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学長対談 受け継がれていく、新生青山学院の潮流

 2011年12月、伊藤定良教授の4年間の学長任期が終了し、仙波憲一教授に“学長バトン”が渡されました。大学運営のかじ取りを担う学長のあり方は、学生生活に大きく影響してきます。今回は新旧ふたりの学長が、これまでの4年間の本学の歩みを振り返るとともに、来たる4年間を展望して、語り合います。




21世紀にふさわしい大学づくりを目指した4年間

仙波憲一新学長 伊藤学長が就任されてからの4年間で、本学には3つの新学部と2つの新学科が誕生しました。伊藤学長がかねてより掲げてこられた「創造の場、学びの場、出会いの場」としての大学を実現するために邁進されたと感じますが、今振り返られてどのような4年間でしたか。
伊藤定良前学長 まさに全力投球の4年間でした。私の前任である武藤元昭先生が準備を進めてこられ、本学にとって26年ぶりの新学部となった総合文化政策学部と社会情報学部、夜間部の伝統を現代的な教育ニーズに転換した経済・経営両学部の新学科、そして文学部から独立する形で誕生した教育人間科学部。これらはすべて、急速に変化を続ける社会の要請に応えるものでした。それに加えて2012年度には、「文化の時代」といわれる21世紀を象徴する新しい人文学教育の試みとして、文学部比較芸術学科を開設します。こうした学部・学科の新設や改編によって、様々な社会的要請に応えることのできる体制が整ってき ました。
仙波 教育体制の充実と同時に、もう一つの大きな目標が、就学キャンパス再配置計画の推進でした。現在相模原キャンパスで学んでいる人文・社会科学系学部の1~2年生約7000名を青山キャンパスでの就学に移行するという壮大なプロジェクトの実現に向けて、入念に準備を重ねてこられたと思います。
伊藤 人文・社会科学系の学部が1キャンパスでの4年間一貫教育を行う体制でなくなったのは1982年の厚木キャンパス開学からですが、約30年の時を経て、相模原 キャンパスに拠点を置く理工学部、社会情報学部も含めた全ての学部で1キャンパス での4年間一貫教育が再び実現します。
 移行に向けた準備計画も固まり、いよいよ実行に移そうとしたところに東日本大震災が発生しました。この影響で大学17号館の竣工が約3か月遅れ、その後に予定していた既存建物・設備の改修に支障が出たことから、就学キャンパスの移行を1年間延期せざるを得ませんでした。この移行計画に期待を持って入学した2011年度の入学生には、特に申し訳ないという気持ちを強く抱いています。
仙波 私も学長就任までは学部長を務めていましたから、延期の決断は本当に心苦しいものでした。その他にも震災の影響はあらゆる面に出てきましたね。本学は幸い にして4月から授業を始めることができましたが、昨年の入学式・卒業式が中止を余儀 なくされたのは大変残念でした。
伊藤 確かに震災によって本学も大きな被害を受けましたが、その一方でこの震災を通して、大学、そして学生が大きく変わりつつあるとも感じています。本学では震災の当日、教職員と学生が協力して約8000名の帰宅困難者を受け入れました。また被災した学生が無事に卒業できるまで継続して援助するための奨学資金を設立しましたし、被災地の方々の手助けをしたいという声が学生から多く寄せられ、その熱意を後押しできるようにボランティア・ステーションを立ち上げました。正課外とはいえ、大学として責任を持って学生を派遣することになるわけです。そのため、災害時の緊急支援に豊富な経験を持つ教員にサポートをお願いし、夏休みを派遣期間にすることで、石巻など被災地6カ所で約400人の 学生が復興事業に携わりました。支援内容も商店街の復興事業から小中学生の学習支援、子どもたちのこころのケアなど多種多様です。積極的に行動する学生たちの姿を見て、本学の素晴らしさを再発見したように思います。
仙波 教職員も現地に泊まり込んで学生とともにボランティア活動に取り組んでくれました。教職員と学生が寝食をともにしながらの活動は、教室を飛び出しての学びという点で、新しい可能性を感じることができましたね。
伊藤 12月に石巻市の商店街の方が本学を訪れ、「もう一度生きていこうという勇気を学生さんたちにもらった。そのお礼をしたい」と言ってくださったのが嬉しかったですね。学生たちは、チームを組んで日々の作業を分担して行い、夜には必ず反省会を開いて、より効率的に作業ができるように知恵を絞ってプランを立てたそうです。最初は頼りないところがあったという学生たちも、その過程でたくましく成長してくれました。まさに本学のスクール・モットーである「地の塩、世の光」の精神を実践してくれ たと思っています。

