TOP

これからの国際援助のかたち:SDGsの達成に向けて

第3回 2021/5/22(土)
国際政治経済学部国際経済学科 教授
加治佐 敬 [KAJISA Kei]

 SDGsに掲げられている17の目標のうち、一丁目一番地の最重要目標が「貧困をなくそう」です。これはSDGsに先立つミレニアム開発目標(MDGs)において、やはり第一に設定された「1990年から2015年までに貧困を半減する」という目標が達成されたことを受け、さらにそれを推し進めるために設定された目標です。MDGsの期間に削減しやすいところではすでに削減されていますから、SDGsで残りの半分を削減するのはより困難だといってよいでしょう。国際社会では、今までのやり方では不十分だという認識です。より効果的に目標を達成するために、開発援助政策の潮流が大きく変わってきています。
 潮流の変化は、医学にたとえて言うならば、「人体実験」の時代から「治験に基づく処方箋」の時代への変化と言い表せます。とりあえずやってみるという援助政策から効果があると科学的に証明された政策を実施するという変化です。最近「エビデンス」という言葉をよく耳にしますが、これは最近の使われ方では単なる「証拠」という意味ではなく、「科学的に実証された信頼できる証拠」という意味で使われています。まさに、エビデンスに基づく開発政策の実施が最近の潮流なのです。この潮流は、バナジーとデュフロという二人の開発経済学者が2019年にノーベル経済学賞を受賞したことで決定的となりました。
 本講義では、まず背景としてどの地域で貧困が削減されどの地域でまだ多く残っているのかなど世界の貧困の状況を説明します。続いて、エビデンスに基づく政策策定とはどういうものなのか、なぜその方法が優れているのか、そしてそれに基づいた政策には一般的にどのようなものがあるのかについてノーベル経済学賞の話題にも触れつつ解説します。最後に、国際援助の分野で行われている新たなアプローチに基づく政策を紹介します。

プロフィール

青山学院大学国際政治経済学部国際経済学科 教授
加治佐 敬 [KAJISA Kei]


青山学院大学国際政治経済学部卒、ミシガン州立大学農業・食料・資源経済学研究科Ph. D.(1999年)。世界銀行コンサルタント、国際開発高等教育機構(FASID)ファカルティフェロー、政策研究大学院大学連携准教授、国際稲研究所(IRRI)主任研究員などを経て、2012年より本学国際政治経済学部教授。著書『経済発展における共同体・国家・市場』日本評論社(2020年)。