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教職員向け各障がい別の学生支援について

教職員向け各障がい別の学生支援について

すべての障がい共通

具体的な先生方へのお願いは、「配慮依頼文書」に記載しております。配慮依頼文書に沿って、まずは障がいのある学生の状況や希望を確認して、授業担当としてできること、できないことを、当該学生と調整し合意するための対話(建設的対話)の場を設けていただけますようお願い申し上げます。先生お一人で対応や判断が困難な場合は、障がい学生支援センターへご相談ください。

  • 講義資料

    当該学生の希望に応じて可能な限り事前にお渡しください。また、コースパワーを使用するなどしてデジタルデータでお送りくださると、学生は大変助かります。

  • 講義内容

    どのような講義形態(講義形式、ゼミ形式、グループディスカッション等の有無、視聴覚教材使用の有無、外国語による授業)なのか、評価の方法などは可能な限り「講義情報」に明記していただくか、初回授業で当該学生にわかるようにお伝えください。

  • 学生サポーター

    障がいのある学生への授業支援に、学生サポーター等の同席、学生サポーターによる障がい学生へのPCを使用した支援、PC等電子機器の本人による使用につきまして、ご理解とご配慮をお願いします。

  • 重要な情報の発信

    重要な情報(専門用語、試験範囲、休講情報、課題締切等)は、板書またはプリントの配布をお願いします。また、コースパワーや電子メールのご利用による情報発信を行っていただけると大変助かります。

  • 評価方法

    1.評価方法はあらかじめ障がいのある学生にお伝えください。
    2.予定している評価方法について障がいのある学生が実施可能か事前に確認し、授業の目的、内容、機能の本質的な変更には及ばない範囲でご配慮をご検討ください。

  • 性別の呼称

    障がいではありませんが、戸籍上の性別に違和のある学生が受講している場合がありますので、不必要な男女でのグループ分けや、外国語の授業での呼称(Mr.やMs.など)についてご留意ください。また名簿の性別情報の取扱いには十分ご留意ください。 呼称については、できれば「~さん」等に統一していただけると助かります。

視覚障がいのある学生への支援

視覚障がいとは

一般的に、視力の程度によって、人は得られる視覚情報が異なります。
視力が著しく低いと、視覚的な情報を全く得られない、あるいはほとんど得られません。文字の読み書きには点字を用いる人が多く、単独で移動する際には白杖または盲導犬を使用することが多いです。
また、保有する視力を活用しながら生活し、墨字(点字に対し、通常の文字の総称)を使用することが可能な人もいます。ただし、ルーペや単眼鏡などの弱視レンズや拡大読書器を使ったり、印刷物やパソコンの画面を拡大する等、文字を拡大して読んでいます。
その他にも視野が狭い、まぶしさがある、色が分からない等の見えにくさを抱える視力以外の視覚障がいがあり、見え方には非常に大きな個人差があります。最近は、パソコンやスマートフォンのデータ読み上げ機能を利用している人も多いです。

視覚障がいのある学生とのコミュニケーション
  • 挨拶

    視覚障がいのある学生に挨拶をする時には、「○○さんこんにちは、学生生活部の△△です」のように、相手の名前と自分の名前の両方を伝えましょう。「こんにちは」だけでは誰が挨拶しているのか分からず、また、自分に挨拶されているのかどうかも不安だからです。弱視のある学生も、すれ違った人の顔を識別しにくいため、スムーズに挨拶ができません。そのため、やはり周りにいる人たちの方から声をかけることが大切です。

  • 状況を言葉で

    視覚障がいのある学生は、今何が起こっているのか分からずに不安や不便を感じていることがあります。しかし、ひと言言葉で説明するだけで安心してその場の雰囲気になじめる場合が多いものです。会合や会食の場では、誰がどこに座っているのか等を言葉で説明することで、スムーズに議論や会話に参加することができます。また、目の前の状況を説明する時にとても有効なのがクロックポジションです。上のイラストのように、クロックポジションは、どこに何があるのかを時計の短針に例えて知らせる手段です。テーブルの上の物の位置を説明する時に、水平に時計の文字盤を置いた形を頭に描いて伝えます。

