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理工学部吉田篤正研究室がかかわる全天X線監視装置「MAXI」が、数々の新天体発見の成果をあげています

 2009年7月にスペースシャトル「エンデバー号」が宇宙へと飛び立ち、若田光一宇宙飛行士によって、国際宇宙ステーションの船外実験プラットフォームに、ロボットアームで監視装置が取り付けられた映像は多くの人の記憶に残っていると思います。その設置された監視装置は「MAXI」と呼ばれる、全天を見渡せる広い視野と、従来機より一桁高い感度を合わせ持つ全天X線監視装置です。数々の大学や研究所の共同研究で誕生した「MAXI」の開発には、本学理工学部物理・数理学科の吉田篤正研究室もかかわっており、現在も観測データの解析等でミッションの推進に貢献しています。観測開始から約1年半が経過し、既に大きな成果をあげている「MAXI」の現状、およびその他にも吉田研究室がかかわる最新プロジェクトの計画等について、吉田篤正教授、山岡和貴助教、理工学研究科博士後期課程の中平聡志さんに聞きました。
吉田篤正
理工学部物理・数理学科
教授
吉田 篤正



山岡和貴
理工学部物理・数理学科
助教
山岡 和貴



中平聡志さん
理工学研究科
理工学専攻
基礎科学コース
博士後期課程3年
中平 聡志 さん

吉田 宇宙で起こる現象には、X線やガンマ線を観測することでしか得られない情報が無数にあります。「MAXI」もそんなX線を通して、さまざまな天体現象を観測するために作られた監視装置です。実はこの計画は、私が理化学研究所に所属していた1995年頃から取り組まれているプロジェクトで、すでに15年以上経過しています。天文学や天体観測等に実績のある各種研究所や大学が連携して推進する取り組みですが、2009年の若田光一氏による国際宇宙ステーションへの設置成功によって、ようやくその能力を発揮できる準備が整いました。
山岡 「MAXI」は、全天X線監視という名前からもわかるように、地球周回(約90分)に1回のペースで全天を見渡すことができます。全天の状況を自動的に確認し、その検出した観測データを定期的に地球上に送ってくる仕組みです。また従来までの観測機と比べて格段に感度も高く、より詳細なデータ解析が可能になっています。
中平 「MAXI」から届く観測データは、そのままでは広く扱えないため、多くの方が理解できる形に加工することが必要です。私もそんなデータ解析をしています。
吉田 まだ約1年半の観測だけですが、既にいくつかの大きな発見をもたらせています。例えば、2009年10月23日(金)に、いて座に出現したX線新星(天体名:XTE J1752-223)は、その後の「MAXI」の観測によって新種のブラックホールであることが判明しました。従来のブラックホールは、急激にガスを流入するため10日以内に明るさがピークとなりますが、今回のものは約3カ月もかかってピークを迎えたのです。この発見は、従来の多量のガスを一気に飲み込む“肉食系”ブラックホールに対し、“草食系”ブラックホールとして学会に発表されて話題を呼びました。
中平 日本天文学会の記者発表では、私も発表の場をいただきました。少しでも多くの方に天体への強い関心を抱いていただければと思い、“草食系”というネーミングを付けました。これらの発見データは博士論文にもまとめていく予定です。恐らく「MAXI」の成果を利用した博士論文としては、初めてのものになると思います。
吉田 また、2010年10月17日(日)には、「MAXI」が発見した新天体としては2番目となるX線新星(MAXI J1409-619)をケンタウルス座に発見しました。実はこの天体は、山岡君が発見したものなんです。
山岡 「MAXI」から届くデータを毎日解析しているうちに、他のX線星より少し暗く見える天体を肉眼で見つけました。どうしても気になって、天体の座標がのっているカタログ等と照らし合わせたり、データ解析に詳しい中平君に相談したりし、どうやら新天体の確率が高いぞとなったわけです。そして、欧米の研究者と協力して望遠鏡をもつNASAの観測機(スウィフト衛星)で確認してもらうことになり、その結果、新天体であることが認められました。詳細なデータによると、この天体は銀河系の数万光年以上の非常に遠方に位置する中性子星の可能性が高いです。宇宙の“より外側を知りたい”という永遠のテーマに対し、「MAXI」の大きな可能性を感じることもできました。
吉田 さらには新年に入って2011年1月11日(火)にも、新しいX線星(MAXI J0556-332)をはと座の方向に見つけました。3番目の新天体発見です。このように高性能の「MAXI」は、従来の観測機では見えなかったものをどんどん見せてくれています。まだ観測が始まって間もないため、これが5年、10年と長期間にわたるデータを集約できれば、さまざまな新発見はもちろん、これまで知っていた天体の新たな一面も確認できるかもしれません。
山岡 「MAXI」が発見した新天体には、ケンタウルス座の「MAXI J1409-619」のように、天体名の前に「MAXI」と付きます。過去のX線監視装置とは性能が違うので、今後どんどん「MAXI……」という天体が増えていくはずです。
吉田 吉田研究室では「MAXI」の他にも、2005年に打ち上げられたX線天文衛星「すざく」、さらには計画段階ですが、次世代X線天文衛星「Astro-H」や国際宇宙ステーションに搭載予定のガンマ線観測装置「CALET」などのプロジェクトにもかかわっています。
山岡 また「MAXI」の成果を受けて、プロジェクトチームの内外からも、さらにグレードアップさせた観測機の開発案も出てきています。多くの大学がありますが、これだけ多くの宇宙実験プロジェクトにかかわっている研究室は数少ないと思います。
吉田 さまざまな宇宙実験のための装置開発と運用・観測、データ解析等を行うことが主な研究内容ですが、これからも宇宙の謎を解明するお手伝いを続けていきたいですね。
中平 実は私も大学院に進んだころは、理工学部 澤邊研究室で開発した人工ダイヤモンドを使って放射線を検出するなど、“天文学”とは関係のない研究をしていました。それが、ちょっとしたきっかけで「MAXI」のデータ解析をするようになり、気付けばその広大な宇宙のロマンにすっかり魅了されてしまいました。現在は「MAXI」のデータ解析をしながら、2013年に打ち上げられる予定の「CALET」の開発にかかわっています。もし宇宙に興味のある高校生がいるなら、青学の理工学部に入学すれば、大学院に進学する頃には、「CALET」のデータ解析をし、そして自分が開発にかかわった次世代「MAXI」が宇宙に飛び立つ喜びを味わえるかもしれませんよ。
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