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感染症をめぐる現代的課題-人の営みの変化と環境の変化による感染症の変化

大曲 貴夫[Norio Omagari]

大曲 貴夫[Norio Omagari]

感染症をめぐる現代的課題-人の営みの変化と環境の変化による感染症の変化

第2回 2019/4/13(土)
国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長 大曲 貴夫

社会の変化は微生物と人間との関係性を変える。これにより新しい感染症の問題が生まれる。2014年から2015年にかけての西アフリカを中心としたエボラ病の大流行は、1976年に本疾患が最初に報告されて以降最大のアウトブレイクと言われている。今回のアウトブレイクの特殊性は、初めて西アフリカで流行した点、もう一つは首都で流行した点である。従来アフリカの奥深いジャングル地帯で限定的に起こってきた感染症が首都で起こってきたことの背景には、グローバル化に伴う経済発展及び企業の進出による道路整備と、これに伴う交通の活発化、そして都市への人口の集中化が一つの要員に挙げられている。また首都での流行は、空路を介する患者の拡散のリスクを孕むものである。日本にいる私達にとってアフリカは物理的に遠く、飛行機で訪問するにも乗り継ぎが必要で不便である。しかし欧州などはアフリカと距離的に近い。植民地化の歴史も有り繋がりが深い。よってアフリカからの直行便を多く有する欧州諸国などからは、たんに「アフリカの奥地の問題」にとどまらない、自分自身への身に迫った脅威として考えられるわけである。
今や航空機を中心とした交通機関の発達と共に、感染症が国から国へと容易にしかも驚くべき速度で持ち込まれるようになっている。2009年のH1N1pdmインフルエンザパンデミック時には、当初はメキシコで報告されたこの「原因不明」の急性呼吸器感染症が、数ヶ月の間に世界に拡散した。また2012年以降中東では中東呼吸器症候群(MERS)が発生し、第2のSARSとなる可能性が懸念されている。本疾患は2014年春以降サウジアラビアを中心に感染例の報告が急増し、WHOも介入する世界的な問題となっている。そして韓国では1例の輸入例からの医療機関での院内感染を中心としたアウトブレイクが発生した3。本疾患が拡散した一つの要因として、特にサウジアラビアを中心に医療関連感染として患者および医療従事者間で流行したことが挙げられている。そればかりでなく、中東で曝露した者が飛行機を用いて欧州、北米などに移動し、同地で発症する等の事態も起こっている。加えてラクダがMERSコロナウィルスを保有していることが明らかになってきており、ラクダの国境を越えた売買による本ウィルスを有するラクダの移動なども感染の伝播の観点から注目されている。

プロフィール

国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長
大曲 貴夫[Norio Omagari]


佐賀医大医学部卒業。その後聖路加国際病院内科レジデント。2002年 The University of Texas-Houston Medical School 感染症科Clinical fellow。2004年静岡県立静岡がんセンター感染症科医長,07年同部長。12年同院国際感染症センター長, 17年4月より国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター長を併任。