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ビジネス法務専攻

ビジネス法務専攻

ビジネス法務専攻の目的は、ビジネスロー・リテラシーを有する職業人を育成することにあります。「ビジネスロー」とは、ビジネスにおけるさまざまなシーンで繰り返し適用されることになる法分野の総称です。具体的には、民法、商法・会社法、経済刑法、知的財産法、独占禁止法、労働法、金融法、税法などが挙げられます。
しかし、「ビジネスロー」は、こうした法分野を単にそのまま総合したものではありません。近年話題になっているコンプライアンス、CSR(企業の社会的責任)、内部告発、リーガルリスクマネジメント、企業などに対する税務調査や課税処分等の具体的な問題を解決するための法的思考力を必要とする分野だからです。ここにいう法的思考力とは、証拠によって認定された具体的な事実を整理したうえで(事実認定)、そこで問題になる関連法令等の条文を抽出してこれを解釈して適用することで(法解釈)、事案を適切に処理する能力のことです。本専攻では、こうした法的思考力を修得し鍛えて、具体的な問題解決のために使うことができるようになることを目指します。

ビジネス法務専攻では、こうした観点から、従前は4つのプログラムを設定しておりましたが(金融、知財、人事労務、税)、2018年度より「税法務プログラム」のみとしました。カリキュラムや設置科目も変更し、これまで税法務プログラムが有してきた特色ある教育プログラムをさらに強化しました(ディベート、課税実務法務、外国税法務等の新設科目の設置等)。

ビジネス法務専攻 基本情報

教員 教員紹介
入学定員 修士課程:20名

研究指導教員について

ビジネス法務専攻主任

教授 木山 泰嗣

 入学してから2年間(標準コース)で,修士論文を執筆することなります。税理士を目指す社会人の方には,期間は短くても,充実した濃い時間になると思います。
 M1(1年次)の「税務判例・事例演習」で,法学の方法論(判例・文献のリサーチ,読み方,執筆の作法等)を実践形式で身に着けていただき,これを前提にM2(2年次)の「研究指導演習」(修論指導)があります。執筆は担当教員の指導をもとに1人で進めるものですが,M1のときには先輩(M2院生)の,M2のときには同級生の,それぞれの研究状況もみる機会も多く,切磋琢磨することができる環境です。
 条文や判例を使いこなし,1つのテーマについて法学論文を執筆する経験を通じて,「税務の専門家」としての力を確実なものにしたい方,ビジネス法務専攻でお待ちしています。

特任教授 垣水 純一

 私人の経済活動には、税の問題が密接に関わっています。さらに、近年の国際化・AI化の進展の中で、企業行動や個人の働き方などが大きく変化しているため、税を巡る新たな問題が頻繁に生じています。このような状況のもとで、税法の適用・解釈についての規範を示す判例が蓄積されるなど、税法の研究範囲は大きく広がっています。
 本専攻で学ぶ院生は、数多くの租税判例や学説を研究した上で、税法の論文を執筆することを通じて、税法のみならず他の法律分野においても不可欠な法律的な考え方を身に付けることができると考えています。
 私たちは、皆さんがそのような成果を達成できるよう、きめ細かい指導を通じてお手伝いをしたいと思っています。意欲ある皆さんの入学を心からお待ちしています。

准教授 道下 知子

 ビジネス法務専攻を希望する方は、税法の専門的知識を深めてビジネスにおける税法務に活かしたい、という方が多いのではないでしょうか。
 本専攻では、税法についての研究テーマを設定し、その探求を深めて論文を作成することを最終目標としています。そのため授業では、相当数の判決文や論文を読み込み、判例評釈の発表やレポートを作成し、時に判例のディベートなども行います。そうすることで、法的根拠への探求心が芽生え、税法だけでなく幅広い法律の解釈を深く理解することができるでしょう。その際、指導教員が全面的にサポートいたしますので、院生の皆さんには、共に切磋琢磨しながら税法の専門性を深めていただきたいと思っております。ぜひ、ビジネス法務専攻で一緒に学びましょう。

論文の受賞実績について

本学大学院法学研究科修了生の租税資料館賞の受賞について

2022年度に本学大学院法学研究科ビジネス法務専攻の修了生が執筆した修士論文について,以下の5名の受賞がありました。

・阿部 直子さん (2022年度 ビジネス法務専攻修了)
・飯嶋 亮さん  (2022年度 ビジネス法務専攻修了)
・齋藤 理基さん (2022年度 ビジネス法務専攻修了)
・佐藤 瞬さん  (2022年度 ビジネス法務専攻修了)
・米山 美貴さん (2022年度 ビジネス法務専攻修了)

 これで,本学大学院法学研究科修了生による租税資料館賞(奨励賞)の受賞は5年連続となり,同時受賞者も昨年の3名を超え最多となりました。
(租税資料館賞の詳細は,こちらをご参照ください)。