  • 歩行の手助け

    視覚障がいのある学生が道に迷っている様子を見かけたら、「何かお手伝いしましょうか」と声をかけましょう。必要な場合は、移動介助等を率先して行ってください。白杖を持っている場合は、持つ手と反対の手で介助者の肘関節の少し上を軽く持ってもらいます。こうすると介助者が半歩前を歩くことになり安全です。

授業における配慮
  • 視覚教材

    1.授業中に配布する資料や使用するパワーポイント資料等は、可
    能であれば事前にテキストデータで本人にお渡しください。また、障がいの状況によっては、拡大したレジュメ等を本人にお渡しください。
    2. DVD等の映像教材で字幕の多いものや、聞いただけでは理解
    しにくい内容を含む場合は、事前に内容をまとめたレジュメを準
    備していただくか、学生にメディアを貸し出す等ご配慮ください。
    3. 図表はできるだけ詳細にご説明ください。

  • 板書

    ・板書の際は、声に出しながら書いていただくか、読み上げをお願
    いします。また、板書を指し示しながら「これ」「あの」等の指示語は避け、具体的に何を指しているかが理解できるようにご説明ください。

  • 授業方法

    1. 授業中にレポートや感想を書く等の際、障がいの状況によって
    自筆が困難な学生の場合は、①授業の後にメール等で提出させる、②簡単なものであれば他の受講生にその場で代筆してもらう等、適宜本人と話し合って決めてください。
    2. 内容によっては点字によるノートテイクが間に合いませんの
    で、復習のために録音や板書等の撮影の許可をお願いすることが
    あります。
    3. 本人の希望に応じて黒板が見やすい座席、教員の声が届きやすい座席を確保してください。
    4. 教室変更や休講等の情報は、事前に電話やメール等で本人に直
    接お知らせください。

  • 授業内試験

    ・問題用紙の拡大印刷、解答方法の変更の許可(パソコン入力での
    解答、口述解答等)、別室受験、試験時間の延長等ご配慮ください。

教材における配慮
  • 教科書・参考図書

    ・可能な範囲で点訳・テキストデータ化・拡大対応等を行います。作業に時間を要するため、早めにご指定いただき、本人および障がい学生支援センターへお伝えください。

  • 配布資料

    ・データで事前に本人にお渡しください。書籍の切り貼り等で構成
    された資料データのないものは、印刷物を本人にお渡しください。

※テキストデータ化は、大学図書館の管理監督の下、障がい学生支援センターが作業を行います。

聴覚障がいのある学生への支援

聴覚障がいとは

聴覚障がいは、耳が不自由なため、話し言葉や周囲の音が聞こえなかったり、聞きづらい状態をいいます。大学では授業中、聞こえないために先生の言っていることがわからないなどの困難が生じます。聞こえの程度は個人個人で違いますが、一般には聴覚障がいの程度が重くなるほど、視覚情報が重要となります。程度が軽くても、特定の周波数の音や声が聞こえない場合もありますので、話している内容を理解しているか確認が必要です。

聴覚障がいのある学生とのコミュニケーション
  • 視覚情報

    聴覚障がいのある学生とのコミュニケーション手段には、手話、筆談、口話(こうわ:相手の口の動きから言葉を読み取って、コミュニケーションをとる方法)など様々な方法があります。一般的には、手話をイメージする方も多いかもしれませんが、筆談も使われます。込み入った話や重要な点を確認するためには、筆談が向いていることもあります。
    文字を書く、読む等の視覚情報を使ったコミュニケーション手段を積極的にとることが大切です。筆記用具がない場合でも、スマートフォンや携帯電話の文字入力を利用する方法等たくさんありますので、柔軟に考えてコミュニケーションを積極的にとってください。

  • グループ討論など

    複数の人が同時に発言すると、聴覚障がいのある学生は話の内容や、だれが話しているかを把握することが困難です。発言の際は、だれが発言しているかを示すため手を挙げてから話すなど、視覚的にわかるように配慮することが必要です。内容がわかるように、ゆっくり、はっきり話すことを心がけましょう。

