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2012年4月、文学部「比較芸術学科」誕生!

 文学部では、これまで培ってきた文学・思想・歴史学といった領域の教育・研究実績を生かしつつ現代に求められる新たな学びを提供するために、「比較芸術学科」を開設します。新学科で展開する学びと、人類の根源的な営みとされる芸術をジャンル・地域・時代を超えて比較し考察することで得られる人文学的「知」について、文学部長の西澤文昭教授と、開設準備室の浅井和春教授、高橋達史教授、那須輝彦教授、佐久間康夫教授に語ってもらいました。
文学部長 西澤 文昭
文学部長
西澤 文昭


開設準備室長 浅井 和春
開設準備室長
浅井 和春


開設準備室委員〈美術担当〉高橋 達史
開設準備室委員
〈美術担当〉
高橋 達史


開設準備室委員〈音楽担当〉那須 輝彦
開設準備室委員
〈音楽担当〉
那須 輝彦


開設準備室委員〈演劇映像担当〉佐久間 康夫
開設準備室委員
〈演劇映像担当〉
佐久間 康夫

文学部の将来を見据えた新たな試み
西澤 比較芸術学科の目的は、人類の根源的な営みであり時代を映す鏡とも例えられる芸術を人文学的な立場から総合的に学び、人間を理解すること。それは言いかえれば、人間として必要な教養を学ぶことだともいえます。
浅井 数ある芸術の諸分野から美術・音楽・演劇映像という3分野を選んだのは、何よりこれらの芸術が伝統的な芸術分野として長い歴史を刻んできたこと、そして文学部の各学科ですでに教育・研究を行ってきた蓄積があるからです。それは歴史研究の中での芸術史、文学研究の中での演劇という形で行われてきましたが、その実績をひとつに凝縮し、芸術という視点から現代に見合った新たな学びを提供します。
西澤 
比較芸術学科の開設は文学部全体の将来構想の中で大きな意味を持っています。既存の4学科(英米文学科、フランス文学科、日本文学科、史学科)では、それぞれの専門分野について文字資料を中心に学んできましたが、比較芸術学科では視覚や聴覚などの五感を活用して学ぶことになります。この新しい学びを他学科へも還元し、実学重視とされる現代社会にあって文学部全体を発展させていこうと考えています。



