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2026.08.04

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【理工学部】坂上貴洋教授(理工学部 物理科学科)の研究成果が学術論文誌Physical Review Letters, Physical Review Eに掲載

坂上貴洋教授(理工学部 物理科学科)がアクティブポリマーの振る舞いを理論的に解析し、その背後にある普遍的な側面を明らかにしました。
本研究成果は Physical Review Letters、およびPhysical Review Eに掲載されました。

【論文タイトル】Compounding formula approach to chromatin and active polymer dynamics
【著者】Takahiro Sakaue, Enrico Carlon
【掲載ジャーナル】 Physical Review Letters 137, 058101
【掲載日】2026.7.31
【DOI】https://doi.org/10.1103/y2y6-jfyt

【論文タイトル】Physics of active polymers: scaling analysis via a compounding formula
【著者】Takahiro Sakaue, Enrico Carlon
【掲載ジャーナル】 Physical Review E 114, 015424
【掲載日】2026.7.31
【DOI】https://doi.org/10.1103/fhd9-l9l4

研究成果のポイント

■アクティブポリマーの非平衡ダイナミクスを特徴づけるスケーリング則の導出
■細胞内の生体高分子の振る舞いを理解するための基礎理論構築

研究概要

本研究は、アクティブポリマーの振る舞いを理論的に解析し、その背後にある普遍的な側面を明らかにしたものです。
アクティブポリマーとは、エネルギーを消費して自発的に動き回るような素子が一次元状に繋がったものです。通常、ポリマー(=高分子)とは、モノマーという繰り返し単位が重合して鎖状に連なった巨大分子のことであり、巨大分子形成により新たに発現する物性を系統的に研究するのが高分子物理学です。従来の高分子物理学では、モノマーは熱的に揺らぐ受動的な素子と考えますが、これでは、細胞内の非平衡過程によりエネルギー消費を伴うような生体高分子の運動を記述することはできません。このような問題意識の下、本研究では、アクティブポリマーを記述する基礎的なモデルを取り上げ、その動的な性質について理論的解析を行いました。特に、細胞内のDNAやクロマチンの動きを念頭に置き、近年の生細胞イメージングの観測結果をどのように解釈すべきかについても議論を行いました。

研究の背景

高分子は、モノマーと呼ばれる基本ユニットが繋がってできた巨大な分子です。モノマーとしては様々な化学構造のものがあり、そのため世の中には多種多様な高分子が存在します。例えば、ポリエチレンやポリスチレンのような合成高分子のほか、私たちの体の中にあるタンパク質やDNAも高分子です。これらの高分子の性質を理解することは、工業的応用にも重要ですし、生命現象の理解にも欠かすことができません。
構成要素であるモノマーの構造が違えば、高分子の振る舞いも異なってくるというのは当然のことでしょう。それでも大雑把に言えば、これらの高分子は、どれも長い鎖状の分子といえます。そして、この長い鎖状の分子であることに由来する普遍的な振る舞いが見られるのです。この高分子(=長い鎖状分子)の振る舞いに見られる普遍性という概念は、20世紀後半の高分子物理学の発展の中で、強く認識されるようになりました。
一方で、生物物理学の分野では、近年、細胞核内にある遺伝子を蛍光で標識して、顕微鏡下、遺伝子が細胞核内を動く様子をリアルタイムで観測することが可能になっています。遺伝子の実態はDNA上の塩基配列ですので、遺伝子の運動とは、詰まるところ、DNAという長い高分子上の特定の部位の運動ということになります(図参照)。遺伝子がどのように動くかをきちんと理解することは、遺伝子発現の機構を解明する上でもとても重要です。そこで、高分子物理学の立場から遺伝子の運動を考えることには大きな意義があると思われますが、このアプローチには素朴な疑問が付きまといます。というのは、通常、高分子物理学では、熱平衡状態にある高分子の振る舞いを考えるのですが、生きている細胞は熱平衡状態にはありません。細胞のような定常的にエネルギー消費を伴う非平衡状態におかれた高分子の振る舞いはどのようなものでしょうか?

図:熱平衡状態における高分子と非平衡揺らぎに駆動される高分子(アクティブポリマー)の振る舞いの違い

研究の内容

熱平衡状態にある高分子には、熱揺らぎが作用しています。細胞のような非平衡な環境下におかれた高分子は、熱揺らぎの他に、例えば、細胞の代謝活動に由来する揺らぎが作用すると考えられます。このような揺らぎは、熱揺らぎとは異なり、非平衡揺らぎと呼ばれます。このような非平衡揺らぎが、高分子を構成する個々のモノマーに作用するような高分子をアクティブポリマーと言います。本研究では、上記の素朴な問いに答えるために、最も簡単だと思われるアクティブポリマーのモデルを取り上げ、その理論的解析を行いました。中でも、高分子の運動を考える上で重要となる「協働運動のドメイン」という概念を取り上げました(図)。このドメインは、時間スケールとともに増大していくのですが、熱平衡状態にある高分子とアクティブポリマーでは、このドメインサイズの時間スケール依存性が異なることを明らかにしました。これにより、アクティブポリマーのダイナミクスを特徴づけるスケーリング則を導出しました。

図:熱平衡状態における高分子と非平衡揺らぎに駆動される高分子(アクティブポリマー)の振る舞いの違い

今後の展開・社会に与える意義

アクティブポリマーの振る舞いは多様であり、近年、様々な角度から研究が行われています。そのような状況下、アクティブポリマーの基礎モデルが示す現象についての物理的描像を明確にすることができたことには大きな意義があると考えています。今後は、得られた知見を基にして、様々な状況へ拡張、展開していくことが期待されます。DNA、クロマチンの運動を通して遺伝子発現の問題とも関係し、基礎生物学の問題とも深く関わってくる可能性を秘めています。

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