支援方法には以下のものがあります
  • ノートテイク

    ・講義の内容やその場の状況(教室で起こっている音の情報など)を用紙に手書きで書いて伝えます。

  • パソコンテイク

    ・講義の内容やその場の状況(教室で起こっている音の情報など)
    をPCに打ち込んで伝えます。通常、2台のPC(2名の支援者)
    で連携入力します

  • 手話通訳の手配

    ・手話通訳が適当と判断した一部の授業などにおいて、外部へ手話
    通訳者の派遣を依頼します。

  • 映像教材
    支援機器の利用等

    ・可能な範囲で授業で使用するDVD等の映像教材の音声文字起こしをします。
    ・障がいの程度によっては、FMマイクを使用することで授業の聴
    取効果が上がります。
    ・コミュニケーションのための筆談具等を、必要に応じて利用で
    きます。

授業における配慮
  • 視覚教材

    1. 授業内容のキーワードや重要語句、解説等が教科書やレジメ、
    パワーポイント等視覚情報として事前に提供されていれば、聴覚障がいのある学生にとって授業の内容やポイントを理解する大きな助けとなります。またサポート学生にとっても、文字通訳(ノートテイク、PCノートテイク)において、より多くの情報量を提供する助けとなります。

    2. ビデオ教材を使用される場合は、要約やシナリオ等内容を把握できる資料があると理解が深まります。また、文字起こしによる対応も行っております(作成には2週間程度かかります)。支援センターにご相談下さい。なお、TV番組等を録画して教材に使用する際は、あらかじめ字幕データが記録される方法で録画いただくと聴覚障がいのある学生にとって有効な教材となります。

  • 板書

    1. 配布資料に記されていない重要な情報や固有名詞、専門用語
    は、板書をしていただくと聴覚障がいのある学生の理解に役立ちます。
    2. 聴覚障がいのある学生は、授業担当者の口元を見ながら話して
    いる内容を理解します。板書をしながら話をされると口元が確認
    できず、内容が理解できなくなりますので、口元が確認できる状
    況でお話しくださいますようお願いします。

  • 授業方法

    1. 補聴器の使用により、ある程度聞き取りが可能な学生や、口話
    を習得した学生は、発声と口の動きを明瞭にしていただくと理解が容易になります。
    2. サポート学生を配置する場合もゆっくりお話しいただき、重要
    なことは繰り返していただければ、多くの情報を通訳することが可能になります。
    3. 聴覚障がいのある学生に意見を求める場合は、サポート学生で
    はなく本人にお願いします。
    4. 座席はできるだけ前方に、サポート学生の座席も確保できるよ
    うご配慮ください。
    5. 口頭での出席確認をされる場合は、目で合図する等出席確認を
    しているという意思表示をお願いします。
    6. ディスカッションやグループワーク等話し手が複数になる場
    合、「挙手をして名乗ってから発言する」「文字通訳者が先の発言
    の通訳を終えているか確認する」というルールで実施していただ
    ければ、聴覚障がいのある学生にとって進行内容や状況が理解し
    やすくなります。また、文字通訳者もより多くの情報を提供する
    ことが可能になります。

  • 学生サポーターの配置

    ・ノートテイク・PCノートテイク等、文字通訳を行う学生サポーターの配置をお願いする場合があります。

  • ゲストスピーカーの登壇

    ・授業にゲストスピーカーを招聘される場合は、授業担当者からゲ
    ストスピーカーに事前に上記の内容をお伝えいただきますようお
    願いします。

  • 授業内試験

    1. 聞き取り問題等は、代替方法の検討をお願いします。
    2. 試験の際に口頭で指示をされる場合は、黒板に記す、メモを渡
    す等の配慮をお願いします。

