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「心に残る授業」をテーマとした「2012年度Happyくらす作品コンクール」審査結果について

「心に残る授業」をテーマとした「2012年度Happyくらす作品コンクール」審査結果について

2012年10月31日
全学FD委員会
委員長 長谷川 信

学生のみなさんの講義の思い出、心に響いたクラス、自分を変えた授業、目の覚めた講義、元気の出た授業など、講義を通して得た発見や感動、体験、成長などのよい思い出を「心に残る授業」として募集した、第1回Happyくらす作品コンクールに、今回多くのご応募をいただきました。
いずれも力作揃いで審査に苦慮しましたが、下記の通り、最優秀賞1作品、優秀賞1作品、佳作2作品が選ばれました。受賞者の皆さん、おめでとうございます。

受賞者

最優秀賞 国際政治経済学部 3年 中野聡美さん
優秀賞 経営学部 2年 鈴木 梨歩さん
佳作 社会情報学研究科 2年 田中 優衣さん
佳作 法学部 4年 福岡 彩さん

最優秀賞作品紹介

原石とダイヤモンド
国際政治経済学部 3年 中野聡美
「なめてんのか!」と、その教授は教室に入って挨拶をするなり怒鳴った。その教授とは、今はもうご退職された袴田茂樹教授のことだ。講義名は「入門セミナー」。国際政治経済学部に入学したら、学科を問わず全ての学生にとって必修となる授業だ。クラスは約30名という少人数制で、毎回異なる教授による講演を聞いてレポートを書き、クラスごとの授業を隔週で行うというものだった。その日、袴田先生は激怒していた。なぜなら、ある学生の提出したレポートが何かの論文をそのまま引用したものだったということがバレたからだ。現代っ子の大学生にはよくあること―――。だから私はその時にはどうして先生がそこまで怒るのか分からなかった。しかし、一年後この授業が終わるころには先生の意図が分かるようになっていた。先生が全身全霊で授業に向かい、そして私たちに伝えたかった本当のことがなんなのか、それが自分なりに分かったときは心が震えた。

袴田先生はレポートを書くときにとにかく「自分の言葉」で書くということを口が酸っぱくなるほど繰り返し言っていた。でも、初めは「自分の言葉」でレポートを書くなんてとても難しいし、そもそも「自分の言葉」って一体なんなのだろう、とレポートを書くたびに悩んだ。参考文献を読めば自分が意図せずともその本の主張に引きずられ、何が正しいのかよく分からなくなって、気付いたら朝になっていたなんていうことは全然珍しくなかった。正直、この通年の授業は心底大変だった。いわゆる「楽単(楽に単位が取れる授業)」とは正反対だった。

ある日、先生は授業が始まるなり国際政治に関する論文を音読し始めたことがあった。その論文の筆者はなんと14歳の女の子で、テーマは「日本は政府開発援助(ODA)を減らすべきか?」というもの。中学2年生が書いたとは思えないほどしっかりした内容だったが、その時に先生が「14歳の中学生でも自分の言葉で論文が書ける。難しい用語なんて一切使ってない。こういうことです、自分の言葉で書くということは」と言い、続けて「年が小さいからといって本質が分からないわけじゃない」と言ったのだ。その瞬間、私は「は!そういうことか」と心の中が一気に突き抜けて晴れるのを感じた。初めて大学の勉強って面白いかもしれない、と思えた瞬間でもあった。おそらく袴田先生が私たちに伝えたかったこと、それは「自分の頭で考えること」の重要さ。「自分の言葉」で表現することの大切さ。そして、それこそが大学における「学問」だということだ。

それから、この授業がどんどん楽しいと思えるようになった。自分の中で国際政治のテーマを消化してじっくり考えること、足りない知識は本を読んで補って、そして自由にレポートで表現できることなど、自分の中でやる気が出始めた。何度か回数をこなすと自分なりに「本質」が分かったような気がして、それも嬉しかった。もしも、この授業で袴田先生と出会わなかったら、私は大学でのレポートやプレゼンテーションなどを全部受け身でやっていたと思う。自分の頭で考えて自分の言葉で表現するということは、大学の勉強に限らず、人生のどの局面でも必要なことだ。そうしなければ先生の言う「本質」にはたどり着けないような気がするからだ。だから、私は大学に入って入門セミナーを受講して袴田先生に出会えて本当に幸運だったと思っている。この授業ほど私の大学生活に影響を与えたものは無い。袴田先生は、まるで原石のままの学生を磨くダイヤモンドだった。