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アフリカ系アメリカ人女性と文学

西本 あづさ [NISHIMOTO Azusa]

西本 あづさ [NISHIMOTO Azusa]

第5回 2022/10/22(土)
文学部英米文学科 教授
西本 あづさ [NISHIMOTO Azusa]

今日、私たちはさまざまな分野で活躍するアフリカ系アメリカ人の女性たちを目にするようになっています。アメリカ文学においても、とりわけ公民権運動後の1970年代から、第二波フェミニズムの展開とも重なる時期に、アフリカ系の女性たちがほとばしるように作品を発表し始める時代が訪れました。彼女たちは──小説家であれ、詩人であれ、批評家であれ──、既存のアメリカ文学あるいは文学批評の中には自分たちがいない、白人でも男性でもない自分の経験を語るための言葉もそれを批評するための理論も存在しない、と感じて筆を執り、創造的にアメリカ文学の地平をおし拡げました。その結果、例えば、『カラー・パープル』(1982)でアフリカ系アメリカ人女性として初のピューリッツァを受賞したアリス・ウォーカー(1944-)や、1993年に黒人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスン(1931-2019)らは、かつてはアメリカ文学の正典には含められなかったさまざまな集団に属す他の作家たちとともに、日本の大学のアメリカ文学史の授業でも必ず取り上げられるようになっています。日本で研究されたり教えられたりする「アメリカ文学」も、この30年年余の間に大きく変化しました。
この講座では、70年代以降にアフリカ系アメリカ人の女性たちが一斉に声をあげ始める背景として、合衆国で奴隷制の時代以来、長らく人種と性の二重の差別によって社会の最底辺に位置づけられてきた黒い肌の女たちの苦難と闘いの歴史と、抑圧の下で彼女たちが残した声の系譜を概説してみます。その上で、70年代以降の作家たちに大きな影響を与え、ブラック・フェミニズムの先駆的作品として評価されるハーレム・ルネサンス期の作家ゾラ・ニール・ハーストン(1891-1960)の『彼らの目は神を見ていた』(1937)を紹介したいと思います。

プロフィール

青山学院大学 文学部英米文学科 教授
西本 あづさ [NISHIMOTO Azusa]

青山学院大学文学研究科博士後期課程満期退学。青山学院大学文学部英米文学科専任講師、准教授を経て、現在は教授。専門はアメリカ文学、アフリカ系アメリカ研究。
主な共著に『カリブの風──英語圏文学とその周辺』(鷹書房弓プレス、2004年)、『新たなるトニ・モリスン──その小説世界を拓く』(金星堂、2017年)。訳書にP・R・ハーツ著『アメリカ先住民の宗教』(青土社、2003年)、共訳にヴァレリー・スミス著『トニ・モリスン──寓意と創造の文学』(彩流社、2015年)など。