肢体不自由のある学生への支援

肢体不自由とは

肢体不自由は、四肢(上肢と下肢)と体幹の姿勢運動機能の障がいです。肢体不自由の原因にはさまざまなものがありますが、医学的には発生原因の如何を問わず、四肢体幹に永続的な障がいがあるものを肢体不自由といいます。
障がいの部位や程度によってもかなりの個人差があります。日常生活動作にあまり困難を感じさせない程度から、立つことや歩くことに支障があるため、杖や車いすを必要としたり、日常動作の多くに介助を要する程度までさまざまです。また、肢体不自由に何らかの別の障がいが重複している学生もいます。(例:聴覚障がい+肢体障がい、視覚障がい+肢体障がいなど)
中には一見、困難がないように見えても、微細な運動が苦手であったり、身体のバランスをとることが難しい場合もあります。

肢体不自由学生とのコミュニケーション

特に歩行に困難を抱える学生の多くは、エレベーターを利用して移動することが必要となります。場合によって、休み時間中の移動が困難な場合もあります。車いすによる移動によって、授業に遅刻する場合もあることなどへの配慮をお願いします。
車いすや杖を使用している学生、何も補助具は使用していないが歩行が困難な学生と混雑したエレベーターで乗り合わせたら、譲るようにしましょう。また、多目的トイレの利用が必要な学生もいます。日頃から一般のトイレを使用する等配慮をお願いします。
肢体不自由のある学生が移動中に困っている様子等を見かけたら、「何かお手伝いしましょうか」「何かお困りですか」と声をかけ、必要なサポートをお願いします。車いすや杖を使用している学生の中には、段差や坂道等を進むのが困難な場合があります。また、教室の扉の開閉や、落としてしまったものを拾う等の動作も困難な時があります。声をかけ、積極的にサポートしてください。

授業における配慮
  • アクセスへの配慮

    ・授業間移動に時間がかかる場合がありますので、授業開始時刻に
    間に合わない場合があります。授業開始後の入室について、必要に応じてご配慮ください。

  • 授業参加への配慮

    1. 教室がバリアフリー対応されておらず、本人にとって不都合な場合に、大学から教室変更をお願いする場合があります。
    2. 本人にとって不都合な座席である場合は、座席指定等ご配慮ください。
    3. 教室の構造上、最後列に座ることがあります。前列で資料を配布する、あるいは提出させる場合に自力での対応が困難なこともありますので、個別に対応する等ご配慮ください。
    4. 筆記に時間がかかる場合もあります。重要な点は板書する等ご配慮ください。授業中にレポートや感想を書かせる場合は、本人と相談の上、メールによる提出等の代替策にてご対応ください。
    5.書字の困難により、PC・タブレットの持ち込み、板書の写真撮影、講義の録音を希望することがあります。学生と相談の上、ご配慮ください。
    6.紙をめくるのが困難な場合もあります。その場合は、配布資料
    等は事前に本人へデータでご提供ください。

  • 学生サポーターの配置

    ・ポイントテイク等を行う学生サポーターの配置をお願いする場合があります。

  • 授業内試験

    1. 筆記による解答に時間がかかる場合があります。時間延長とそ
    れに伴う別室受験等のご配慮をお願いします。
    2. 論文形式での試験の際は、PCによる出題・解答、口述筆記、
    録音テープでの提出等にてご対応ください。

病弱・虚弱のある学生への支援

病弱・虚弱

病弱・虚弱のある学生で法的支援が整備されているのは、児童福祉法の規定に基づく、小児慢性特定疾病(悪性新生物、慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、内分泌疾患、膠原病、糖尿病、先天性代謝異常、血液疾患、神経・筋疾患、慢性消化器疾患、染色体または遺伝子に変化を伴う症候群、皮膚疾患)と身体障害者福祉法に定める心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱又は直腸の機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、肝臓機能障害の内部障がいに該当する疾患です。実際には上記の疾患以外にも、内臓の疾患による機能障害が永続していて、社会生活あるいは家庭生活、さらに重症になれば日常生活に著しい制限をきたしている場合があります。
(例)てんかん、心疾患、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー・アナフィラキシーショック、ネフローゼ症候群、インスリン依存性糖尿病
※左上の図は、内部障がいのある方のシンボルマーク「ハート・プラスマーク」です。

