日本企業のすぐれた実践にねざす
日本的経営を伝える教育


田中 安田先生は「競争戦略論」や「経営戦略論」、竹内先生は「組織行動論」や「人材マネジメント論」といった専門分野をお持ちですが、それぞれの視点から開発途上国の未来を支える世代に伝えたいことはありますか。
安田 私自身、企業での生活が長く、グ ローバルに不可欠な競争原理も実践として体験してきました。そうした現場での経験を積極的に伝えたいと思います。また、アジアの国々に行くと、いまも日本に留学して勉強したいという人がたくさんいます。しかし、彼らには生活費や学費など費用面、一方の日本側には受け入れる体制が不十分という問題があり、なかなか実現していないのです。今回のSMIPRPは、費用面はWCOが支援し、本研究科が受け入れ体制を整えた留学システムの理想形。意欲のある留学生にとっては絶好のチャンスだと思うので、どんどん有効に活用してもらいたいです。
竹内 私は組織における人の行動やマネジメントについて研究しています。例えば「人材」に関しても日本と海外とでは考え方や意識が異なります。日本の企業は人を育てる術に優れていて“make”の側面があります。一方の欧米の企業では、ヘッドハンティングなど必要な人材は別の会社から連れてくる、いわば“buy”の側面があります。開発途上国には資金的に恵まれた企業も少なく、欧米よりは日本型の人を育てる人材マネジメントが重要な視点となるはずです。そういった組織や人材の仕組みを伝えて、それらの知識を自国へ持ち帰った彼らが、また新しい人材を育てるような流れを築ければ理想的です。


開発途上地域の発展に青山学院として寄与する

田中 SMIPRPは、本研究科が国際化を本格化させる試金石とも呼べる取り組みです。このような留学生受け入れの施策とあわせて、海外大学院への留学生派遣や単位互換など、さらなる国際化の推進を考えています。
竹内 残念ながら日本という国全体が国際化の波に乗り遅れています。それは外国人の受け入れについても、日本人が外国に行くことについてもいえることです。先日、アメリカで経営学の学会に参加したときも、日本人よりも中国、韓国、台湾から参加した発表者の方が2倍以上いました。SMIPRPを通して、国境を越えた交流が数多く生まれ、日本の新しい国際化の幕開けを青山学院大学から発信できるようになればうれしいと思います。
安田 私もアメリカに留学した経験があり、その経験は今の自分にも大きな影響を与えています。それは自身の原動力ともいえるものです。日本の文化、教育に触れることで、留学生たちには原動力となる何かを掴んでもらいたいと思います。また逆に、開発途上国が抱える現場の問題意識のなかには、我々の知らないこともあるかもしれません。そこから新しい研究分野が生まれる可能性もあります。プログラムのスタートが本当に楽しみです。
田中 アメリカの経営手法がスタンダードだと言われて久しいのですが、今回の取り組みは、本当にそうなのかを考える良い機会かもしれません。日本人の研究成果にも欧米の研究に勝るものが数多く存在するのですから。開発途上国と呼ばれるアジア、アフリカ、中東の国々にもそれぞれの価値観がありますが、日本の価値観がマッチングし、自国の良さを輝かせ、自国に誇りをもたらせるケースも考えられるはずです。我が研究科にも世界に伝えたいほどの研究成果を挙げている教員がたくさんいます。そうした“青山学院の成果”が留学生たちに注がれることを今から期待しています。
 とにかく、まずは1期生を迎える最初の 1年を大切にし、SMIPRPの土台を強固な岩としたいと思います。
 そして、SMIPRPの卒業生たちが彼らの出身地域の発展に良き働きができるように育てたいと思います。
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