「税に関する論文」(納税協会主催)の受賞について

令和3年には,本学法学研究科公法専攻に在籍中の大学院生(修士課程2年次)から,「税に関する論文」(納税協会主催)の受賞がありました。

【受賞者】
・第17回「税に関する論文」専門家の部(納税協会特別賞)平野潔範さん(法学研究科公法専攻博士前期課程2年次)

また,過去には専門家の部(奨励賞)での受賞もありました。
・第13回「税に関する論文」専門家の部(奨励賞)藤間大順さん(法学研究科公法専攻博士後期課程)

「税に関する論文」の過去の入選論文はこちらよりご参照いただけます。

受賞者のメッセージ
  • 阿部 直子さん/令和5年度(第32回)租税資料館奨励賞受賞

     執筆した修士論文が,第32回租税資料館奨励賞を受賞しました。このような栄えある賞を賜り大変光栄に存じます。
     受賞した論文「一時所得の非対価要件の判断基準—東京地裁令和3年1月29日判決を素材にして—」では,最高裁判例がなく下級審及び学説でも見解が分かれている非対価要件の判断基準を,近時の裁判例を素材に論じました。
     執筆中は,先行研究の調査,条文の解釈,裁判例・判決文の分析及び見解の整理に時間を費やしました。これらは,大学院入学時から繰り返しご指導いただいたので身につけたつもりでおりましたが,執筆中は,思考が迷走し論文と呼ぶには程遠い状態が続いてしまいました。しかし,原稿を提出する度に,指導教授である木山泰嗣教授に方向修正をしていただきましてなんとか書き上げることができました。木山先生に深く感謝申し上げます。また,垣水純一特任教授,道下知子准教授,非常勤講師の先生方からも,温かいご指導を賜りました。重ねてお礼申し上げます。
     ビジネス法務専攻は,カリキュラムが充実しており魅力的な科目が多く,どの科目を履修するか選択に悩むほどでした。また,判例発表やディベートでは,出身や年齢が様々な方達と交流でき心強く楽しかったです。先輩,同期,後輩に恵まれ,励まし合い切磋琢磨できた素晴らしい2年間の最後を,今回の受賞という最高の形で締めくくることができました。この感謝を忘れず,今後も引き続き精進して参りたいと思います。

  • 飯嶋 亮さん/令和5年度(第32回)租税資料館奨励賞受賞

     この度、執筆した修士論文が租税資料館奨励賞を受賞しましたこと、大変光栄に存じます。
    受賞した論文「権利発生の原因事実について争われた場合の所得の年度帰属―紛争解決前の供託時点における管理支配基準の適用を中心として―」は、権利発生の原因事実が争われた場合の所得の年度帰属に関する問題について,特に,争いが解決する前に供託された場合の所得の年度帰属について論じたものです。
     本論文の執筆にあたっては、指導教員として、道下知子准教授から多くの助言を賜り、所得税法における所得の年度帰属はもちろん、民法上の供託の法的性質も踏まえて、法律の解釈と自身の主張のロジックを丁寧に論じることができました。
    また、熱意をもってご指導いただいたことで、最後まであきらめずに書き切ることができました。
     青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻に入学し、判例研究やディベートといった学修を通して、法的思考力や論文執筆の力が飛躍的に身に着いたと感じております。
    ご指導いただきました教授の皆様、ともに切磋琢磨した同期の方々に心から感謝いたします。

  • 齋藤 理基さん/令和5年度(第32回)租税資料館奨励賞受賞

     この度は、執筆した修士論文が租税資料館奨励賞を受賞しましたこと、大変光栄に存じます。
     受賞した論文は、「残余利益分割法の適用をめぐる所得配分のあり方―リスク・超過コストアプローチの提唱―」というものです。本論文では、残余利益分割法による独立企業間価格の算定が主観的・恣意的になりやすい点を問題として取り上げ、その算定方法のあり方を検討しました。
     本論文の執筆にあたっては、指導教員の木山先生をはじめ、先生方からは多くのご指導・アドバイスをいただきました。また、ともに切磋琢磨した同期の仲間達にも恵まれ、本論文を完成することができました。
     働きながら過ごした大学院での2年間は、決して楽なものではなく、悩み、苦しんだこともありました。しかし、それ以上に得たものは大きく、かけがえのない経験となりました。
     最後に、青山学院大学大学院の先生方、大学院進学を応援し、支えてくれた家族に心より感謝申し上げます。

  • 佐藤 瞬さん/令和5年度(第32回)租税資料館奨励賞受賞

     この度,執筆した修士論文が租税資料館奨励賞を受賞しましたこと,大変光栄に思います。
     受賞した論文は,「債務免除益の所得区分の判断基準ー債務免除益の性質に着目したアプローチの提唱ー」というものです。本論文では,債務免除益の所得区分の判断基準について,債務免除益の性質に着目し,債務免除時点における債務免除益の法的性質によって判断すべきであるという自説を論じました。
     修士論文の執筆にあたっては,指導教授の木山先生をはじめ,多くの先生方・先輩方からたくさんのご指導・アドバイスをいただきました。また,共に切磋琢磨する同級生にも恵まれ,最後まで諦めずに修士論文を完成させることができました。
     最後に,大学院進学を応援し,支えてくれた家族・友人に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