病弱・虚弱学生のある学生とのコミュニケーション

病弱・虚弱のある学生の多くは、本人が申告しない限り外見からは健康な学生と区別がつきません。ただし、東京都の場合は左上の図のような「ヘルプマーク」をつけている人がいると、わかる場合があります。
周囲に同じ状況の学生が少ないため、体調不良やさまざまな制限・制約により学生生活がうまくいかなかった時等に、心理的に孤独に陥りやすくなります。目に見えない障がいだからこそ優しい気持ちで受け止め、学生が安心して学生生活を送れる環境作りをしましょう。そのためには、緊急事態への一般的対応や、医療的対応のシミュレーションを事前に行なっておくことは必要不可欠です。

授業における配慮
  • 通院への配慮

    ・定期検診や通院等が必要な状況の学生もいます。本人からの申告
    を受け止め、演習や実習等、時期が固定される活動と通院等が重なってしまう場合は、必要に応じてご配慮ください。

  • 授業参加への配慮

    1. 教室がバリアフリー対応されておらず、本人にとって不都合な
    場合に、大学から教室変更をお願いすることがあります。
    2.体調不良時の途中退室、授業中の服薬のための水分摂取等にご
    配慮ください。
    3.本人にとって不都合な座席である場合は、座席指定等にご配慮ください。
    4.授業中の体調急変について、あらかじめどのような対処をするか、学生と打ち合わせをお願いします。
    5.活動や運動に制限のある学生の場合、実習や実技の科目において活動制限に配慮した授業内容や方法の工夫で配慮したり、課題提出等の代替策にてご対応ください。

  • 授業内試験

    ・座席の変更をする等、ご配慮願います。

発達障がいのある学生への支援

発達障がいとは

発達障がいとは、中枢神経系の発達が、健常とされる人(定型発達と言います)とは違う独自の発達の仕方をする人たちです。
定型発達の人の多い社会では、こだわりが強かったり、興味が偏っていたり、不注意だったり、衝動性が高かったりすることで、コミュニケーションや対人関係を作るのが苦手で、授業場面や生活面で困難をきたすことが多くみられます。ただし、発達障がいのある人たちも自分たちの経験に学んだり、周囲の適切な助言や配慮により、困難を軽減することができます。
発達障がいのある学生は、外見からは定型発達の学生と区別がつきません。困っていることを筋道立てて周りの人に説明することが難しく、そのために不適切な行動をとってしまい、その学生が発達障がいがあることを知らない周囲の人とトラブルになることがよく見受けられます。
また、コミュニケーションの質が周囲の定型発達の学生と違うために、疎通に困難を抱える学生もいます。そのため周囲から孤立してしまったり、逆に悪気はないものの一方的に相手にとって興味のない話題を話し続けてしまうなど、相手の気分を害してしまったりすることもよく見られます。社会の暗黙のルールなども理解していない場合が多く、まずは「変わった人」「困った人」ではなく、「困難を抱えた人」との認識を持つことから支援が始まります。
一方で、大学に入学した発達障がいのある学生や、障がいとは言えないもののその傾向の見られる学生については、自他ともに発達障がいである、あるいはその傾向があるとは認識せず進学した者もみられます。当該の学生が、授業等でのトラブルや、学修が困難な事態を把握したら、むしろ支援のチャンスとして障がい学生支援センターや学生相談センターにお伝えください。ともに話し合って支援の糸口を見つけていこうと考えています。

発達障がいのある学生への支援

発達障がいのある学生支援は、個別性が非常に高く、また履修登録や定期試験、就職活動などの場面によっても必要な支援が違います。お困りの際は、障がい学生支援センターへご相談ください。

授業における配慮

発達障がいの特性は個別性が高く、一人一人への対応方法が違うと言っても過言ではありません。したがって以下の配慮の例はほんの一例であり、すべての発達障がいのある学生に有効というわけではありません。

  • 講義内容

    ・授業形態の得意不得意があります。授業形態(講義形式、ゼミ形式、演習形式、グループワークやプレゼンテーションの有無等)を講義内容に明記していただけると、特性に合った授業を選択でき授業に参加しやすくなります。

