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在学生と卒業生が語る教師という「生き方」

 青山学院大学の教員養成の歴史は、明治20年代における英語教員の養成にまで遡ります。現在、多くの卒業生が全国の学校で人を教え、導き、育てることで、社会への大きな貢献を実現しています。今回の特集では教師を目指して勉強中の在学生と、本学での学びを生かして教壇に立つ卒業生が、教職課程の指導を担当する特任教授による司会のもと、教師という「生き方」について、それぞれの思いを語り合います。
長嶋 清
教育人間科学部
教育学科
特任教授
長嶋 清



飛田 貴基 さん
日本聾話学校教員
(2010年3月
文学部
日本文学科卒業)
飛田 貴基 さん



橋詰 貴 君
理工学部
物理・数理学科4年
橋詰 貴 君



横井 萌子 さん
教育人間科学部
教育学科2年
横井 萌子 さん


教師を目指すきっかけと、
教師になるために必要なこと


長嶋 まずは、教師を目指すきっかけをみなさんに伺いたいと思います。
飛田 幼稚園から大学まで人生の大半を青山学院で過ごし、昨年の春に卒業しました。中学・高校の国語の教員免許を取得し、現在は東京都町田市にある日本聾話学校で教えています。本校は聴覚に障害のある0歳から中学3年生までの子どもを対象とするキリスト教学校で、私の主な担当は中学1年生の国語と小学校低学年の体育のサポートです。
 私は両親ともに教師であることに加えて親戚にも教師が多い環境だったため、自分も教職を目指すのはとても自然な流れでした。教師という仕事を強く意識したのは中学時代ですが、そのころは福祉やボランティアなどにも興味があり、母親に相談したところ障害のある児童・生徒の支援をする学校があることを知り、その当時から特別支援学校に関心を持っていました。
橋詰 私は中学・高校の数学科の教師を目指しています。青学には教職を目指しつつ、子どものころから続けていた水泳も頑張れる環境があると思って進学しました。実は飛田さんは水泳部の先輩なので、今日は少し緊張しています(笑)。
 教師を目指す理由ですが、小学生のころから算数が得意で、友だちに教えているうちに「人に教えるのは面白い」と、漠然とですが思っていました。そして中学生のとき、よくやんちゃをして担任の先生に怒られたのですが、その先生の真っ直ぐな人間性に憧れ、「自分もこんな先生になりたい」と明確に考えるようになりました。
横井 小学校の教師になって、人間形成の最も基礎となる時期に自分も関わりたいと考えています。また、子どもたちの成長にさらに深く関われるように、小学校の教員免許と同時に、幼稚園教諭の免許も取得するつもりです。
 私は小学生のころから「小学校の先生になる」と言い続けてきました。自分が悩んでいた時にあたたかくサポートしてくれる先生たちに巡り会えたので、自分もそのようになりたいと思ってきたんです。当時、その夢を家族に話したときに、大好きだった祖母に「応援するよ」と言われたのがすごくうれしかったんです。その後、祖母は亡くなりましたが、あのときの一言が私に大きな決意を抱かせてくれました。
長嶋 では、教師を目指しているおふたりにお聞きします。教師になるために、現在頑張って取り組んでいることを教えてください。
横井 大学で学ぶ内容は将来絶対に役に立つと思うので、授業の予習復習はしっかりやっています。それと図書館にある教育関係の本を出来る限りたくさん読破しようと思って読み始めたところです。また、“実践”を経験するために、「学校支援ボランティア」に積極的に参加し、実際に子どもたちと触れ合うようにしています。
長嶋 学校支援ボランティアは、学生に早い段階から教育の現場を知ってもらうために、本学と相模原市の小学校が連携して実施している取り組みですね。横井さんは何年生のクラスを担当していますか。
横井 3年生のクラスで主に授業のサポートをしています。普段の生活では小学生と交流できる機会は得られないので、このボランティア制度はとてもありがたいです。子どもと触れ合えることももちろんですが、実際に担任の先生がどのように子どもたちと接しているのかなどを間近で観察できる貴重な機会でもあります。
橋詰 私も昨年は、母校の中学校で週1回「授業見学」を経験しました。やはり現場で子どもと関われる経験は貴重です。学級活動の時間に教壇に立って話をする機会もいただけました。スイミングクラブで子どもに水泳を教えることもありますが、大学時代から人前に立って子どもを指導する機会を持てることは、本当に大きな勉強になります。後は、やはり大学の授業をしっかり受けることです。数学の本当の面白さを伝えるには、中学・高校の範囲を越えた知識が必要だと思います。
長嶋 よく教職課程の授業で学生に話すのですが、免許をとって即“実践”は教師だけです。学校によっては1年目からクラス担任を任されることもあります。そういう意味でも、大学時代に“現場”を経験しておくことが重要なのです。
飛田 教員を1年間経験した立場からも、やはり「現場は違う」と何度も感じることがありました。そして何より、実際の現場では責任ある言動が求められます。学生時代に少しでもその緊張感を味わうことのできる機会があれば、社会に出てから対処する能力は大きく変わってくると思います。
橋詰 順調に行けば私は、来年の今頃は教員になっているんですよね。現在は教員採用試験に向けた勉強がラストスパートに入っていますが、自信を持って教壇に立てるように、大学時代に吸収できることは何でも自分の力にしたいと思っています。