青山・相模原両キャンパスの将来に向けて

仙波 伊藤学長の4年間で本学は大きく変わってきたと実感しています。これからの大学運営にあたっては、継続性・連続性を大切にしていきたいと考えています。学長が変わったからといって大学のすべてが変わっていくということはありません。伊藤学長が進めてきたこと、特に直近の将来課題としては2013年の移行計画ですが、これを引き継いで無事に成功させることが当面の大仕事になります。その上で、伊藤学長が取り組みつつも実現にはもう少し時間が必要だった課題に、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
伊藤 グローバル化の推進、青山キャンパスの新図書館建設、そして人文・社会科学系学部の学生が移った後の相模原キャンパスのあり方など、2013年以後にも本学が取り組むべき課題は本当にたくさんあります。
仙波 確かに課題は多いのですが、私は2013年を青山学院大学の新しいスタートの時と思っています。良いキャッチフレーズはまだ浮かびませんが、「新生青山」をしっかりとスタートさせるべく、これから全力を注いでいきます。就学キャンパスの移行については、後は実行あるのみというところまできていますから、早急に具体化すべきなのは相模原キャンパスの教育体制の再構築と活性化です。
伊藤 相模原キャンパスに引き続き拠点を置く理工学部と社会情報学部は、既に将来の発展に備えた計画を実行し始めています。また、新たな教育研究分野を開拓できるような新学部の設置についても、これまで様々に検討を重ねてきました。仙波学長がその流れを大切にしてくださるとのことなので、安心して任せることができます。
仙波 新学部の設置にあたっては、ここ数年の本学の発展の流れを受け継ぎ、現代社会の諸問題に総合的に対応できるような人材を育てていくということが求められていくでしょう。そこへさらに、大学での学びをいかにグローバル社会の中で発信し、世界を正しい方向へ導いていくかという視点を付け加えていきたいですね。
 今後の相模原キャンパス再編の核となるのが新学部の設置とするならば、青山キャンパスにおいて「新生青山」を象徴することになっていくのは新図書館の建設です。学内の専門家が中心となって構想をまとめ、現在は基本設計の段階まで進んでいます。実際に建設されるまでしばらく時間がかかりますが、それまでにも学習ラウンジを設置するなど、十分な学習環境を整えていきます。
伊藤 私も学生時代は図書館に通い詰めたものですが、大学生活と図書館は切っても切れないものです。本学の場合、蔵書数やデータベースの整備は他大学にも引けを取りませんが、施設的な制約はどうしても解消できない部分があります。私が学長に就任する前からずっと待ち望んできた新図書館の建設がようやく端緒についたので、ほっとしています。
仙波 新図書館も伊藤学長の計画を受け継ぐことになりますが、現在大学に求められている図書館とは、かつてのように、本を読み勉強に没頭できる「静かな図書館」だけではありません。学生が自由闊達に意見をかわしながら学びあいを創発する「賑やかな図書館」の機能を持たせて学生生活の中心となるような、立派な学習図書館を実現したいですね。