  • 授業参加への配慮

    1. 聞いて理解するより、視覚情報での理解が得意な人が多く見受けられます。講義内容ではできるだけ視覚的情報を入れた資料をご用意していただけたら幸いです。
    2. 学生に指導する場合は、反語「いつまでそんなことをしてるんだ(すぐやめなさい)」や怒った態度、不愉快な表情などは通じないか、理解出来ないことが多いので、具体的で短い言葉での指導をお願いします。
    3. グループワークは苦手な学生が多いので、できるだけ気にかけていただければと思います。本人が困っている様子が見られたら、お声かけください。
    4. 独特のこだわりや感覚過敏により、決まった席でないと落ち着いて授業に集中できない場合があります。座席位置の指定をお願いする可能性があります。
    5. 聴覚過敏の学生もいます。教室での私語や雑音が極端に苦手で、ノイズを遮断するヘッドホンを使用する場合がありますのでご配慮ください(授業担当者の声は聞こえます)。

  • 学生サポーターの配置

    ・ポイントテイク等を行う学生サポーターの配置をお願いする場合があります。

  • 授業内試験

    1. 障がいの程度によっては、文字の読み取りの困難さや筆記に時間がかかることがあります。PC入力での解答や、口述試験等の代替策にご配慮ください。
    2. 不注意傾向の強い発達障がいのある学生の場合、周囲の刺激で気が散りやすく試験に集中できないことがあります。状況に応じて別室受験を手配する等ご配慮ください。

  • 課題・卒論

    ・レポートや卒論に取り組むための具体的な作業・手順がわからない、計画的に進められない等プランニングの困難さがあります。卒論指導の際には、(可能な範囲で)必要な作業を細分化し、それぞれに締め切りを設ける等、発達障がいのある学生がプランニングしやすいようにご指導をお願いします。さらに、進捗状況を定期的に確認する、あるいは報告させることも有効です。

発達障がい、または障がいではないもののその傾向の見られる学生の中には、自分に障がいがある、あるいはその傾向があることに気づいていない学生もおり、支援に結びついていない学生も多いと思われます。教職員のところに相談に訪れた学生の中に、発達障がいやその傾向が疑われる者がいたら、障がい学生支援センターや学生相談センターに相談に行くように促してください。それが困難な場合は、障がい学生支援センターでは、教職員からの相談や情報提供等をお待ちしております。

もしかしたら発達障がいかもしれない学生の様子(例)
  • 01.視線が合いにくい、態度が固くぎこちない。  
  • 02.一方的に話し出し、周囲がうんざりした顔をしても意に介さないように見える。
  • 03.分かりやすく筋道立てて話せない。
  • 04.自分の興味ある話題を一方的に話し続ける。
  • 05.話題がくるくる変わる。
  • 06.誤字脱字が多い。
  • 07.急な予定変更に対応できない。
  • 08.予定が立てられない。
  • 09.課題の提出期限を守れない。
  • 10.思い込みがかなり激しく見える。
  • 11.孤立しているようである。
  • 12.いつも落ち着きなく見える。

このような様子が授業で見られた場合、困っていることはないかどうか声をかけていただけると幸いです。

精神障がいのある学生への支援 

精神障がいとは

現代では、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病と並んで、日本における5大疾患の一つに精神障がいが位置づけられています。その上、大学生世代は、この病気の好発年齢ともいわれています。一方で、精神障がいは発達障がいと同様に、外見から判断することは困難で、例えば、「病状が思わしくなく、朝起きられないから学校へ行けない」のは、「怠けている」とか「甘えている」とか「根性が足りない」と思ってしまう方もいると思います。しかし、基本的には病気であり、好きこのんで精神症状を呈する方はいません。病気であって、そのために困難を抱えているのだということを十分ご理解いただけるようお願いします。 
また、精神障がいのある学生の中には、自身が病気であるという認識がない者もおります。教職員は日常的に学生に関わっているため、関与した時の違和感や気づきが的確に病状を捉えていることも多く、学生本人や家族に専門家への相談を促す時や専門家への情報提供にあたってとても有用な情報になります。対応について判断しかねる場合は、障がい学生支援センターや学生相談センター、保健管理センターにご相談ください。その場合も、現場からの客観的な報告が、支援の方針を考える上で貴重な情報となります。
精神障がいのある学生の中には、履修やゼミを選択する際に体調不良時の情報保障や試験に関する支援が必要な場合があります。また、病状が変動することもよく見られ、治療を優先する場合は休学や留年を選択する学生もいます。その場合、復学にあたってその時期を見極めることが大事で、十分な意欲が回復していることや、病状が安定して学期中を通して修学が十分可能であることが復学の要件になります。こうしたことを確認するためにも家族と連絡をとったり、本人の許可を得て主治医に病状の安定度や生活の状況を確認することが行われます。