教師の一言が、子どもに大きな影響を与える

長嶋 飛田先生が教壇に立つうえで、とくに心がけていることは何ですか。
飛田 子どもたちに話しかける際、使う言葉の一言一句にまで気を配ることです。自分では何気なく言った言葉でも、子どもにとっては大きな影響力を持ち、悩んだり傷ついたりすることがあります。先生と児童・生徒という関係性のなかでは、発言する言葉に責任を持つことが大切なんです。とはいえ、実行することは難しく、いまも「あんなことを言う必要があったのかな」と反省することが多いですが…。
長嶋 確かにそうですね。これは教師だけでなく、どんな仕事にも言えますが、ふとした言葉でも、相手には深い傷になるケースがあります。
橋詰 私も授業見学の現場でケンカの仲裁に入ったときに、普段から“いじめっ子”というイメージがある生徒を一方的に注意してしまったことがあります。でも後から、お互いの言い分をしっかり聞いていないことに気づいて反省したんです。固定観念を持つ怖さとともに、自分が発する言葉の重みを本当に感じました。
横井 私もボランティア先では、小学生から「先生」と呼ばれます。すごくうれしいのですが、その反面、大きな責任を感じています。
長嶋 教師としての責任ある言動については、我々も気をつけたいですね。他にも何か授業で心がけていることはありますか。
飛田 伝えるべき意図を明確にして、子どもたちが少しでも分かりやすくなるような授業を心がけています。国語という教科は、子どもたちの受け取り方次第で、いろいろな答えが出てきます。もちろん高校までの勉強では正解が定められていますが、間違った答えが返ってきたらなぜそう思ったのか、なぜ正解ではないのかをしっかり理解させたいと思っています。とくに本校はハンディキャップを持つ子どもが対象なので、より分かりやすく伝える工夫をしています。例えば、教科書の本文を模造紙に大きく書き写して、黒板に貼り付けることもそのひとつ。本校は手話に頼らず聴覚を生かした学びを大切にしていますが、難聴の子どもには「何ページの何行目を読んで」という、自分たちが当たり前と思っている言葉が伝わらないこともあるので、一人ひとりの成長に応じた指導を心がけています。
長嶋 なるほど。しかし、この分かりやすく授業を進める工夫は、何も特別支援学校に限らず、すべての学校の授業で考えるべきテーマです。教職課程を受け持つ教員として、私も心に留めたいと思います。
 こうして飛田先生も教員としてさまざまな苦労や工夫をされているわけですが、在学生のふたりは、教員という仕事に対しての不安はありませんか。
横井 よく報道で話題になっていますが、やはり保護者の方々とのコミュニケーションの取り方については不安に感じています。
長嶋 教員は子どもだけでなく、いろいろな人とのコミュニケーションが必要とされる職業ですからね。ただ保護者のことに限りませんが、何か悩み事がある時はひとりで抱え込まず、校長先生や同僚の先生に迅速に相談することが大切です。私も小学校の校長を務めましたが、学校で起こる問題は個人ではなく、学校全体で考えて対処するべきだと思います。
橋詰 私は教師と生徒との距離感に難しさを感じます。お互いの距離が近い方が理想だと思いますが、特定の生徒とだけ親しくなると「ひいき」だと言われますし…。
飛田 これも難しい問題だと思います。本校の場合は、1クラス2名から7名なので、「ひいき」といった問題は少ないかもしれませんが、それでもどの子どもにもまんべんなく気配り、目配りして、不公平さがでないように心がけています。
長嶋 教師と子どもとの距離感を保つバランスは確かに難しいです。積極的に質問に来るような子どもには、自然と熱心に指導してしまいますが、他方では不公平に見られるかもしれません。ここは自分自身の教師としての信念が重要でしょう。経験を重ねることで少しずつ理解できるはずなので、必要以上に気にしなくてもいいと思いますよ。



