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Research 05.企業価値向上と責任ある投資家としての長期投資

企業の目的は企業価値最大化です。企業はこのために様々な金融活動を行っています。長期投資は、証券の長期保有を通じて長い目で企業を育て、社会を良くしていく役割を担うものです。長期投資が少なくなってしまうと、金融危機時のように、急速な売買により証券市場や社会が不安定化してしまいます。そこで、企業価値の向上を図りながら、安定した市場・より良い社会を形成していくための長期投資の役割を、分析・提案しています。

研究の背景

近年、ガバナンス・コード等が導入されました。これにより、投資家は、企業価値向上のみではなく、社会への責任ある投資家として、長期的役割を果たす必要が出てきました。責任ある投資家の存在は、大量な資金の効率的配分や経営規律向上、金融市場の安定のためには欠かせません。このため、私は、投資家にとっての株式の大量保有行動であるM&A、経営規律向上のための社会的活動投資を例に、長期投資の成果を分析しています。

研究の内容

最初に、銀行M&Aと長期投資の関係を見てみます。その金融的効果は、M&A後、数年年程度経過しないと明確にならない傾向があります。また一般的に、国内投資家よりも外国人投資家が、M&A銀行株を購入した場合の方が、M&A後の長期パフォーマンスは良くなりますが、そのタイプによって異なります。ファンド等は責任ある投資家として長期的な役割を果たしているようです。また、銀行は規制が強い産業ですから金融規制の影響も考慮すると、しっかりとした制度整備は責任ある長期投資を行うにあたって重要な要素であることがわかります。
 さらに、近年注目を浴びている投資の一つに、直接的に企業の社会的活動を見るCSR(環境、社会貢献、企業統治、労働改善等の社会的活動)という、この活動に積極的に取り組んでいる企業の株式に長期に亘り投資しようという考えがあります。CSR活動が盛んな企業ほど高い株式リターンとなっています。しかし、CSRは、短期投資では効果を生みません。それは、企業が経済活動を営む中で、環境、社会、企業統治等の長期的課題を解決した上で、企業価値最大化に結びつくまでには時間がかかるためです。CSRの金融的成果を得るためには、投資家は責任ある投資家として、社会的な諸活動を適切に評価できる目を持つ共に、経営の長期的課題を解決するための長期的視点が必要なのです。

経済学部
白須 洋子 教授