大学生世代に多い代表的な精神障がい
  • 1. 不安障がい

    強い不安、動悸、呼吸困難、手足のしびれ、めまいなどが突然に出現する「パニック障がい」、教室など人が大勢いる場面で不安が強くなり、毎回動悸、震え、発汗などが生ずる「社交不安障がい」などがあります。
    極度の不安のために教室に身を置くことが非常に困難な場合があります。

    ≪支援・配慮例≫
    強い不安や恐怖が生じた場合には、容易に退室できることや、それが許可されていることで安心できる場合があります。また大勢の前で発表したり議論することが極度の不安と恐怖のため困難な場合は、教員が個別に聞いたり、可能なら代替手段で理解度を評価することをご検討ください。eラーニングを選択することもご検討ください。    

  • 2. 気分障がい

    気分障がいの多くはその経過中にうつ症状を伴います。深刻な身体の症状を伴う内因性うつ病のうつ症状が代表的ですが、ストレスへの反応や環境変化への適応障がいの場合に、内因性うつ病に比べて比較的軽いうつ状態を呈することがあります。
    うつ症状は眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないなどの症状が持続します。不安や焦燥感が強くなる一群では希死念慮が生じることもあるため、特に衝動性が高い若い大学生世代では、抗うつ剤による治療を受けている期間に注意が必要です。

    ≪支援・配慮例≫
    試験や授業への出席が困難になり、教職員や家族からの連絡に無反応になる場合もあります。またうつ状態では、集中力や意欲が低下して学修が困難になり、対人関係を避け、物事を決断できなくなったりする場合も見られます。深刻な状態の時期に試験が重なった場合、支援を申請して変更・調整を認めてもらうか、進学や卒業を延期することもありえます。      
     卒業論文、就職などが予定通りこなせず、留年や休学になる場合もあります。なるべく早急に休養や休学、支援付きの試験を受けるなどの支援を選択することが大切です。

  • 3. 統合失調症

    統合失調症は、病初期には幻覚や妄想が目立ち、不眠や昼夜逆転をきたしやすく、些細な刺激で興奮したり、言動が不穏になる場合があります。この時期は一人暮らしや通学に困難をきたしやすく、自宅療養や入院が必要になります。現在は、治療薬の進歩により副作用が少なく、症状が改善されるようになりましたので、急性期を脱して上記のような症状が改善されれば退院が検討され、さらに活動性や意欲が改善され、日常生活ができるようになればひとり暮らしや復学を検討することになります。

    ≪支援・配慮例≫
    服薬が長期間になることが多いため、定期的な受診を前提とした履修スケジュールを組むことが必要です。再発防止のためにも定期的な通院や服薬継続が大切です。症状悪化を短期的に防ぐため、頓服薬が必要な場合があります。授業中に服薬の必要があれば、服薬や水分補給等をあらかじめ許可しておくと良いと思います。         
    サークルの人間関係等の生活環境などに発病のきっかけがあると思われる場合には、発病状況に戻ることはしばらく避けるよう環境調整が必要です。本人にもストレスを自覚して身を守ることができるような指導があると望ましいです。
    長時間に及ぶ実験やグループ討論などで臨機応変な対応を求められることは、病状悪化をもたらすこともあるため、これらのリスクを回避することも就学支援の一環となります。
    履修計画を立てるにあたり、これまでの遅れを取り戻そうと講義を詰め込みすぎないような、無理のないスケジュールを組むという助言も大切です。

