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黄 晋二 [KOH Shinji]

黄 晋二 [KOH Shinji]

SDGsとエレクトロニクス

第4回 2021/5/29(土)
理工学部電気電子工学科 教授
黄 晋二[KOH Shinji]

 現在我々が享受している高度情報化社会は、半導体デバイスをはじめとするエレクトロニクス技術によって支えられている。今や日常に必要不可欠となったスマートフォンやコンピュータには、マイクロプロセッサと呼ばれる集積回路(LSI)が組み込まれており、そのLSIには数億個ものトランジスタが搭載されている。トランジスタは、1947年に米国AT&Tベル研のバーディーン、ブラッテン、ショックレーらによって発明された、情報処理機能を担う最も重要な半導体デバイスの一つである。トランジスタの発明以来、世界の半導体メーカーは、そのデバイスサイズを小さくすること(スケーリングと呼ばれる)によって性能向上と低コスト化を同時に達成し続け、現在のトランジスタのチャネル長は数ナノメートルにまで微細化されている。この営みは、資本主義を究極的に進めてきたものと捉えることができるが、結果的に、Intelなどの多国籍巨大資本のみが生き残る市場となり、日本の半導体メーカーは衰退していくこととなった。 
このように究極的な資本主義を突き進めてきた半導体市場は、もはやSustainableではないかのように見えたが、近年、Internet of Things(IoT)という新しい技術コンセプトのもとで市場が力強く回復してきている。IoTは、様々なモノにセンサーや通信デバイスを搭載し、その状態を常に管理して最適化する技術であり、自動車の自動運転をはじめ、我々の生活の質を向上させるものとして大きな注目を浴びている。IoTでは多くの半導体デバイスが使われることになるが、上述したトランジスタにおける微細化・集積化のような単体のデバイスの単調な技術展開ではなく、様々な場面に応じて様々な半導体デバイスを組み合わせてシステムとして価値を創造するという、新しいルールのもとでビジネスチャンスが創出されている。IoTというコンセプトは、工業、農業、エネルギー、医療・福祉、防災などの幅広い分野に適用できるものであり、SDGsで掲げている開発目標と強く連動して様々な分野においてゲームチェンジをもたらす可能性を持っていると考えている。
本講義では、これまでの、そして現在のエレクトロニクス技術の光と影を「IoT」「SDGs」という観点から俯瞰し、今後のエレクトロニクスがどのように我々の生活の中で活用されていくかについて考察する。

プロフィール

青山学院大学理工学部電気電子工学科 教授
黄 晋二[KOH Shinji]


東京大学工学部物理工学科卒業、同大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程、博士課程修了、博士(工学)。現在、青山学院大学理工学部電気電子工学科教授。専門分野は炭素材料工学、半導体材料工学、デバイス工学。応用物理学会、ニューダイヤモンドフォーラム、電気化学会に所属。「チコちゃんに叱られる」(2020)、「初耳学」(2019)などのTV番組に出演。