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イギリス演劇の名せりふを味わう(シェイクスピアから現代のミュージカルまで)
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佐久間 康夫[SAKUMA Yasuo]
第1回 2022/5/7(土)
文学部比較芸術学科 教授
佐久間 康夫[SAKUMA Yasuo]
ヨーロッパの演劇の歴史は2500年にもおよんでいます。古代ギリシャに発生したギリシャ演劇の伝統がいったん途絶えた後、中世にいたって宗教劇が誕生し、とくにイギリスにおいてシェイクスピアの登場とともに演劇の黄金時代を迎えました。その後王政復古期を経て、18世紀にかけて近代市民社会の勃興とともに市民の演劇が隆盛しました。19世紀後半になると近代リアリズム劇の影響を受けた芝居が書かれ、20世紀の多様な演劇の扉が開かれました。
演劇の歴史を振り返りますと、どの時代にも当代の劇を上演するにふさわしい劇場が存在していました。劇場と芝居の内容は密接に結びついているため、劇場構造に適したドラマトゥルギー(作劇術)が生まれました。芝居の名せりふとは、そうした芝居の技法から生まれるものです。
さて、名せりふと一口に言っても、例えばシェイクスピアのせりふの中には、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」など、あたかもことわざのように転化したものもあります。しかし、芝居の中で用いられるせりふは、誰にでも通用する処世訓とはおのずと異なります。
芝居のせりふとは、〈誰が〉、〈どのような状況で〉、〈誰に〉向かって語る言葉であるのか、が大事です。劇の流れの中で、〈せりふを語る人物〉がどのような人物なのか、〈語り合っている人物同士の関係〉はどうなっているのか、〈話題にされる問題〉は何か、が重要になります。
せりふと登場人物は不可分です。要するにキャラクタライゼーション(性格描写)がなされるのが、芝居のせりふの本質なのです。芝居の名せりふがいわゆることわざ、格言、名言と違うのは、この点です。逆にいえば、劇作家の仕事は、ある劇的設定において、いかにしてその人物に相応しいせりふを創作するのか、ということになります。
今回の講義では、イギリスの演劇を代表する有名な芝居を数編選んで、ビデオの鑑賞も交え、解説いたします。名せりふを通して、演劇鑑賞の醍醐味をご一緒に追求してまいりましょう。
プロフィール
青山学院大学文学部比較芸術学科 教授
佐久間 康夫[SAKUMA Yasuo]
青山学院大学文学部教育学科卒業。同大学院文学研究科博士課程英米文学専攻満期退学。青山学院大学文学部英米文学科教授を経て、現在青山学院大学文学部比較芸術学科教授。専門分野はイギリス演劇。主な著書に、『舞台を観る、読む、語る』(開文社、2016)、『シェイクスピア―人生の名言』(監修、KKベストセラーズ、2016)、『心に響け、シェイクスピア』(NHK出版、2009)、『風土記イギリス』(共著、新人物往来社、2009)等がある。