  • 4. 高次脳機能障がい

    大学生では、交通事故やスポーツ活動での事故等で、頭部の外傷や脳血管障がいを受傷した場合、脳の損傷の後遺症として記憶・注意・遂行機能(目的を持った一連の活動を有効に行うのに必要な機能)・社会的行動などに障がいをきたす場合があります。これらの障がいは発達障がいと同様外見からはわかりにくく、自覚することも難しい場合があり、周囲が戸惑うこともあります。

    ≪支援・配慮例≫
    受傷後しばらくは、本人が大学と打ち合わせしたり交渉することは困難な場合があるので、家族が主治医や保健管理センターの医師と相談しながら、復学の道筋を決めることが望ましいといえます。大学側は、受け入れ準備の段階で家族が保健管理センターの医師や学生相談センターのカウンセラーと面談を始めるなどして、高次脳機能障がいについての知識や学生に関する情報を関係者が共有しておくべきです。復学を検討するにあたっては、身体的機能だけでなく精神的機能や学力の変化がないか、記憶力や注意力の状態などを把握することが重要です。記憶障がい、注意障がい、遂行機能障がいなどの高次脳機能障がい特有の症状がある場合には、授業についていくことが困難になります。
    「授業中ノートがとれない」、「試験を受けても以前のように時間内に終わらない」「忘れ物が多い」等の問題が起こりやすいので、試験時間の延長や、ICレコーダーを活用してノートの補助とする、試験をレポートに変えてもらうなどの支援が考えられます。

  • 5.場面緘黙症

    場面緘黙症とは、言葉を話したり理解する能力は正常にもかかわらず、学校などの特定の社会状況で話すことができない状態をいいます。話そうとしないわけではなく、話せないのです。体が思うように動かせない緘動(かんどう)という状態になることもあります。声の出しにくさ、話しづらさは、場所やそこにいる人、活動内容によって違ってきます。いわゆる「はずかしがり屋」と違うのは、症状が強く長期に渡って続くこと、そのために本人が持っている様々な能力を十分に発揮できないということです。
     小児期の障がいとの見方もありますが、大学生世代でも見受けられます。

    ≪支援・配慮例≫
     話そうと思っても話せない状態ですので、「君の声を聞きたい」等話すことを強制したり、話さないことを責めたりすることは、症状の悪化につながりますのでおやめください。
    ディスカッションがある時には、前もって準備させてください。前日やその日の早いうちに、何を質問するか知らせておいてください。本人が答えられない時は、答えるのを待つよりは次に移るようにしてください。可能でしたらクラス全体の学習を、時には非言語的コミュニケーションを含む参加形式に変更できると本人も授業に参加しやすいと思います。(例えば、意見を学生たちのノートに書かせ掲示させたり、親指を上げたり下げたりする仕草で返事をさせるなど)また、大勢の前での発表の場面で話すことができない場合は、学修の本質を損なわないのであれば、代わりにパワーポイントやポスターなどの文字で発表するなどの代替措置がとれると本人も授業に参加しやすいと思います。
    聞き返すことが困難な場合がありますので、重要な指示などは板書やプリント、Course Power等をご活用ください。

授業における配慮
  • 通院への配慮

    ・定期的な通院により、やむをえず授業を欠席してしまう場合がありますので、必要に応じてご配慮ください。

  • 授業参加への配慮

    1. 授業中に服薬や水分補給を必要とする場合にはご配慮ください。
    2. 入退室しやすい座席を希望する場合がありますので、座席指定の科目ではご配慮ください。
    3. 障がいの程度によっては、人前での発表や議論等での発言を求めることは避け、代替策で理解度を評価する等、ご配慮ください。
    4. 障がいの程度によっては、講義の録音を希望することがありますのでご配慮ください。

  • 学生サポーターの配置

    ・ポイントテイク等を行う学生サポーターの配置をお願いする場合があります。

  • 授業内試験

    1. 座席の変更をする等ご配慮ください。
    2. 障がいの程度によっては、時間延長とそれに伴う別室受験やレポートでの代替策にご配慮ください。