  • 米山 美貴さん/令和5年度(第32回)租税資料館奨励賞受賞

     この度は、執筆した修士論文が、租税資料館奨励賞を受賞することができ、大変光栄に思います。
    受賞した論文は、「財産評価基本通達によらない相続税法上の時価評価のあり方―最高裁令和4年4月19日判決を契機として―」というものです。具体的には、どのような場合に、例外である評価通達によらない時価評価を認めるべきか、その判断方法と判断要素について検討しました。論文執筆の進捗は常にぎりぎりでしたが、私が迷走し立ち止まりそうになる度に、指導教授の木山先生が私の考えを整理し、的確な助言をくださったおかげで、どうにか完成させることができました。最後まで丁寧に執筆活動を導いてくださったことを深く感謝しております。
    他分野出身のため、入学当初は判決文の読み方や法学の論文の書き方も分からず、修士論文を書き上げられるか不安でした。しかし、判例発表やディベートなどの実践的な演習の中で、学生間での議論や先生方からの指導を通して、少しずつ法的思考力や論文執筆の技術を培うことができました。
    ビジネス法務専攻での2年間で得られたものは余りに多く、本当に貴重な経験でした。青山学院大学大学院の先生方、大学院進学を応援してくれた家族に心よりお礼申し上げます。

  • 平野 潔範さん/令和4年度(第31回)租税資料館奨励賞受賞

     この度,租税資料館奨励賞を受賞しました。受賞した論文は,「同族会社等の行為計算否認規定における理由の差替え-納税者の主張立証との関係において-」というものです。
    本論文は,課税処分取消訴訟において,その根拠が行為計算否認規定と個別規定等とで差し替えられる場合に,納税者の攻撃防御方法に具体的にどのような影響を与えるのかを検討し,その差替えの是非について論じたものです。
    本論文は,修士論文として執筆したものですが,その執筆時から租税資料館賞の受賞を目標としておりました。そして,このように論文が客観的に評価されたことは今後の励みとなりました。
    大学院では,指導教授や同期の仲間にも恵まれ,充実した環境で研究をすることができました。今後も大学院で学んだ数々のことを活かし,より一層精進して参りたいと思います。

  • 五味 悠さん/令和4年度(第31回)租税資料館奨励賞受賞

     この度は、執筆した修士論文が、租税資料館奨励賞を受賞することとなり、大変光栄に存じます。
     受賞した論文「法人税法における高額譲受取引の解釈―東京地裁令和元年10月18日判決を題材としてー」は、法人税法上明文規定のない高額譲受取引についての解釈を論じたものになります。
     ビジネス法務専攻に入学した当初は、判決文の読み方や論文の書き方もわからず、修士論文を完成できるのか不安な心境でございました。しかし、判例演習やディベートを通じて培った法的思考力や、様々なバックグランドを持つ同期の皆様からの刺激を受け、本論文を完成することができ、更に、このような名誉ある賞を頂戴することができ、大変嬉しく存じます。
     本論文の執筆において、先行研究が少ないことから、過去の裁判例を徹底的に調べること及び低額譲渡や無償譲渡等の周辺取引の解釈を徹底的に検証することに注力致しました。法人税法37条のみならず、法人税法22条2項や法人税法132条等、解釈が複雑な条文も関連しているため、何度も中断しようとした時期がございました。その度に、指導教授の道下先生から熱いご指導を賜り、最後まで寄り添っていただいたことで本論文を完成することができたと実感しております。
     最後になりますが、ビジネス法務専攻での2年間の経験は、私にとって大変貴重な財産となりました。青山学院大学大学院の先生方、大学院進学を応援してくれた家族に心から感謝申し上げます。

  • 諏訪 晴美さん/令和4年度(第31回)租税資料館奨励賞受賞

     この度は、修士論文について租税資料館奨励賞を賜り、大変光栄です。
     受賞した論文は、民法上の組合契約や商法上の匿名組合契約などの私法上の典型契約が締結されていない場合を対象として、実質的な共同事業から個人が分配を受けた損益への所得課税の解釈方法を論じたものです。執筆にあたり、垣水純一特任教授と前任の荒井英夫元特任教授には、指導教授として幾多の的確な助言をいただきました。熱意をもって執筆活動を導いていただきましたこと、深く感謝致します。
     ビジネス法務専攻では、判例発表やディベートなどの実践的な演習があります。法的な考え方から文章の作法まで、論文の執筆に必要な技術を身に付けるための環境に恵まれていました。また、修士論文については、合同報告会や中間報告会が設けられ、木山泰嗣教授と道下知子准教授からも、数々の重要な気付きを与えていただく機会がありました。
     演習や課題に苦労しながらも、共に切磋琢磨する同期の皆様に励まされ、様々な方に助けられて過ごした2年間の貴重な経験は、かけがえのない財産になったと感じています。
     思いもかけないこの度の受賞は、多くの方々のお力添えの賜物と存じます。心より厚く御礼申し上げます。