比較・古典・鑑賞を軸にした
総合的な芸術教育を提供
浅井 
比較芸術学科では学びの軸として「比較学習」「古典重視」「鑑賞教育」を掲げています。学科名にも冠している「比較」については、1年次に「比較芸術学入門」という授業で美術、音楽、演劇映像すべての分野を学ぶ導入科目を用意しています。そこから年次があがるにつれ段階的に専門分野を選択していくことになりますが、3・4年次になっても少なくとも2分野の芸術を学べるようにしています。
高橋
 文学や音楽が時間軸に沿って展開される時間芸術であるのに対して、西洋美術という分野、特に15世紀以後の主流であるタブロー画は、一枚で完結した空間芸術です。同時に起こっている複数の出来事の描写には強みを発揮できるのですが、時間の推移は暗示することしかできません。マンガと違ってひとコマで全体を示さねばならぬ限界を抱えているわけですが、他の諸分野と比較する授業で、絵画では美しい形や色彩の追求以外にもさまざまな工夫がなされていることを伝えたい、スリリングな体験を学生に提供したいと願っています。19世紀後半以降は静物画、風景画、抽象絵画などストーリー性を排除した分野が主流となったのですが、絵画における「メッセージ伝達の仕組み」を意識した授業を常に心がけるつもりです。
那須
 音楽の分野でも西洋と東洋の比較だけでなく、歌舞伎や能・狂言といった日本の舞台芸術と音楽の関係を考える授業や、楽器の歴史的・地域的な変遷を辿ったり演奏会の歴史を探るなどといった文化史を学ぶ授業も計画しています。音楽を生み出した人々の美意識や社会的背景はどのようなものであったのか、録音技術の誕生によって音楽はどう変わったのかなど、多角的な視点から人間と音楽との関係を考え豊かな感性を養ってもらいたいと考えています。
佐久間 演劇や映像作品は総合芸術といわれています。芝居やミュージカルや映画には、美術や音楽が欠かせません。映像作品も無声からトーキーへ至り、音楽を効果的に扱ってきた歴史があります。また、原典を文字資料として読むだけでは芝居にはならず、上演・上映されて初めて芸術作品となるという特色もあるのです。そのことを理解するためにも、相互の分野を比較しながら学ぶことで演劇・映像作品に対する理解は今まで以上に深まっていくことでしょう。
西澤 比較というのは人文学の研究手法としてベーシックなものとされていますが、実際に多領域を比較研究するのは容易ではありません。しかし本学科での「比較」は美術・音楽・演劇映像というジャンルの比較にとどまらず、時代や地域そして文芸と各ジャンルの比較など、立体的に学んでいくのが特徴といえるでしょう。また毎日がめまぐるしく過ぎ去る現代社会において、古典を重視していることも特色といえるのではないでしょうか。
佐久間 古典はただ古いのではなく、優れているからこそ残っているもの。ですから優れた作品を学ぼうとすれば古典を取りあげることになるのは必然ともいえます。江戸時代に書かれた歌舞伎も、400年前に書かれたシェイクスピアの作品も、今上演すればそれは現代の芸術作品として成立します。何度も読み継がれてきた原典が新たな解釈・演出を経て異なる魅力を持つ芸術作品に生まれ変わるというのは、どの芸術分野でも共通していると思います。
那須 音楽についていえばすでにありとあらゆるリズム、メロディ、コード進行が出尽くしてしまっていて、大ヒット曲とされるものでもある年代以上の人間にとっては既存曲の焼き直しに感じられるというように、世代を超えた傑作の誕生に行き詰まっている面があります。最近は寺社巡りが流行するなど伝統的価値の再評価が盛んですが、学生のうちに古典の真価に触れる経験を積んでおくことは、人間の深みを形作るうえで非常に有効だと思います。
高橋 絵画に限らず20世紀の前衛芸術運動は、伝統を否定し「“破壊”する」こと自体を目的化していた面もあったのですが、それこそ先史時代から連綿と続く芸術の長い歴史の中に新しい創造の可能性を考えていく学習が、今こそ求められているのではないでしょうか。
浅井 
とはいえ、すでに21世紀に入って10年が経つわけですから、20世紀以降の作品をまったく取りあげないわけではありません。ロックやジャズ、ビデオアートやシュールレアリズムの絵画・彫刻など、一定の時を経て多くの人々に認められ価値を形作った“古典的”現代芸術は数多くあります。また本学科は芸術の実技指導を中心にしているわけではありませんが、より深く鑑賞できるように実際の芸術世界に直接触れる機会を用意しています。
那須 音楽は消えてゆく芸術です。そこで手がかりとして楽譜を読むわけですが、これ自体が大きく変化しています。線のような音符や赤色音符を使ったり、七線譜を使ったり……。みなそれぞれ、それが最善と思われたのです。そうした古楽譜を解読して歌ってみることで、過去の作曲家が作品に込めた思いを実感することも、人間の営みとしての音楽を理解するうえで、とても重要です。
高橋 実技の経験があるに越したことはありませんが、それを必須とするわけではありません。しかし例えば、絵に描かれたあるモチーフが何を意図しており、またどのような由来があってそのように解釈されるようになったのかを知っていくためには、図像学(イコノロジー)の知識を学ぶだけでなく、実際に簡単なスケッチをしてみるというのが役に立つはずです。
西澤 本学は国立の美術館・博物館と提携しており、学生は常設展に無料で入場することができます。また芝居や演奏でも学生ならではの割引制度が数多くあります。せっかく都心の文化資源に恵まれた環境で学ぶことになるわけですから、積極的に本物の舞台や演奏、作品に触れる機会を持ってほしいですね。感性豊かな学生時代に芸術に対する学習・研究を経験するのは、将来どんな進路を目指すとしてもきっと役に立ちます。

人間の本質を理解することが
将来の進路につながる

佐久間 私の教え子でイギリスと取引のある会社に就職した人がいますが、学生時代に学んだシェイクスピアの知識がすごく役に立ったと聞きました。相手の文化を知り、関心があることを伝えれば、異なる文化背景を持つ人とも円滑にコミュニケーションをとることができます。また演劇や映像作品にしても、演じる人、演出する人、舞台を作る人など多くの人が関わってひとつの作品となるものなので、それを理解することはさまざまな意見や主張が飛び交う現代社会を生きるためのヒントとなります。学生にはいつも言っているのですが、大学教育の目的のひとつは誰を相手にしてもどんな話題であっても会話ができるようになることだと考えています。これを成しとげるのには大変な努力がいりますが、それは同時に挑戦のしがいがあることでもあります。本学科の学びの内容は、そのための心強い道標となるでしょう。
浅井 
比較芸術学科の学びは、特定の職業に就くためのものではなく、どんな分野の仕事においても役に立つものです。直接的には美術館・博物館の学芸員など文化・芸術関係の進路が考えられますが、幅広い教養を生かしてマスメディアや環境、福祉、情報などの職種も考えられます。芸術を通して人間の本質をじっくりと学んでいくことのできる新しい学びに、ご期待ください。
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