「青山らしさ」をどのように伝えるか

伊藤 私の在任中の課題としては、グローバル化の推進も重要でした。本学はもともと国際的なイメージが強い大学ですし、世界で活躍している先生方、優れた資質を持った学生は数多くいます。しかし留学生数や協定校数などの数値でみると他大学と比べて少なく、現実とイメージとのギャップが生じています。そこでこの数年で外国拠点事務所の設置や協定校の拡充に取り組んできました。その結果、留学生数は 徐々に増えてきています。
仙波 国際社会の中で本学の位置を高めていくために、引き続き様々な取り組みを進めます。しかし一方で、英語を話して外国で活躍することだけがグローバル化ではありません。真のグローバル化とは多様性を認めることです。自分が世界のどこにいようとも国籍や人種、宗教を超えてお互いを理解し合い、親しく付き合える人材を育てていくこと。それが青山らしいグローバル化だと思います。
伊藤 同感です。日本と異なる文化・歴史を背景に持つ留学生と身近に接することは、自分を問い直すための良いきっかけになります。独自性を尊重しながら、お互いに理解し合うことが大切なのです。そして同時代に生きる若者として、世界で起こっている問題に目を向け、どうすればいいのか、何を変えればいいのかを、幅広い視野で考えられる人になってもらいたいと思います。
仙波 幅広い視野で物事を見つめるというのは、多様性を理解するための大前提となります。本学ではそのための仕組みとして全学共通教育システム「青山スタンダード」を2003年に導入しました。これまでにも高校と大学との違いを体感的に理解する科目やキャリアを考える科目などを積極的に導入してきましたが、2013年以後も「青山スタンダード」の役割は変わることなく続 いていきます。
伊藤 所属する学部学科に関係なく、本学の卒業生として求められる水準の知識と技能を身に付けるというのが「青山スタンダード」の理念ですから、今後も両方のキャンパスに所属する学生に対して同じ構造の学びを提供できるように準備を進めてきました。
仙波 青山・相模原それぞれのキャンパスで4年間を過ごすことになると、どのように「青山らしさ」を身に付けていってもらうかが大きな課題ですね。所属するキャンパスは違っていても「青山学院でこういうことを学んだ」という意識を持てるような仕組みにしていきたい。そのための具体策として、キリスト教関連の科目を現在より充実させたいと考えています。社会貢献活動を通したサービス・ラーニングなど、他者に共感を覚えることができるような教育は、キリスト教学校である本学ならではのものだと思います。
伊藤 それに関連しますが、学生には本学の歩んできた歴史をもっと知ってほしいですね。2010年に『青山学院大学五十年史』を出版しましたが、青山学院大学を作り、発展させてきた人々が個性豊かに描写されていて、何度読み返しても感銘を受けます。「青山学院はどのような先達が作りあげてきたのか」ということを学ぶと、自分の立 ち位置がよくわかってきます。
仙波 本当にその通りだと思います。青山スタンダード科目として開講されている「青山学院大学の歴史」の授業は非常に多くの学生が受講してくれていますが、なかなか利用できる教材がないといいます。『五十年史』のダイジェスト版を作ってテキストにするのもいいかもしれませんね。それから、本学の所蔵している歴史資料を実際に目で見ることのできる資料館も作りたいと考えています。
伊藤 私もいつかは実現したいと考え、折りにふれて資料館の必要性を訴えてきました。1870年代にアメリカから派遣された宣教師たちが創設した学校を源流とする本学には、実に貴重な資料がたくさん残されています。一つの学校の歴史というだけでなく、近代日本の歩みを象徴するようなものが数多くあるのです。資料を保存し、閲覧できる資料館の実現を強く願っています。
仙波 数年前までは、青山キャンパスの間島記念館に資料が閲覧できるスペースがありました。青山キャンパスの学生数が増えるため難しい点もあるでしょうが、やはり学校を象徴するような建築物にそのような施設を入れることが望ましいですね。卒業後の拠り所にもなりますし、そういったものに触れられれば学生の大学への帰属意識は高まっていくはずです。
 大学はまずもって学生のためにあるのですから、学生の声で変わっていく部分も大きいのです。ボランティア・ステーションも学生の熱意と行動がなければ設立されることはありませんでした。より多くの学生に、大学に“参加”しているのだという意識を持ってもらえれば、青山学院大学をより良い大学へと変えていける。そういう気持ちを持って、これからの4年間を学生とともに歩んでいきます。


--------仙波学長 Profile--------

1950年生。青山学院大学経済学部卒業、青山学院大学大学院経済学研究科修士課程修了。経済学修士。
1984年青山学院大学国際政治経済学部専任講師に就任。1993年に同教授となり現在に至る。2003年から2007年まで副学長・青山スタンダード教育機構機構長・学校法人青山学院理事、2008年から2011年まで国際政治経済学部長・国際政治経済学研究科長を歴任する。 専門は理論経済学、マクロ経済学、ミクロ経済学。日本経済学会、地域経済学会等に所属。



--------新副学長紹介--------
 

副学長
長谷川 信
(学務及び学生担当)
 2013年の就学キャンパス再配置は、青山・相模原両キャンパスに大きな変革をもたらします。青山キャンパスで約7000名増える学生に対応する環境を整える一方で、相模原キャンパスでは新設学部構想を含めて新たな教育体制を構築します。また、学部教育をさらに発展させるとともに大学院教育との連携を図り、本学の教育システムの一層のレベルアップを目指します。

1951年生。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。経済学修士。1994年に経営学部に就任し、1999年から2003年まで経営学部長・経営学研究科長、2007年から2011年まで副学長・青山スタンダード教育機構機構長・学校法人青山学院理事。専門は日本経営史。
   

副学長
林 洋一
(総務担当)
 総務担当は財務や情報システム、社会連携など、表に出てこない部分の地ならし役といえます。特に予算管理では、健全な財務状態を保ちつつ、限りある原資を最大限に活用するよう努力します。また学外資源の活用という点から、学外諸機関との連携を推進。社会連携機構に新設するアジア国際センターは本学の更なるグローバル化に寄与してくれると期待しています。

1950年生。名古屋大学工学部卒業、名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了。工学博士。1988年に理工学部に就任し、2008年から2010年まで情報科学研究センター所長、2010年から2012年1月まで理工学部長・理工学研究科長。専門はパワーエレクトロニクス。
   

副学長
平澤 典男
(広報及び将来構想
・第二部担当)
 将来構想担当としての直近の課題は、就学キャンパス移行を成功させることです。先輩と後輩が繋がり、教養教育と専門教育が繋がり、正課教育と正課外教育が繋がるところに4年間一貫教育の真の狙いがあります。広報担当としては、そのような教育の進化、そしてボランティア活動や文武両道で素晴らしい成績を残している学友会の活躍など、「青学生」の今の姿をしっかりと発信していきます。

1950年生。一橋大学経済学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。経済学修士。1980年に経済学部に就任し、2006年から2010年まで経済学部長・経済学研究科長。専門は公共経済学。
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