教師の夢を実現し、理想の教師像に近づくために

長嶋 いまの教育現場は、みなさんが通っていたときと比べて違うと感じますか。
橋詰 パッと見た感じは変わらない気がします。ただインターネットや携帯電話が普及した影響だと思いますが、良くも悪くも子どもたちがいろいろな知識や情報を持っていますね。間違った情報を信じて振り回されることも考えられるので、大人として、教師として、彼らの言動に意識を向け、正しく導いていく必要があると思います。
横井 私は小学3年生と接しただけなので、まだまだかわいくて、元気な子どもたちという印象が一番強いです。でも、言いたいことを何でも言える元気な子がいる一方で、いつもおとなしくてしゃべらない子もいます。何となく性格や個性の差が激しいように感じることはあります。
飛田 個人的な意見ですが、全体的におとなしく、真面目な子どもが増えている気がします。そのため大きな問題も起こらないわけですが、果たして何も問題がないから「良いクラス」「良い学校」と呼べるのかは疑問です。教師と生徒、あるいは子ども同士など、お互いにぶつかりあってみえてくるものがあると思います。常に問題の芽を摘んで、平穏なまま済ますことが良いわけではないと思います。
橋詰 それは私も感じていたことです。「良いクラス」と「仲の良いクラス」は別だと思うんです。何も問題が起こらない良いクラスだからといって、クラスメイトの仲が良いとは言えません。お互いに無関心なだけかもしれませんから。私のこれまでの小・中・高校時代の経験から言えば、担任の先生のリーダーシップが強すぎると「良いクラス」になりがちだと思います。みんなが先生の言う通りに動いておけば良いと考えるからです。一方で、放任主義的な担任の先生のクラスの方が、生徒同士で意見し合い、全体がまとまるケースが多くありました。教師の関わり方ひとつでクラスの雰囲気も変わるのかなと考えています。
横井 先程の教師の言葉がけが子どもに大きな影響を与える話とも共通しますが、先生と児童とのコミュニケーションのバランスは難しいですね。児童を良い方向へも悪い方向へも導ける、本当に大きな責任を担った職業だとあらためて実感しました。
長嶋 大学で教員免許状を取得するには卒業要件外に数多くの科目を履修し、実習もこなさなければなりません。みなさんの学生生活について教えてください。
橋詰 理工学部は授業数も多く、実験の授業では長い時間拘束されるので確かに大変です。しかし結局は本人のやる気次第ではないでしょうか。自分の場合は、例えば水泳部の朝練に参加できない場合には、当時部長だった飛田さんに自主練習をすると約束して免除してもらうなどで無事に乗り切ることができました。
横井 授業の一つひとつがすごく役に立つと思えば苦になりません。と言ってしまうとすごい優等生のように思われそうですが(笑)、でも子どもたちと実際に接していてその言動を見ていると「あ、これは以前習ったことだ」と思えることが何度もあったので、授業がとても楽しく感じられるようになりました。
飛田 大学の生活は高校までと違って自分の裁量が大きくなるので、やる気と時間の組み方次第で大きく変えることができます。私は学生時代、水泳部の他にも複数のクラブ・サークルに所属していましたが、「大変だった、忙しかった」というより、さまざまなことを経験できて「楽しかった」という思いが強いですね。
長嶋 では最後にぜひ、みなさんが理想とする教師像、あるいはこういう教員になりたいという目標を聞かせてください。
横井 教師は“子どもの良さを見つけるプロ”だと思っています。子どもたち一人ひとりの個性に気づき、その良さを引き出せる教員になりたいです。実際には大変なことでしょうが、子どもはみんなできることのポイントが違うことを常に頭に入れながら、授業中だけでなく、休み時間や掃除の時間など、できる限り児童と過ごす時間を多く持ちたいと考えています。そして、子どもたちとともに、自分自身も成長していきたいです。
橋詰 一人の教師としては、自分がそうであったように、生徒から「橋詰先生のような先生になりたい」と言ってもらえる教員になることが大きな夢です。また数学の教員としては、最近は数学が苦手だったり、嫌いだったりする子どもが多いようなので、少しでも多くの子どもたちに“数学の面白さ”を伝えたいと考えています。恐らくすこし複雑な数式を見ただけで苦手意識を持ってしまう子どもが多いと思うのですが、その問題を解いたときの爽快感や達成感を教えたいんです。
飛田 私にも昔から理想とする教師像があります。それは今の自分に伝えられることをしっかりと伝え、子どもたちがその時習ったことを後々の人生の中で生かしてもらえるような先生です。昔の自分を考えても、学んですぐにはその必要性にはなかなか気づけないものです。でもその後の人生で、学んだ知識が必要となる場面がきっとやってきます。そのことを信じながら、いまを大切に子どもたちと向き合いたいと考えています。
長嶋 教員という仕事は、一般的なイメージよりも地味な仕事です。自分が主役になるのではなく、教え子たちを主役にし、輝かせる役割を担います。それはある意味で青山学院のスクール・モットーである「地の塩、世の光」にも通じる営みではないでしょうか。本学を巣立ち、教壇に立つ教師の力によって、社会に貢献できる人材が数多く育っていくことが、我々にとって最大の喜びであり、誇りです。卒業生の飛田先生には、教師としてのさらなる飛躍を、また在学生のふたり、橋詰君と横井さんには教壇に立つという目標の実現を期待しています。本日はありがとうございました。

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